クラウドサービスを利用する際の選定基準の一つになるのが、「シングルテナント」と「マルチテナント」の違いだ。テナントの形態をどう選べばいいのか。それぞれのメリットと注意点を押さえておこう。
インターネットを通じてアプリケーションを利用するSaaS(Software as a Service)などのクラウドサービスでは、「マルチテナント」と「シングルテナント」という2つの提供方式がある。その違いを理解することで、自社に合ったクラウドサービス選びがしやすくなる。
クラウドサービスを利用する企業には、アプリケーションの動作環境が割り当てられる。その動作環境を「インスタンス」と呼ぶ。シングルテナントは、アプリケーションのインスタンスを1つのユーザー企業に提供する形態であり、SaaSで広く採用されている。ここで言うテナントとは、インスタンスの利用単位を指す。
シングルテナントの一般的な特徴として、インスタンスに対するユーザー企業の関与度や、制御の自由度が高いことが挙げられる。テナント同士は互いに独立しており、テナントを共有する場合にありがちな制約はない。こうしたシングルテナントとマルチテナントの違いは、クラウドサービスを選ぶ際の重要なポイントの一つになる。
シングルテナントでは、各テナントが独自のデータベースとアプリケーションの実行環境を備えている。各テナントのデータは互いに隔離される。各テナントのデータは独自にバックアップする必要がある。これにより、データ損失があっても復元が可能になる。シングルテナントでは通常、サービスプロバイダーによる更新を待つのではなく、独自のタイミングで更新プログラムをインストールできる。
シングルテナントの主な利点は以下の通りだ。
こうしてシングルテナントの利点は豊富だが、他のアーキテクチャに比べると、あまり採用されていない。それは以下に挙げるデメリットに起因している可能性がある。
シングルテナントはマルチテナントと対比される。マルチテナントは、1つのインスタンスが複数の顧客に提供される形態だ。マルチテナントでは、複数の顧客がデータベースとアプリケーションを共有する。セットアップの手軽さやハードウェア要件の少なさを求める企業にとって、通常はマルチテナントが最適な選択肢だ。マルチテナントは企業向けSaaSの形態としては事実上の業界標準になっている。
シングルテナントと比較した場合、マルチテナントには以下の特徴がある。
マルチテナントにはこうした利点があるものの、他のテナントとインスタンスを共有していることから、アプリケーションの大幅なカスタマイズがしにくい。マルチテナントではダウンタイム(システムの停止時間)が発生しやすいという注意点もある。
シングルテナントとマルチテナントを選択する際は、どの程度のカスタマイズ性を求めているかを考慮する必要がある。ただし、ほとんどのSaaSがマルチテナントで運用されているという事実には留意する必要がある。
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