失敗しない「学校IT製品」の選び方:セキュリティ編【番外編】
「情報モラル教育」を学校だけが担うのはおかしい(2/2 ページ)
いつ教えるべきか
情報モラルの啓発活動を広く実施している人に事情を聴くと、小学校、中学校、高等学校の間で、情報モラルへの意識や教育の状況にばらつきがあるという。小学校では、情報モラル教育に積極的に取り組みたいと考えている教員が比較的多いものの、具体的な対策や方法が分からず困っている教員も少なくない。中学校の教員だと、既に生徒の過半数がIT製品を利用しており、彼らのITリテラシーの高さを目にして「教える時期を逸してしまった」と諦めがちだという。さまざまなアプリを駆使して頻繁なコミュニケーションするのが当たり前になりつつある高校生に対しては、いわずもがなである。
中高一貫校の中には、あえてIT製品/サービスの利用に過度の制限を設けず、学習者には早めに“痛い思い”をさせて、自ら危険性に気付いてもらうといった考えを持つ学校もあるそうだ。もちろん、情報モラル教育を徹底して学習者の知識を補い、かつ教員が積極的に情報収集してパトロール活動を徹底し、学習者が深刻なトラブルに巻き込まれるのを未然に防ぐようにしているという。こうした取り組みは非常に理にかなっており、地に足を着けた素晴らしい試みだ。ただし、多忙で時間がない多くの教員に対して、同様の取り組みを強いるのは非常に難しい。
こうして現場の声を聴くと、情報モラル教育を教育機関だけが担うのは現実的ではないと考えられる。まずは保護者が、学習者にスマートフォンなどインターネット接続が可能なIT製品を持たせる前に、情報モラルについて教えることだ。IT製品の普及状況を考えれば、小学生までに基本的な知識を教えておくべきだといえよう。教育機関はその知識をベースにして、各学年向けの利用ルールを整備し、現実に即して運用していく。こうしたステップを踏むのが最も効率的だと考えられる(図)。
どうやって教えるべきか
SNSやオンラインゲームのはやり廃りや進化は非常に早い。現状を的確に把握するだけの知見を持ち合わせ、かつ溢れる情報の中から有益な情報を集める手段を持つ人はほとんどいないはずだ。そこで役立つのが、インターネットの情報である。情報モラル教育やその教材、講師派遣などの情報を少し検索してみるだけでも、たくさんの方法が見えてくる。
文部科学省や総務省、公益法人、通信キャリア、セキュリティ製品ベンダー、その他のさまざまな団体や企業が、情報モラル教育に役立つ多くの情報を公開している。インターネットの安心・安全な利用を促進する安心ネットづくり促進協議会のWebサイトは、こうしたWebサイトを一覧として整理しており、なかなか秀逸だ。会員組織が無償で実施する情報モラルに関する出前授業なども紹介している。こうした情報や出前授業を上手く活用すれば、効果的かつ効率的に情報モラル教育ができるだろう。
なお、本稿執筆に当たって、子供とネットを考える会の山口 あゆみ氏に情報提供などのご協力をいただいた。この場を借りて感謝と御礼を申し上げる。
教育機関がIT製品を有効な学習ツールとして利用する例は、枚挙にいとまがない。今後も教育機関でのIT活用は加速度的に進んでいくと考えられ、この動きは止まることも、なくなることもないだろう。その理由は明快で、非常に便利だからだ。ただし上述の通り、IT製品の利用は大きなリスクと危険性を内包していることは否めない。
教育機関のIT活用を取り巻く利便性とリスクとの関係性は、自動車のそれと似ている。国内だけで毎年数千人が交通事故で亡くなっているにもかかわらず、自動車は生産され続けている。仮に自動車がなければ、交通事故死亡者数は限りなくゼロに近づくだろう。しかし、その利便性の高さから、自動車の存在が社会生活の前提となってしまった今、われわれはもう“自動車がない世界”には戻れない。
教育機関のIT活用もまたしかり、である。ITが教育活動にもたらすメリットが明確であれば、できる限りの知恵で安心・安全に教育ITを使える環境を作り、上手に付き合っていくべきだ。
学習者がインターネットにまつわる危険な事件や事故に遭遇してしまう機会を減らすには、情報モラル教育の主体が教育機関なのか家庭なのかという議論ではなく、双方が密に連携をすることが重要だ。繰り返しになるが、単にセキュリティ製品を導入しただけで満足してしまったり、学習者への影響を考慮せずにIT製品の機能をことごとく禁止してしまうことは避けなければならない。セキュリティ製品をとにかく売りつけたいベンダー、(いないと信じたいが)責任を回避したい教員の“大人の都合”で、学習者の貴重な学習機会を奪うことがあってはならない。
執筆者紹介
武田一城(たけだ かずしろ) 株式会社日立ソリューションズ
情報セキュリティ、システムプラットフォーム、オープンソースなどさまざまな分野のマーケティング業務に従事。現在は特に学校IT分野における市場調査や企画に重点的に携わる。2011年より日本PostgreSQLユーザ会の理事を兼務し、代表的なオープンソースデータベース「PostgreSQL」の普及啓発活動も行っている。
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失敗しない「学校IT製品」の選び方
教育機関がIT製品を導入する際、どのような点に気を付けて製品選定を進めればよいのか。製品分野の基礎知識をおさらいしつつ、製品選びのポイントを伝授する。
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