負債を抱えたAMDが取ったITコスト削減施策
データセンターを9割閉鎖、AMDの大改革プロジェクトの全容
多国籍半導体メーカーの米AMDの最高情報責任者(CIO)が、18箇所あった同社のデータセンターを2箇所に統合した体験談を語る。
多国籍半導体メーカーの米AMDが2014年末の時点で全世界に所有するデータセンターの数は2つだった。これはAMDが3年掛けて行ったIT統合の成果だ。この取り組みの結果、62%のアプリケーションを廃止し、ITのコストを約35%カットした。データセンターの数に至っては約90%削減することに成功した。この大規模なプロジェクトは、もう1つ重要な結果をもたらしたとAMDの最高情報責任者(CIO)であるジェイク・ドミンゲス氏は次のように語る。「当社のIT部門の60%は、メンテナンスや日常的なIT業務ではなく、ビジネスに革新をもたらす作業に時間を使えるようになった」
IT部門がビジネス革新に注力できるようになったのは喜ばしいことである。3年前、AMDは岐路に立たされていた。同社の主要ビジネスであるCPU市場は、PCの販売台数の落ち込みによって縮小していた(CPUの販売はAMDの収益の95%を占めている)。また、米Intelによる市場の占有も進んでいた。負債と株価急落という問題を抱えていたAMDは、コスト削減と革新が必要な状況に追い込まれていた。
だが、当時のAMDのIT部門はあまり頼りになる存在ではなかった。「IT部門の観点では、ITの費用がかさみすぎていることしか分かっていなかった。状況を悪化させたのは、肥大化した予算のうち25%しかビジネスの革新につながる活動に使われておらず、残りは日常業務に使われていたことだ。これではAMDの改革が促進されるわけがなかった」とドミンゲス氏は振り返る。
このアンバランスな状態を引き起こしている原因の1つは、AMDのITインフラのサイズと複雑さにあった。AMDは全世界18箇所にデータセンターを保有しており、旧式のテクノロジーを運用していた。また、IT部門は700個のエンタープライズアプリケーションをサポートしていた。これは当時約660万ドルの年間収益を上げている1企業のためのものだった。
「AMDの企業規模を考えると、この全てのコンポーネントは警告レベルの状態にあった」とドミンゲス氏は語る。同氏がADMに入社したのは2011年11月のことで、当時の最高経営責任者(CEO)であるローリー・リード氏が率いる改革チームの一員として、AMDを新しい方向に導いた。
ドミンゲス氏は、すぐに積極的な計画を練り始めた。それは、24カ月という歳月をかけて既存のデータセンターの大部分を閉鎖することで、ITのサイズとコストを大幅に削減するというものだった。
「当社がデータセンターに配置していた機器の約70%は、スクラップ同然で売却するか、退役させるか、廃棄することになった。その後、新しいテクノロジーを使用して、データセンターの機能を凝縮することができた」(ドミンゲス氏)
ビジネス部門との密接な協力によって実現した大掛かりな2年越しの転換プロジェクトの大部分は自己資金で賄うことができた。その全容を紹介したい。
自分でやるという姿勢を育てる
ドミンゲス氏が最初に直面した難題は、IT部門を改革チームに引き入れることだった。
「タスクを遂行できるとIT部門を説得する必要があった。このタスクは短期間で行う必要があり、これまでにないほど挑戦的なものだった」(ドミンゲス氏)
目の前にあるタスクは気が遠くなるようなものだった。データセンターを統合した他の企業と異なり、ドミンゲス氏には新しいテクノロジーを構築して、スイッチを押すだけというアプローチを取る資金はなかった。つまり、彼のチームは、既存のデータセンターにある機器を新しいデータセンターに移動しなければならなかった。これにはAMDが運用している大規模な独SAPの環境とその大規模なエンジニアリンググリッドも含まれる。
「サーバを物理的に移動して、米アトランタのデータセンターに機器を運ぶ必要があった。また、マレーシアのデータセンターにも機器を輸送する必要があった」(ドミンゲス氏)
まずITチームが驚いたのは、ドミンゲス氏が、このプロジェクトの管理を大手ITサービス会社に委託するために資金を投じても意味がないと考えていたことだ。このような契約で最初に行うことは、契約企業のアプリケーションとエコシステムについて、その企業のITチームに話を聞くことだ。ITチームが既に把握していることを彼に伝達すれば外部に有償で作業を委託する必要などないとドミンゲス氏はいう。
「当初、この対応が周囲を驚かせたことは知っている。だが、この対応を良いとIT部門が思うようになってからは状況が変わった。タスクを遂行できることに確信を持ち始め、私たちができることは着実に増えていった」とドミンゲス氏は語る。
彼のチームが最初に挙げた大きな成果は、オースティンにあるデータセンターの閉鎖だった。このタスクの遂行には8カ月の歳月を要した。このデータセンターには、SAPの環境だけでなく、AMDの主要なエンジニアリングシステムの60%が集約されていた。また、ビジネス部門との密接なコラボレーションも必要だった。
エンジニアリンググリッドのダウンタイムの影響を最小限に抑えるために、ドミンゲス氏は多くの従業員が長期休暇を取る独立記念日の連休を利用した。IT部門はAMDのエンジニアと密接に連係し、製品ロードマップの分析、タイムラインの策定、移行の詳細な予定の調整を行った。
「当社のSAP環境でも同じようなことを行った。SAP環境を使用する経理のチームおよびビジネス部門と協力して作業を進め、システムの移行については詳細な時期を詰めた。また、システムが4日ダウンすることは誰もが分かっていた」とドミンゲス氏はいう。というのも、この期間には物理的な機器の移動にかかる28時間が含まれていたからだ。
データセンターを移行するたびにITチームは自信を深め、作業効率は上がった。
「自分たちはできるという考えがチームで支持されるようになってから、スケジュールは前倒しで進むようになった。1つ目のデータセンターの移行は、完了までに8カ月かかった。だが、一番最近行ったデータセンターの移行は3カ月で完了した。学習によってペースを上げることができた」(ドミンゲス氏)
コミュニケーションを重視せよ
2年の歳月を掛けて18箇所あったデータセンターを2箇所に減らすという計画をスケジュール通りに達成することはAMDのビジネスにおける信用とビジネスへの参画を得る上で重要だったとドミンゲス氏は語る。とは言うものの、IT部門の責任者は、この規模のITの転換が対立なくして行われることはないことを肝に銘じておくべきだろう。「経営陣にプレゼンテーションを行ったところ、ダウンタイムを避けられないことについて質問が集中した。このような質問には、こう切り替えした。『テクノロジーを構築して、全てのインフラを維持するために必要な額の小切手を切ってくださる方がいれば、そうしたいと思います。そうすれば、ダウンタイムを回避できます』」(ドミンゲス氏)
経営陣の中には、そのような小切手を切ることに同意する人がいなかったため、ダウンタイムは避けられなかった。会社の上層部とスムーズにやりとりする上で欠かせなかったのは、密にコミュニケーションを取ることだったとドミンゲス氏は次のように語る。「十分なコミュニケーションを取ることは難しい。常にメッセージを送り続け、情報を提供し、何をしているか理解してもらう必要がある」
特に会社の上層部には、そのような対応が必要になるとドミンゲス氏は補足する。会社の上層部がチームの一員になっていて、この移行に意味があることを理解していれば、抵抗や反対への対応は随分楽になる。
自社開発のテクノロジーと自己資金による立ち上げ
このITの転換プロジェクトはAMDにもう1つの重要なメリットをもたらしたとドミンゲス氏は話す。ドミンゲス氏はAMDのテクノロジーを使用して、統合と転換を実現した。
ITチームは「AMD Opteron」と「AMD SeaMicro」を組み合わせて使用した。前者はサーバとプロセッサワークステーションラインの製品。後者は、1つのデータセンターサーバラックに何千基ものコアと5ペタバイトのストレージを配置できる処理能力とストレージ容量を兼ね備えたサーバだ。
「データセンターに配置したAMDベースのサーバで企業を運営できるという顧客事例になった」(ドミンゲス氏)
AMDテクノロジーを使用して計画を実現したことに加え、IT部門でコストを削減できる分野とリソースを見つけることで、この統合プロジェクトの資金を捻出できたとドミンゲス氏はいう。データセンターの閉鎖が進むにつれて、プロジェクトは自己資金で運転できるようになった。ドミンゲス氏は、メンテナンスコストを削減し、契約を解除し、アプリケーションを退役させ、ハードウェアを処分し、データセンターの運用に必要なオーバーヘッド(スタッフ含む)を削減することができた。
「この計画のために多額の資金が新たに提供されることはなかった。新たな資金を得ることが難しい場合は少なくないだろう。だが、重複とコスト削減に本気で取り組み、環境を簡略化することで、少なくない金額の自己資金を手に入れることは可能だ」(ドミンゲス氏)
大規模なプロジェクトで絶えず変化する部分については、最初から戦略と優先順位付けが必要になる。「優先順位と必要なスキルを照らし合わせて、そのスキルの調整が必要な部分を特定しなければならない」とドミンゲス氏は語る。
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