コストとスピードはクラウドの勝ち
データセンター信奉者がクラウドに移行する意味
データセンターに大金を投じ大規模な運用を続けてきた企業にとって、クラウドへ移行は返ってコストが高くつくと考えるかもしれない。しかし、そうした考え方はいずれ破綻するだろう。
「死んで冷たくなった自分の手から奪われるまで、私はデータセンターを手放さない」――。一部の大企業のIT部門では、そうした考えがいまだに根強い。だが、こうしたデータセンター信奉者はこの先、自社のデータセンター施設(あるいは少なくともその一部)を閉鎖してクラウドコンピューティングに移行するという流れに逆らうのに苦労することになるだろう。クラウドへの移行がよしとされる2つの大きな理由は、コストとスピードへの要求だ。
データセンター施設のコスト
まずは、「データセンター運用に大金を既に投じており、簡単に手放すわけにはいかない」という意見から始めよう。米犯罪被害者支援団体Safe HorizonのITインフラ運用担当責任者であるウェンデル・トーマス氏には、そうした考え方がよく分かる。かつて同氏が勤めていた大手企業では、同僚のIT幹部たちが、コストを理由にクラウドに猛反対したという。比較検討したところ、少人数のスタッフを配置して、自社でデータセンターを運用し(この大手企業はデータセンターを6つ持っている)、自社のアプリケーションを管理する方が、クラウドプロバイダーに料金を支払い、2万5000人の従業員向けにアプリケーションをホスティングしてもらうよりも、コストが少なく済むことが分かったからだ。
ビジネスIT戦略のアドバイザー会社である米Corporate Executive Board(CEB)の業務執行社員アンドリュー・ホーン氏は、こうした意見を何度も耳にしたことがあるという。だが同氏は、こうした考え方は時間の経過とともにいずれ破綻すると考えている。経済的意味では、いずれかの時点で、クラウドの方が有利になるからだ。どれだけ多くのデータセンター施設を既に構築したとしてもだ。
「経済的な側面でクラウドの方が有利になるのには幾つか理由がある。クラウドプロバイダーの顧客が増えるにつれ、ゆくゆくは、クラウドプロバイダーが提供できる規模は、大企業が自社で所有できる規模さえ上回ることになる。テクノロジーのコストはどんどん下がっており、クラウドプロバイダーはそれに乗じてインフラを増築している。クラウドプロバイダーの方が、データセンターの設置場所には融通がきき、コストと労働力についても良い選択肢がある」とホーン氏は語る。
さらに同氏によれば、クラウドプロバイダーの方が迅速にデータセンターを最新化できる一方で、企業のCIOは数年後には「時代遅れのデータセンターで動きが取れなくなっているかもしれない」という。「Fortune 50やFortune 100に入る大規模企業は依然として、今は自分たちでデータセンターを管理する方がコストを抑えられ、クラウドを採用するにはまだ障害があると考えている(主にセキュリティとプライバシーの問題)。だが、こうした大規模企業のデータセンターインフラ管理者と話をしてみたところ、管理者らは数年後にはこうした問題は解消されると考えており、クラウドモデルに対してそれほど抵抗を感じていないようだ」と同氏。
なお、2013年の予算では依然として、ITコストの削減が最重要課題だ。ITの運用コストは平均すると、IT予算の60%以上を占める。となれば、インフラコストの削減策として、システムをクラウドに移行させる以上に優れた方法があるだろうか?
IT運用におけるスピードへの要求
米TechTargetのSearchCIO.comに近く掲載予定の記事の中で、企業のCIOを務めるニール・ニコライセン氏は自身が最近抱いている最大の懸念について語っている。その懸念とは、「機敏性に欠けている」というものだ。そして、クラウドは災害復旧(DR)/事業継続(BC)戦略に関して、同氏の懸念を緩和してくれるという。「仮想化はDR/BC対策をポータブルにする。つまり、ホットサイトにせよ、ウォームサイトにせよ、コールドサイトにせよ、利用できさえすれば、ロケーションは関係ないということだ。そのため、他社のクラウドサービスを自社のDR/BCサイトとして利用するなどといった驚くべき柔軟性が実現する。かつてはDR/BC対策の遂行には多くの時間とコストを要していたが、今では時間もコストもはるかに少なく済むということだ」と同氏は述べている。
また、顧客と従業員向けにモバイルアプリを開発し、Webサイトを作り替えるというプレッシャーは非常に大きい。新しいWebサイトやアプリケーションを1年か2年に一度公開すれば済む時代は終わった。今や企業の中には、「使い捨て」のモバイルアプリを開発し、数週間で次のプロジェクトに移るようなところもある。会社が期待するのは、さまざまなプロジェクトやサービスを迅速に提供することだ。クラウドは、IT部門が顧客や社内のスタッフに対し、こうした新しいアプリケーションやサービスへの迅速かつ簡単なアクセスを提供するための理想的な場所となる。
2012年12月にラスベガスで開催された「Gartner Data Center Conference」では、2000人のITプロフェッショナルから成る聴衆に対し、ある講演者が「CIOがクラウドの導入を希望する場合、そのCIOは何を考えていると思うか」と質問した。これに対し、「アジリティを高めたいと考えている」と答えた聴衆が54%に上った。つまり、「どのデータとインフラをクラウドに移すべきで、どのデータとインフラをクラウドに移すべきでないか」についてはまだ答えが出ていないものの、クラウドへの移行を支持する考えは、クラウド化への反対意見を何とか打ち負かせるということだ。クラウドへの移行には、アジリティの強化やサービス提供コストの削減の他、コモディティサービスから解放されることで、より戦略的な取り組みに注力できるといった利点がある。
もちろん、これは必ずしも、パブリッククラウドプロバイダーの話とは限らない。CEBのホーン氏によれば、現在大企業で進められているクラウド投資の多くは、インターナルクラウド(社内クラウド)の構築にフォーカスしたものだという。そうした場合は、コストがじわじわと増大する可能性もある。
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