「AWS Summit Tokyo 2015」リポート:ソニー
ソニーが明かす“障害頻発”写真共有サービスの再構築、AWS活用でどう改善?(2/2 ページ)
新システムでは共通基盤を最小限に
新システム基盤では、共通基盤を最小限に(ユーザー認証、プロファイル管理に限定)し、サービス側に機能を持たせることにした。それによって、どのサービスにどのくらいのコストが掛かっているかが分かる他、スケールしやすい構造になった。複雑だったアーキテクチャをできるだけシンプルにするため、共通言語による開発で効率化を促す。また、開発チームと運用チームをサービスごとに分離し、DevOpsができるよう最適化を図った。最新ツールや外部サービスも使い、自動化と運用効率化を進める。
ソニーは以下4つの目標を掲げ、開発環境の作り直しを図った。
- 最先端のSaaS/PaaSの徹底活用
- ローカル環境での開発
- テスト、品質チェックの徹底
- 運用の自動化と安定化
1.最先端のSaaS/PaaSの徹底活用
最先端のSaaS/PaaSの徹底活用では、迅速な開発と環境構築の自動化を目指し、「CircleCI」「Docker」「AWS Elastic Beanstalk」を使用。開発環境を使いまわすのではなく、毎回一からリリースできるようにした。玉井氏は「結果として、デプロイ時間は数日から30分に短縮した」という。
2.ローカル環境での開発
ローカル環境での開発では、個々人にローカルの開発環境を用意した。これまでは、クラウド上の共有の開発環境を使っていたため、個人で設定変更や実験的作業がしづらかった。また、誰かが使っていると他の人が使えず効率悪かった。さらに、開発環境内のシステム更新経緯により差分が発生し、開発環境と本番環境で挙動が異なるという問題も起こっていた。
そこで、モックサーバを使いローカル環境に“フェイクAWS”の開発環境を実現。個々人が自由に設定を変えられる環境を作り、本番環境へのデプロイでも差分を解消した。玉井氏によれば「並列で開発ができるようになったことで、開発効率は6倍以上も上がった」そうだ。ローカルで開発しても最終的にはクラウドで稼働させる。そのため、「評価やステージング環境はクラウドで作って評価した。AWSのシステムも完璧ではない。クラウドに持っていかなければ分からないこともあるからだ」(玉井氏)
3.テスト、品質チェックの徹底
テスト、品質チェックの徹底では、なるべく標準化して品質の良いものを作ることに重点を置き、急がば回れ方式を採用。「スケジュールの問題やサービスの性質にもよるが、テストコード開発やテスト環境開発に総工数の半分以上を投入した」と玉井氏。ユニットテスト、結合テスト、システムテストといったテスト環境全般で自動化を推進。「これまでは自分たちで全部作っていたこともあり、機能の充実やサービス拡充といったことに精いっぱいで、テストやテスト環境にまで手が回っていなかった。やむを得ずそうなったとはいえ、その問題を解消するために自動化は徹底した」と話す。
また、開発環境を作り直すことでテストコード不在という問題も解消できた。開発者自身が品質を作り込み、テストにも責任を負う。開発当初からテストを自動化して継続し、CircleCIも使ってどのくらいテストがされているかも管理した。こうした取り組みによって「メンテナンスが容易になり、デグレードしにくくなった。品質の高いものを作りつつ、新しい機能を入れていくことも可能になった。10回以上のリリースを経てもシステム停止はゼロ」と評価する。
4.運用の自動化、安定化
データ保全では、データの整合性チェックやデータベースのバックアップなどを自動化し、人手が掛からないようにした。負荷対策では、オートスケールはもちろん、外部サービスに対するサーキットブレーカーや内部サービスに対する流入トラフィックの制御などを行った。
こうして再構築したシステムをスタートしたソニー。「魅力的なシステムを作ろうとして失敗した過去もあるが、経験を通して多くのことを学んだ」と話す。AWSについては、「ドキュメントが充実していたこと、オートスケールができること、ソリューションアーキテクトのサポートやエンタープライズサポートが手厚かったこと」を評価していた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
AIで人を減らした企業がもう心変わり 「AIブーメラン現象」の実態
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー