「AWS Cloud Roadshow福岡」東急ハンズ講演リポート(後編)
どこまでもAWSを使い倒す、東急ハンズが掲げるクラウド利用 5つの方針
今後のAWSの利用ではフルマネージドを目指すという東急ハンズ。ベンダーロックインは覚悟の上で、AWS特有のサービスを積極的に活用していくという。
アマゾン データ サービス ジャパンが2014年11月6日に開催したクラウドカンファレンス「AWS Cloud Roadshow 2014 powered by Intel 福岡」から、東急ハンズ 執行役員 長谷川 秀樹氏のセッションの模様をお伝えする。前編「クラウド比較は時間の無駄――東急ハンズ 長谷川氏が語るクラウド導入 5つの極意」ではクラウド導入の極意を紹介した。後編では、東急ハンズが掲げる今後の方針の一部をリポートする。
東急ハンズの今後のAWS活用はどうなる?
方針1.レンサバ的利用からフルマネージドへ
「AWSを使ってオンプレミスではできなかったことをやっていきたい。AWS特有の完全マネージド型(運用不要)なサービスを積極的に利用する」(長谷川氏)――東急ハンズは今後、「Amazon Web Services」(AWS)の利用に関して、仮想マシン「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)をベースとしたレンタルサーバ的な利用方法を縮小する方針だ。
具体的には、ストレージサービス「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)と、リレーショナルデータベースではないNoSQLデータベースサービス「Amazon DynamoDB」を中心にシステムを構成していく。図1「東急ハンズが目指すシステム構成像」を見ると、企業システムにもかかわらず、「Amazon Elastic Block Store」(Amazon EBS)のようなOSからボリュームを直接マウントするディスクストレージや「Amazon Relational Database Service」(Amazon RDS)のようなリレーショナルデータベースがほぼ存在しないことが分かる。
完全マネージド型サービスを使う利点の1つは、ユーザーがバックアップを気にしなくてもよい点だ。Amazon S3は3カ所以上のデータセンターへデータをレプリケーションし、データ破損が99.999999999%発生しないという堅牢性を保持する。Amazon DynamoDBも3カ所のデータセンターへデータを分散保管し高い信頼性を保つ。
また、スケーリングの手間が大幅に軽減される点も魅力だ。Amazon DynamoDBを使用した場合、テーブルサイズを拡張したりスループットを増やした場合でも、追加ハードウェアのプロビジョニング、設定/構成、データの再パーティション化は不要である。ソフトウェア修正プログラムの適用、クラスタ拡張なども自動で行われる。
長谷川氏は「データベースやファイルシステムなどは、こうしたフルマネージドサービスだけで運用していきたい」と話す。
方針2:ベンダーロックインは覚悟の上
フルマネージドを目指すというと、必ず指摘されるのがベンダーロックインの問題だ。これについて長谷川氏は非常にポジティブな姿勢を取る。「これまで、ベンダーロックインはネガティブな表現として使われてきた。ベンダーやシステムインテグレーター(SIer)は、提案時や初期のころは価格を下げて一生懸命に仕事をしてくれたが、ひとたびシステム導入が行われたら最後、対応や価格条件は悪くなる一方だった」と振り返る。
一方で、こうした悪しきベンダーロックインが行われるのは、「人間」が自らの裁量で対応しているからだとも分析する。AWSの場合、誰が客か、どんな客かは関係なく、AWSの基準で「機械」的に値下げをし、次々とサービスをアップデートする。「AWSは構造上、人間のようにサボりようがない。そこが今までのベンダーロックインとは違うところ」(長谷川氏)と話す。
とはいえAWSでも、サービス移行性に目を向けると、ユーザーにとってマイナスなベンダーロックインは起こり得る。AWSよりも良いサービスが出てきとき、簡単に移行できないのではないか。「AWSよりも優れたサービスが登場するころにはきっと、AWSからの移行ツールも登場しているだろう。今までの歴史を振り返ってもそうだった。悪いことを想像して中途半端にAWSに関わるよりも、覚悟を決めて使い倒した方がいい」と持論を述べた。
方針3.夜間バッチを廃止
東急ハンズのIT部門が今、最も止めたいことの1つが夜間バッチだ。同社では「新規にAWSへ移行するシステムでは、夜間バッチを絶対に止めるように」と口酸っぱく言っているという。サーバの電源を落としてから帰ることで、オンプレミスで発生していた夜間の監視コストが削減できる。IT部門にとっても、バッチ不具合で夜間に呼び出されることがなくなるためハッピーだ。
そもそもAWSはオンプレミスと違い、ユーザー企業が自社でサーバを購入するわけではないので、購入したサーバの元を取る必要がない。「オンプレミスでは購入したら24時間動かさなければ損という発想だったが、AWSは変動費なので、今までとは逆の発想になる」と長谷川氏は説明する。AWSはインスタンスの電源をオフにすればコストが掛からないので、サーバはなるべく動かさない方が節約できるのだ。
方針4.回線はSSL/TLS
AWSを利用する多くの企業が、自社のデータセンターとAWSとの接続に専用線あるいはVPN(Virtual Private Network)を利用しているだろう。東急ハンズも例外ではなく、現在は専用線経由でAWSへ接続する「AWS Direct Connect」を使用している。
ところが長谷川氏は「プライベート接続を止め、ネットワークはシンプルにインターネット接続だけにし、データはSSL(Secure Sockets Layer)/TLS(Transport Layer Security)で(暗号化して)通信をしていきたい」と話す。
方針5.マルチクライアント
クライアント端末のマルチクライアント化も目標だ。これまでは共通のOS搭載端末をエンドユーザーに提供していた東急ハンズ。OSのバージョンアップに連動してアプリケーションを改修したり作り直したりしていた。だが、今後はWebブラウザの「Google Chrome」が入っていれば、どの端末を使ってもいいという方針に変えたいという。
「バラバラの端末を管理すると管理コストが増えると言う人もいるが、サーバ側のシステムと比べれば微々たるもの。『タブレットを使いたい』というユーザーに対し、セキュリティ的にどうのこうのと言って導入を認めないのはどうかしている」と辛口だ。
「クラウドサービスを使って『何かあったらどうするんだ?』と批判的になる人がいる。『何かあったら』の『何か』は大体何でもない。単に新しいことに踏み出すのが怖いだけ。気のせいだ。ロジックではない批判は適当にかわして突き進んでほしい。何千万円規模のビッグデータ用のサーバを買うわけではない。AWSはちょっと試す分には少額しか掛からない。試して良いと思ったら思い切り利用する。いつまでも検討しているのではなく、早くトライ&エラーをやった方がいい」とアドバイスした。
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