サーバーワークスとテラスカイの提携から見えるクラウドトレンド
広まるハイブリッドクラウド、クラウドは用途別に使い分ける時代へ
大量データを一気に処理できる“ダンプカー”のAWSと、業務アプリケーションとして機能性に優れる“宝石箱”のSalesforce。この2つを組み合わせるハイブリッドクラウドの事例が増えている。
ユーザー企業がインフラを含めたITシステム全般に、複数のクラウドサービスを使うことが当たり前となる時代が、もう目前に迫っている。
従来、何かの機能を使うことが目的で選んだクラウドサービス(IaaS/PaaS)を他の機能でも使い続けている企業は多かった。しかし、別の用途で使うことによって余分なコストや手間が掛かるケースもある。用途別に導入した複数のクラウドサービスを利用、連携させることでこのコストを削減したり、効率を上げる利用法がユーザー企業の間で広がっているのだ。最先端のソリューションを紹介する。
2013年10月3日、Amazon Web Services(AWS)を専門とするシステムインテグレーター(SIer)のサーバーワークスと、Salesforce.com(Salesforce)の導入を得意とするテラスカイは、セミナー「SalesforceとAWSによるハイブリッドクラウドがもたらす新たな価値」を開催した。両社は2013年9月4日に資本・業務提携を発表。お互いの得意な領域で協力し合うことで、ユーザー企業がAWSとSalesforceを適材適所に導入できるようワンストップで支援する。
サーバーワークス 代表取締役 大石 良氏は「これからはAWSとSalesofrceを組み合わせる時代が絶対にくる」と宣言。その理由を次のように説明した。
「例えるならば、AWSは石を運ぶダンプカー、Salesforceは宝石箱。どちらも石を入れる物だが、適している量や中身の重要度が違う」(大石氏)。ダンプカーのAWSは、巨大なストレージサービス「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)、Pバイト級のデータウェアハウス「Amazon Redshift」、莫大な量のデータ処理ができる「Amazon Elastic Map Reduce」(Amazon EMR)を有し、大量データを一気に処理できるパワフルな存在。一方のSalesforceは、大量のデータを扱うことには向いていないが、業務アプリケーションとしては完成されており、「レポート」機能や「ダッシュボード」機能に優れ、業務のデータをさまざまな角度から見ることができる。両者は補完し合えるというわけだ。
AWSとSalesforceの連携で多いのは、ストレージ連携やBI(ビジネスインテリジェンス)ツール連携だ。テラスカイ 代表取締役社長 佐藤秀哉氏はこの2つのパターンについて紹介した。
ストレージ連携の例では、「宝石箱のSalesforceにただの石を入れるのはもったいない。Salesforceのストレージはデータベース機能付き。例えば、PDFやプレゼン資料、文書、写真などは、データサイズが大きい割には検索性が要求されない。こうしたデータベース化する必要のないデータは、AWS側にアーカイブした方がコストは安い。そして、格納先だけをSalesforce側にひも付ければ、ユーザーにはあたかもSalesforce上にファイルがあるように見える」(佐藤氏)
こうした機能を知らない企業は、Salesforceに非構造化データを含め全てのデータを集約したり、Salesforceをバックアップ代わりに使用し、コスト増大を招くことになる。両社が狙うのはこのコストを削減することだ。
BIツール連携では、「分析に必要なデータをSalesforceや社内システムなどから取り込み、AWS上で稼働しているBIツール(『Yellow Fin』『Dr.Sum』など)で処理をした結果をSalesforceに書き戻す。AWSの強力なCPUパワーを借りることで、Salesforceでは実装が困難な高度な分析を可能にする。AWSとSalesforceの間は、『SkyOnDemand』のようなEAIツールで連携する」(佐藤氏)
既存の製品の中には、Salesforceと直接連携できるBIツールも存在する。だがその場合は、Salesforce上にデータを置かなければならず、大量のデータ処理は難しくなる。
一方、重要でデータベース化しておきたいデータは、Salesforceの利用が向いている。AWS専業のSIerであるサーバーワークスも、社内システムではAWSとSalesforceを使い分けている。
「サーバーワークスでは、約150社のお客さまの数百というAWSアカウントを抱えている。AWSのアカウント情報は、漏えいすれば大問題になる非常に重要な情報。サーバーワークス内でも必要なときに必要な人だけが閲覧できるようアクセス制限を掛け、Salesforceで管理している」(大石氏)
また、サーバーワークス社内のAWSの利用料金もSalesforceでレポートを出しているという。AWSの料金明細はCSVで吐き出されAmazon S3に格納される。そのCSVデータをSalesforceのレポートに入れると、プロジェクトごとの月単位での利用額が一目瞭然になる。プロジェクトに掛かるシステム費用のROIが適切かどうかを計ることができる。
ユーザー企業のハイブリッドクラウド事例
セミナーでは、自動溶接装置メーカーの三葉電熔と、総合商社の丸紅による、AWS/Salesforceをはじめとしたハイブリッドクラウド事例が紹介された。三葉電熔は、自社の営業支援・顧客管理にSalesforceを活用し、販売管理システム「商蔵奉行」をAWS上で使用。また、2つのシステムを連携させることで、これまでバラバラに存在していた各営業担当のナレッジを一箇所に集め、情報共有基盤を作り上げた。
丸紅は、子会社を含むグループの情報基盤を統合した、グループクラウド計画を進めている。IaaSにAWS、営業支援ツールには一部でSalesforce、グループウェアにはMicrosoft Office 365を導入するなど、システムの用途や業務に応じてさまざまなクラウドサービスを使い分ける方針だ。
こうしたハイブリッドクラウドの事例は、今後さらに増えていくだろう。TechTargetジャパンでは継続的に取り上げていく予定だ。
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