いまさら聞けないハイブリッドクラウド【第2回】
4パターンで理解する、ハイブリッドクラウドのネットワーク
ハイブリッドクラウドを実現するためのネットワークをテーマに、代表的な4パターンを取り上げ、それぞれの接続方法、特徴、想定する利用シーン、提供事業者例を紹介する。
第1回「ハイブリッドクラウドってどんな技術? 実態をひも解く」では、ハイブリッドクラウドとは何か、その形態やメリット、活用例、5つの構成要素を紹介した。
第2回では、ハイブリッドクラウドを実現するための構成要素として、「クラウドサービスとの接続方法」をテーマに、代表的な4パターンを取り上げ、それぞれの接続方法、特徴、想定する利用シーン、提供事業者例を紹介する。
代表的な4パターンは以下だ。以降、1つずつ解説する。
- (1)同一事業者が提供するコロケーションサービスとクラウドサービスとの接続
- (2)インターネットVPNによるクラウドサービスとの接続
- (3)専用線によるクラウドサービスとの接続
- (4)複数のクラウドサービスが同時利用できるマルチクラウド対応接続
(1)同一事業者が提供するコロケーションサービスとクラウドサービスとの接続
接続方法
事業者のデータセンター内でクラウドサービスが運営されているため、光ファイバーなどの構内回線でシステム間を結合。クラウドサービスの利用者のプライベートセグメントと、コロケーションサービス内の利用者のスイッチ(またはルータ)を、レイヤー2やレイヤー3で接続。
特徴
利用料金は固定接続費用のみのケースが多く比較的安価。接続に要する運用工数(構築、監視、障害時の対応)も少なくて済む。直接接続のため、セキュアかつ広帯域なトラフィックが利用可能。
また、クラウドサービス自体と接続サービスが同一事業者によって提供されるため、障害時の切り分けなど窓口を一本化しやすい。
想定する利用シーン
前提として、コロケーションサービスの利用を必要とするシステムとのハイブリッド利用となる。
- 高性能ストレージや高性能サーバなどクラウドサービス化ができない機器をコロケーションサービスに持ち込み、その他はクラウドを利用し、一体のシステムとして運用。また、性能要件以外でも、常時利用をする場合は、大量利用や高性能利用になればなるほどクラウドサービスの方が割高となりやすい
- 常時必要なリソース分のみプライベートクラウドとしてコロケーションサービスに設置し、開発や検証などの一時的な変動分はクラウドサービスを利用することによって、コストの最小化を目指す
などのケースが挙げられる。
提供事業者例
- NEC(NEC神奈川データセンターと「NEC Cloud IaaS」)
- 富士通(富士通データセンターと「FUJITSU Cloud IaaS」)
(2)インターネットVPNによるクラウドサービスとの接続
接続方法
VPNの対向先として、仮想マシンや仮想アプライアンスを利用してクラウドサービス上で利用者自身が構築する方法と、クラウドサービス事業者が提供している機能やオプションを利用する方法の2種類がある。クラウドサービス事業者が提供する機能やオプションを利用する場合は、レイヤー3接続のみ可能な事業者と、レイヤー2接続との選択が選べる事業者とに分かれる。
特徴
クラウドサービスのインターネットバックボーンを利用するため、料金は従量課金制が多い。ゲートウェイとなるVPN用インスタンス(仮想マシン、仮想アプライアンス)、VPN機能、VPNオプションの性能がボトルネックとなる可能性があるため、広帯域を必要とする接続にはあまり向かない。
短納期で利用開始ができ、やめることも簡単なため、機動的な運用が可能だ。クラウドサービス事業者が提供する機能やオプションを利用するなら、運用工数が少なくて済む。
想定する利用シーン
比較的小規模なシステムにおけるハイブリッド利用や、トラフィック量の少ないシステムが中心となる。
- オフィス内システムのBCP(事業継続計画)対策として、クラウドサービス上にバックアップシステムを構築しデータ連係
- グループウェアやCRMなど、クラウドサービス事業者やそのパートナーが展開する製品を、あたかもオンプレミス上のシステムのように利用
- 短期間のプロジェクトなど、利用期間が限定される場合のハイブリッド利用
などのケースが挙げられる。
提供事業者例
- ニフティ(「ニフティクラウド VPNゲートウェイ」)
- ヴイエムウェア(「VMware vCloud Air」)
(3)専用線によるクラウドサービスとの接続
接続方法
クラウドサービス利用者が直接接続する場合と、キャリアなどが提供する接続サービスを利用する場合の、大きく2パターンに分けられる。
1.利用者が直接接続する場合
