Salesforce.com主催のカンファレンス「Dreamforce 2012」では、ソーシャル革命をテーマに、多数の事例と新サービスが紹介された。本稿では、企業内SNSの「Salesforce Chatter」の新機能を中心にリポートする。
2012年9月20日(米国時間9月19日)、米Salesforce.com主催の10回目となる「Dreamforce 2012」が米国サンフランシスコで開幕した。登録者数9万人を超える大規模なカンファレンスだ。750以上のセッションと、350社を超える企業の展示が集結し、単独企業が主催するイベントでは世界最大級の規模だといえる。
サンフランシスコ国際空港からダウンタウンに向かう道中、そして会場のモスコーンセンター周辺には、あちらこちらにDreamforceの広告が張られ、Dreamforceと書かれたバスが走り、Dreamforceの青いストラップを下げた人たちであふれ返っていた。会場に入れば、コンサート広場やDJブースが設置されていて、企業向けのITカンファレンスとは思えないほどのお祭り感である。
演出も派手だ。2日目のオープニングではMCハマーがダンサー集団を引き連れてパフォーマンスを披露。午後には米Virgin Groupの創業者であるリチャード・ブランソン氏がゲストスピーカーとして登壇し、立ち見まで出るほどの盛況ぶりだった。夜にはロックバンドのRed Hot Chili Peppersがライブを披露。こうした名だたるゲスト陣は、いずれもSalesforce.com 会長兼CEO マーク・ベニオフ氏の人脈であることも多いのだとか。業界にとらわれず、異業種ともフラットにコラボレーションしてしまうところは、Salesforce製品のインタラクティブ性と通じるものがないだろうか。
さて、2日目のキーノートでは、ベニオフ氏とユーザー企業による講演が行われた。
2012年のテーマはソーシャル革命。ソーシャルネットワーク(以下、ソーシャル)が企業の未来をどう変革するかが示された。「テクノロジーは、60年代のメインフレーム、70年代のミニコン、80年代のクライアント/サーバ型、90年代のクラウドコンピューティング、2000年代のモバイルコンピューティングという変遷を遂げてきた。そして2010年代、“Business is Social”(ビジネスはソーシャル)であり、“ソーシャル革命”の時代となった」(ベニオフ氏)。
2012年の米McKinsey Global Instituteによる調査では、ソーシャルテクノロジーを採用している企業は70%に上り、これらのソーシャルテクノロジーが生み出す可能性のあるビジネスバリューは1兆3000億ドルに上ると見込まれている。また米IDCの報告によると、企業のソーシャルへの支出は47%増加しており、テクノロジー分野の中で最も急成長しているといえる。米IBMが世界主要企業に勤める1709人のCEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)を中心に行った調査「IBM Global CEO Study 2012」では、ソーシャルは従来の手法に替わり企業と顧客のエンゲージメントに使われるトップ2の手法の1つになるとされている。
「顧客のつながりを支援することこそ、Salesforceの最大のミッションだ。企業と顧客、企業とパートナー、企業と従業員、企業と製品を、新しい手法でつなぐ。ソーシャルを介した1人1人のつながりは、われわれのビジネスのやり方自体を大きく変えることを意味する。それこそがソーシャル革命だ」(ベニオフ氏)
企業と製品をつなぐとはどういうことか。ベニオフ氏は米General Electric(GE)の事例を紹介した。「私はGEのCEOに、『GEの将来性とは、機械に対してカスタマーサービスをすることだ』と言った。GEのエンジニアは、飛行機のエンジンとコラボレーションを実現するだろう」。つまり、GEのソーシャルプラットフォーム上にはエンジンに関するさまざまな情報がポストされ、それらはエンジニアだけでなくサポート担当や顧客も追うことができる。その結果、新しいカスタマーサービスが生まれるという未来の仕組みだ。「機械はたくさんのデータを持っている。われわれはその情報を早くつかみ、例えば飛行機の燃料効率を上げるといったビジネスに生かしたい」(ベニオフ氏)
そして重要なのは、この新しいビジネスの価値であるソーシャルはテクノロジーで実現されるものであり、クラウドやモバイルの世界と融合するということだ。講演では、事例とともに多くの新サービスが紹介された。どの事例においても中心的な役割を果たしていたのは企業内SNSの「Salesforce Chatter」(以下、Chatter)だ。2009年に発表されたChatterには既に17万のアクティブなネットワークがあるという。ソーシャルとビジネスプロセスを1つにし、企業をあらゆるものと結び付けるプラットフォームとして、Chatterは今後も重要な役割を果たすだろう。本稿ではChatterをベースとした新サービス「Chatter Communities」「Chatter box」を中心に、幾つかの新サービスを紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
インフラのハイブリッドクラウド化を進める一方、オンプレミスとクラウドを管理するためのツールが異なるため、“二重管理”が発生している企業は少なくない。これでは運用負荷は高まるばかりだ。そこでこの状況を解消する方法を解説する。
SaaSの普及により、企業の情報システムは大きく変化した。リモートワークやDX推進が加速する一方、情報システム部門には負担がかかり、セキュリティリスクも増すこととなった。調査レポートから、今後の“在り方”について考察する。
ビジネスパーソンに欠かせない名刺だが、作成/発注業務は意外と手間がかかるため、担当者の負担になっていることも少なくない。そこで、名刺の作成から注文までの全工程をWeb上で完結し、業務を効率化する名刺発注サービスを紹介する。
契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。
半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。