SHA-2への移行も急務だが……
いまさら聞けない次世代の暗号化技術「SHA-3」の基礎と、移行のリミット
SSL暗号化通信のハッシュアルゴリズムは2016年1月までに「SHA-2」へ移行することが要望されている。そのさなか、2015年8月に新たな暗号化技術「SHA-3」が公表された。SHA-1/SHA-2との違い、企業が取るべき準備について紹介したい。
米国立標準技術研究所(NIST)は、「セキュアハッシュアルゴリズム‐3(SHA-3)」標準の最終版を2015年の8月に発行して公表した。同研究所によれば、SHA-3は「電子情報の整合性を保護するための次世代ツール」だという。
だが、本当なのだろうか。
本稿ではSHA-3を紹介する。「SHA-1」および「SHA-2」との違いや、SHA-3で追加されるセキュリティ、SHA-3に対して企業が取るべき方針を解説する。
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SHA-3の必要性について
暗号化ハッシュ関数は、セキュリティのあらゆる面で広く使用されている。例えば、デジタル署名やデータの整合性チェックなどである。だが、その役割は他の暗号アルゴリズムとはやや異なる。暗号化ハッシュ関数は電子ファイル、メッセージ、データのブロックを受け取り、コンテンツに関する簡潔なデジタル指紋を生成する。この指紋は、メッセージダイジェストまたはハッシュ値と呼ばれる。ハッシュ関数の暗号は、ハッシュ化を行うために構築されている。ハッシュ関数は大きな鍵と大きなブロックを扱い、効率よくブロックごとに鍵を変更することが可能で、鍵関連の攻撃に対抗するために設計され、厳しい検査がなされている。
暗号化に使用する汎用(はんよう)的な暗号は、他の目的のために設計されている傾向がある。例えば、共通鍵ブロック暗号方式のAESを使用してハッシュ値を生成することはできる。だが、その鍵とブロックのサイズが原因でAdvanced Encryption Standard(AES)は非自明で効率が悪い。
安全な暗号化ハッシュ関数には次のような重要な性質がある。
- 入力の長さに比べて出力が短い
- あらゆる入力に対して計算が高速かつ効率的
- 入力が少しでも変われば出力ビットが大きく変化
- 一方向の値(出力から入力を求めることは不可能)
- 強衝突耐性(2つの異なる入力から同じ出力が生成されない)
NISTは2012年に同研究所の「Cryptographic Hash Algorithm Competition」の優勝者としてKeccak(カチャック)を発表した。このコンテストは次世代の暗号化用セキュアハッシュアルゴリズムを選定するために開催されたもの。2007年に公募が始まり、64件のアルゴリズムが提出された。広く普及しているAESアルゴリズムも同様のプロセスを経て選定されており、このプロセスでは提出された各アルゴリズムに対して徹底的かつ透明性のある分析を行うことが保証されている。新しい標準であるFIPS(連邦情報処理標準) 202「SHA-3 Standard: Permutation-Based Hash and Extendable-Output Functions」はNISTのWebサイトからダウンロードできる。ただし、2014年の5月に一般の意見を求めて発表された草案から大きな変更はない。
NISTの発表によると、「FIPS 180-4『Secure Hash Standard』で規定されているSHA-2は一般用途においては依然として安全かつ適切だが、SHA-3はSHA-2を補完するものであり、切望された多様性を提供する」という。「MD5」とSHA-1は、かつてハッシュアルゴリズムとして広く使用されていた。だが、今では脆弱(ぜいじゃく)だと考えられており、SHA-2に取って代わられている。例えば、米Microsoftは2005年にあることを発表している。それは、開発者に対しどの機能においても「DES」「MD4」、MD5の暗号化アルゴリズムを使用することを禁止し、場合によってはSHA-1暗号化アルゴリズムの使用も禁じるというものだ。SHA-2に対する攻撃はまだ報告されていない。だが、アルゴリズムがSHA-1と似ているため、SHA-3が必要とされていた。SHA-3の設計はSHA-2と大きく異なっている。SHA-2に対する攻撃が突如実行可能になったとしても、IT業界には代替手段の用意があるということだ。
SHA-3で提供されるハッシュ関数
SHA-3ファミリーを構成するのは、Keccakアルゴリズムのインスタンスに基づいた4つの暗号化ハッシュ関数「SHA3-224」「SHA3-256」「SHA3-384」「SHA3-512」と2つの可変長出力関数「SHAKE128」「SHAKE256」だ。
可変長出力関数はハッシュ関数と異なり、出力を希望の長さまで自由に拡張できる。そのため、フルドメインハッシュ、ランダム化ハッシュ、ストリーム暗号、メッセージ認証コードの生成に理想的だ。ハードウェアへの実装では、Keccakは最終選考に残った他のどのアルゴリズムよりもずばぬけて早かった。一部のSHA-3関数については、ほとんど回路を追加することなくチップに実装できる。
SHA-3に向けた準備
現実的には、SHA-3の普及には5年かかると考えられている。多くの企業にとっては、SHA-1からSHA-2への移行の方がはるかに優先度が高い。Webサイトの管理者は新しいSHA-2証明書をリクエストして、SHA-1を使用している証明書を全て置き換えなくてはならない。SHA-1を使用している証明書は2017年の1月1日以降利用できなくなるためだ。この作業を怠れば、Windowsベースのデバイスからサイトが信頼されなくなる。また、SHA-1を使用しているコード署名証明書でタイムスタンプがないものは、2016年の1月1日以降、Windowsでは受け入れられなくなる。
SSL接続を確立する従来のシステム、ソフトウェア、ハードウェアで、ハードコーディングされた証明書を利用している場合も、全てSHA-2証明書に移行する必要がある。ゲーム機、スマートフォン、組み込み型デバイスも対象になる。また、この状況はSHA-2暗号をサポートできない場合にソフトウェアのアップデートが必要になることも意味する。
SHA-3準拠の機能をハードウェア製品またはソフトウェア製品に追加することを待望しているアーリーアダプターは、米Synopsysの「DesignWare SHA-3 Look Aside Core」や独PMSF IT Consultingの「SHA3」ライブラリを使用できる。NISTの最新版の「Keccak Code Package」はSHA-3標準に準拠しており、多数のスタンドアロン実装を提供している。
最後に、SHAの進展と暗号に関する最新のベストプラクティスに後れを取らないためには、NISTなどの標準化団体のニュースやアドバイスを必ず把握することをお勧めする。
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