クラウドサービス事業者が提供するアクセスポイントのあるデータセンターに、コロケーションサービスを借り、ルータなど機器を持ち込み、データセンター事業者の構内回線を利用してアクセスポイントと接続。クラウドサービスの顧客プライベートセグメントと顧客コロケーション環境をレイヤー3で接続する方式が多い。
2.キャリアなどが提供する接続サービスを利用する場合
上記1の環境を接続サービス提供会社が所有しており、他テナントと共有してその一部を利用。
特徴
利用者環境からクラウドサービスまで専用線(閉域網)で接続できるため、セキュアに利用が可能。広帯域での接続にも向いている。利用料金は(1)(2)と比べると相対的に高くなり、固定の接続料金に加えて、トラフィックの従量課金も必要となるクラウドサービスが多い。利用者が直接接続する場合は、コロケーションサービスの費用が必要なため、接続用途のみに利用するのではなく、ハイブリッド接続が必要なオンプレミスシステムを持ち込んでしまった方が有効活用できる。
「1Gbps以上の帯域が必要な場合、既に利用しているイントラネット網に追加して使いたい場合などは、利用者による直接接続」「運用工数を減らし少しでも安価に抑えたい場合は、共用型の接続サービスを利用」などと用途を分けて選択いただきたい。
想定する利用シーン
広帯域を必要とするシステム、専用線や閉域網クラスの品質を必要とするシステムでの利用が中心となる。
- オンプレミスとクラウドサービス間で大量の通信が発生するシステム
- オンプレミスとクラウドサービス間を冗長構成で接続し、通信遅延も起こしにくい品質の高い環境が必要なシステム
などが挙げられる。
提供事業者例
- KDDI(「AWS with KDDI」)
- ソフトバンクテレコム(「ダイレクトアクセス for Microsoft Azure」)
(4)複数のクラウドサービスが同時利用できるマルチクラウド対応接続
接続方法
(3)を複数のクラウドサービスにおいて同時に行えるよう設計された接続方式。レイヤー3での接続となり、1つの接続ポイントを介して複数のクラウドサービスへのアクセスが可能。
特徴
複数のクラウドサービスと接続できるだけでなく、利用中に、接続先クラウドサービスを増やす、減らす、変更する、といった機動的な運用も行える。接続サービスとして提供されているため運用工数は少なくて済むが、利用者側において、複数のクラウドを管理するための知識やスキルが必要となる。
想定する利用シーン
文字通り、複数のクラウドサービスとの接続が必要なシステムにおける選択肢となる。
- BCPやベンダーロックイン回避の観点から、複数のクラウドサービス上で分散利用をしているシステム
- 複数のクラウドサービスに必要とする機能がまたがっている、今後またがるかもしれないシステム
- SIerや運用事業者などにおいて、エンドユーザーごとに異なるクラウドサービスの監視や対応を一元管理したい場合
などが挙げられる。
提供事業者例
- ビットアイル(「ビットアイルコネクト」)
- ユニアデックス(「ダイレクトコネクションサービス」)
以上の代表的な4つの接続方式を一覧表にまとめると以下のようになる。
| 接続パターン | 価格 | 回線速度 | 開始までの納期 | 接続方式 | 運用負荷 | マルチ クラウド |
|---|---|---|---|---|---|---|
| (1)同一事業者ハイブリッド接続 | 安 | 速 | 短 | L2 or L3 | 低 | × |
| (2)インターネットVPN ハイブリッド接続 |
安 | 遅 | 短 | L2 or L3 | 低 or 中 | × |
| (3)専用線ハイブリッド接続 | 中~高 | 遅~速 | 短 or 長 | L3 | 低 or 高 | × |
| (4)マルチクラウド接続 | 中 | 遅~速 | 短 | L3 | 低 | ○ |
システムの持つ課題に対して、「クラウドサービスそのものが全てを解決してくれる」のではなく、「クラウドサービスをどのように交えて、どのように活用できるか」(=ハイブリッドクラウド)が解決策となる。クラウドサービスの発展と同時に、システム連係や管理方法も日々進歩しており、複数の接続方法が提供できる事業者、今回紹介した以外の接続方法、提供事業者も多くいる。
事業者によって仕様も異なるため、想定する利用シーンを参考にしていただき、コスト、品質、性能、帯域、利用期間、仕様要件などの優先順位を決めて、クラウドサービスの想定利用量とともに、事業者へ相談いただきたい。接続方法だけではなく、最適なハイブリッドの組み合わせも提案してくれる。
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いまさら聞けないハイブリッドクラウド
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