ソーシャルとモバイルを支える、Salesforce.comの新しいクラウド基盤Dreamforce 2012リポート

Salesforce.comには、同社の技術の骨格ともいえる9つのプラットフォームサービスがある。Dreamforce 2012では、俊敏性、モバイル、信頼性をキーワードに幾つかの新サービスが発表された。

2012年09月27日 08時00分 公開
[荒井亜子,TechTargetジャパン]

Dreamforce 2012キーノートのリポートはこちら


新しいプラットフォームに求められる3つの要件

 米Salesforce.comが開催した「Dreamforce 2012」(米国時間2012年9月18日~21日)の3日目では、同社のプラットフォームに関しての講演が行われた。登壇したのは、米Salesforce.comで、COO(Chief Operating Officer)としてグローバルプラットフォーム、マーケティング、オペレーション部署を統括するジョージ・フー氏と、テクノロジー部門EVP(Executive Vice President)として全ソフトウェア開発を統括するパーカー・ハリス氏、プラットフォーム事業部 シニアディレクター チャック・モルティモア氏だ。

 Salesforce.comには、営業支援、顧客管理、CRM、カスタマーサービス、タレントマネジメントなど、たくさんのアプリケーションサービスが存在する。こうしたさまざまなアプリケーションの根底を支えるのがSalesforce Platformだ。いわばSalesforce.comの技術の骨格ともいえる大切な機能だ。

 “ソーシャル革命”の時代では、ソーシャルメディアやモバイルデバイスに対応した新しいアプリケーションを、迅速に低コストで開発することがカギとなる。それにはレガシーなプラットフォームを使っていては太刀打ちできない。フー氏は「Lotus Notes、.NET、Oracle Databaseは、ソーシャル以前、モバイル以前に作られたもの。これらを使って新しい方向に行こうとしても遅すぎるし高すぎるし複雑すぎる。フラストレーションがたまる」と指摘。その上で、ソーシャルとモバイルのための新しいプラットフォームの共通原則を3つ掲げた。

(1)俊敏性(Speed)

(2)モバイル(Touch)

(3)信頼性(Trust)

だ。

Salesforce.comの技術を支える9つのプラットフォーム

 Salesforce.comでは、Salesforce Platformとして9つのプラットフォームを展開している。本稿では、Dreamforce 2012で紹介された新しいプラットフォームを中心に、先に挙げた3原則と照らし合わせながら、特徴的なプラットフォームを整理して見たい。

9つのプラットフォーム《クリックで拡大》

Force.com

 まず、Salesforce Platformの代表格ともいえるのが「Force.com」、従業員向けアプリケーション開発基盤だ。ビジュアルツールや豊富なテンプレートが用意されており、営業支援、代理店管理、コールセンター業務、社内のワークフローといった社内向け業務アプリケーションを容易に開発することができる。カスタムアプリケーションには非公開型ソーシャルネットワークを簡単に追加できる他、一度のビルドでモバイルデバイスに配布する機能もあるという。

 米国連邦調達庁(GSA:General Services Administration)は、Force.comによって1700のアプリケーションを15に統合し、さらに26の追加アプリを6カ月で開発したという。フー氏はこの事例を取り上げ、「皆さんもLotus Notesを使っているのではないか。こんな風に合理化したくないか。(レガシー基盤から)近代的なモバイル基盤に移ろう。米国政府ができたんだから皆さんにもできる!」と聴衆をたきつけた。

 Dreamforce 2012で発表されたプラットフォームの新機能として注目されたのが「Force.com Canvas」だ。Javaや.NETをはじめ、さまざまなプログラミング言語で書かれた多様なアプリケーションを、Salesforceの統一されたUIで使用できる機能である。ハリス氏によると「単なるUIレベルの統合ではなく、システムの深い部分までシームレスに連携している」点がポイントだという。これによって、SAP ERPなどの既存アプリケーションも、Salesforceのプラットフォーム内で(プラットフォームを移動することなく)使用できるようになる。Facebook上でアプリケーションを作ったことがある人はイメージしやすいだろう。「Chatterの新機能から見る――ソーシャル革命が変える私たちの未来」で紹介したChatter Communitiesや後述するSalesforce Identityと併せて使用すると、一層の効果を発揮しそうだ。

Force.com Canvas《クリックで拡大》
Previewerの画面。開発したアプリケーションを表示《クリックで拡大》

Heroku

 「Heroku」はRuby on Rails、Ruby、Scala、Node.jsなどに対応したWebアプリケーション開発プラットフォームだ。さまざまな言語をサポートし、Webアプリケーションの豊富なアドオン(機能)を備え、短期間にスケーラブルな環境構築を実現する。社内向け業務アプリケーションに適したForce.comと比べ、自由度の高いアプリケーション開発が可能だ。

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