「New Education Expo 2015」リポート
「タブレット40台を全校共有」は現実的? つくば市・柏市が教育IT化で議論(2/2 ページ)
教員や児童の“IT嫌い”を招かないためには
IT活用を進める教育機関が増えているとはいえ、全ての教員がIT活用に積極的なわけではない。もちろん、アナログな手段だけでも分かりやすい授業を展開できる教員はいる。しかし、ITの活用でより効率的かつ効果的な学習を実現できる場面は多いと考え、教員のIT活用のきっかけ作りに知恵を絞る教育関係者は多い。
西田氏は、授業での教員のIT活用を促す前提として、「教員にタブレットなどのIT製品になじんでもらうフェーズが必要ではないか」と指摘する。「教員がタブレットを日常的に持ち歩き、必要な情報をぱっと見せたり、ぱっと記録を取ったりするのに慣れれば、児童にもそうした要素を生かした学習活動をしてもらうことができるはずだ」(同氏)。柏市の学校の一部では実際、外部企業の協力を得ながら、教員の日常的なIT活用を支える取り組みに着手するという。
一方、現在の児童・生徒は“デジタルネイティブ”などと呼ばれ、生まれたときからIT製品に慣れ親しんでいると考えられているが、その全てがITを使った教育を肯定的に受け入れる保証はない。つくば市の毛利氏は、タブレットのアンケートアプリケーションや電子黒板などを使えばクラス全員の意見が気軽に共有できるようになるものの、使い方によっては児童・生徒からの反発を招きかねないと注意を促す。「他の児童の意見と比較して『こっちの方がいいね』と言ったり、文字量の少なさを指摘したりすると、『タブレットはもういい』と児童に思わせてしまう」(同氏)
児童・生徒の反発を招くことなく、タブレットや電子黒板を使った意見共有のメリットを生かすには、教員の意見の取り上げ方にも工夫が必要だと毛利氏は説明する。「意見の良しあしではなく、『自分の意見をしっかり述べることにこそ価値がある』と評価してあげれば、児童は自ずと意見を出しやすくなる」(同氏)
IT活用を推進すれば自然と“授業”に目が行く
各自治体も教育現場でのIT活用を促すべく、教員を対象にIT活用に関する研修を実施している。一方、IT製品の使い方を伝えるだけの研修にはあまり意味が無い、と考える教育関係者は少なくない。もちろん、IT製品が不得手な教員に使用方法を習得してもらうのは重要なことだ。ただし、IT製品はあくまでも授業を支援する手段の1つであり、使い方を習得しただけでは、授業での効果的な活用事例を増やすことにはつながらない。
柏市でも教員向けの研修を実施しており、IT製品の活用実績が積み重なるにつれて、研修での話題が「IT製品そのものの話題ではなく、『授業中にITをこう使ったことが、学習者のこうした活動につながった』など、授業でどう活用するかといった話題に変わってきた」と西田氏は話す。実際の教育現場でも、教員同士で「算数の教材として、このツールをうまく使えないだろうか」「これが使えるようなデジタル教材はないだろうか」といった話題が頻繁に挙がるようになってきたという。こうした傾向は「つくば市でも同様だ」と毛利氏は語る。
教育へのIT活用をいち早く進めた柏市とつくば市。その両市の教育現場でITそのものから授業へと関心が移っているのは、IT製品への物珍しさがなくなっただけでなく、ITを効果的な学習の実現に生かす成功体験を共有してきたことが影響していると考えられる。これからIT活用を本格化させる自治体や教育機関にとっても、両市をはじめとする先駆的なIT活用事例から参考にできることは多い。
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