「iOS、Androidで使えるか」など6種の評価基準も紹介
「メール暗号化ソフト」の最強はどれだ? お勧め5種を徹底比較
メールの本文や添付ファイルを暗号化する「メール暗号化ソフトウェア」が進化している。導入のしやすさや安全性に配慮したお勧め製品5種を、6つの視点で評価した。
ネットワークとシステムセキュリティを専門とするカレン・スカーフォン氏が、市販の「メール暗号化ソフトウェア」の中からお勧めのものを紹介する。また、各企業に適した製品を特定するための指針も提供する。
メール暗号化ソフトウェアは名前が示すように、メールのメッセージと添付ファイルを暗号化して、送信者から受信者の手元に渡るまで不正開示を防いだり、コンテンツを保護したりするためのものだ。
安全かつ導入が容易になった“第2世代”のメール暗号化ソフト
メール暗号化ソフトウェアの中には、内容や添付ファイルの種類などの属性に基づいてメッセージを自動で暗号化できたり、手動で暗号化できるものもある。後者の場合、ユーザーは保護するメールメッセージごとに暗号化のオプションを選択する。
メール暗号化ソフトウェアは誕生から久しく、企業ではさまざまなユースケースが見られる。
第1世代のメール暗号化ソフトウェアはPKI(公開鍵基盤)に基づいており、セットアップと管理に莫大なコストが掛かる。またPKIベースのメール暗号化ソフトウェアは、使い勝手についても問題を抱えていた。というのも、メールを送信するために、手動で鍵をやりとりする必要があるからだ。これは特に、受信者が社外の人である場合に問題となる。鍵を交換しなければならないことで幾つかの問題が発生する。ユーザーがお互いに間違った鍵を送信したり、受信者の手元に鍵がないなどの問題が発生していた。そのため、鍵を生成する方法を学ぶまでメールを受信することができなかった。
第2世代の製品は、第1世代の製品より広く普及しており、PKIベースではない。第2世代の製品は鍵を動的に生成し、(ほぼ)全ての鍵を水面下で管理する。本稿では、主に第2世代の製品を紹介する。
評価対象として選んだ第2世代の製品は、以下の5種だ。
- 米Cryptzone「Secured eMail」
- 米DataMotion「SecureMail Desktop」「SecureMail Gateway」
- 米ProofPoint「Email Encryption」
- トレンドマイクロ「Trend Micro Email Encryption」
- 米Voltage Security「Voltage SecureMail(Enterprise Edition)」
それから、第1世代の製品の中からは米Symantecの「Symantec Desktop Email Encryption」を評価した。
企業に最適なメール暗号化製品を選定するのは、少し気後れする作業だ。特にベンダーが「IDベースの暗号化」などという意味不明の表現を使い始めてからは、そのように感じる。本稿では、企業が製品の評価に着手できるよう、これらの製品がメール暗号化ソフトウェアの評価における基本的な条件をどう満たしているかを説明する。
メール暗号化ソフトを選定する6種の評価基準
メールの暗号化ソリューションベンダーは、以下6種の評価基準について十分な回答を用意しているのが望ましい。もしこれらの基本的な評価基準に対する回答をベンダーが提供できないなら、情報がもっと自由に手に入る他の製品を評価することをお勧めする。
評価基準1:社内外のユーザーのサポート
メールは、送信者から受信者の手元に届くまでに、送信者のメールクライアントから送信者のメールサーバ、送信者のメールサーバから受信者のメールサーバ、受信者のメールサーバから受信者のメールクライアントといった経路をたどる。通常、メッセージを社内の受信者に送信するときと、社外の受信者に送信するときで、メッセージの暗号化に使うメカニズムは異なる。前者の場合は外部のメールサーバを使用する必要があるが、後者の場合は社内のメールサーバを使用するからだ。
第2世代のメール暗号化ソフトウェアは、社内外両方のユーザーについてサポートを提供している。ただし、このサポートの特性とレベルは製品によって大きく異なる。例えば、CryptzoneのSecured eMailは手動の暗号化機能しか提供しておらず、自動暗号化の機能はない。手動の暗号化では、送信者が明示的に暗号化を要求する必要がある。一方、自動暗号化では、企業のポリシーに基づき、ゲートウェイによって自動的に暗号化を適用する。Trend Micro Email EncryptionとVoltage SecureMail(Enterprise Edition)は、どちらも社内外のユーザーに対して手動の暗号化と自動暗号化の機能を提供している。
メール暗号化ソフトウェアを評価する前に決めておくべき重要なことは、社内外のユーザーに対する自動暗号化と手動暗号化の必要性だ。双方の機能を提供する製品は、大いに役立つ場合もあれば、機能が多すぎて使いこなせない場合もある。現在のニーズと将来のニーズの両方を検討してほしい。また、メール暗号化ソフトウェアが、他のエンタープライズシステムの代わりを果たす可能性についても熟慮すべきだ。例えば、セキュリティが確保された自動ファイル転送サービスなどの役割を置き換える可能性もあるのだ。
評価基準2:既存メールインフラとの連係
メール暗号化ソフトウェアが、クライアントとサーバの両方を含む、既存のメールインフラと連係できるかどうかも重要な検討事項だ。一般的にいえば、メールサーバとの互換性が問題になるのは、第1世代の製品だけである。例えば、Symantec Desktop Email Encryptionは、米Microsoftの「Microsoft Exchange Server」と米IBM「IBM Lotus Domino」しかサポートしていない。第2世代の製品は、アプライアンスやクラウドベースのサービスとして機能するために、企業のメールサーバから独立している。例外はCryptzoneのSecured eMailであり、これはクライアントベースの製品である。
メール暗号化ソフトウェアを評価する際、メールクライアントのサポート状況を評価するのは容易ではない。というのも、多くの場合は、単にメール暗号化ソフトウェアそのものの評価には関係ないからだ。サーバ層でのみ自動暗号化を実行し、クライアント側で手動暗号化をしないのであれば、メールクライアントのサポートは問題にならない。ただし、クライアント側で暗号化する必要がある場合は、どのメールクライアントをサポートしているかを考慮することは非常に重要になる。
上述した全てのメール暗号化ソフトウェアは、Microsoftのメールクライアント「Microsoft Outlook」をサポートしている。Trend Micro Email EncryptionとVoltage SecureMail(Enterprise Edition)に至っては、Microsoft Outlookしかサポートしていない。DataMotionのSecureMail Desktopは、Microsoft OutlookとIBMの「IBM Notes(旧: Lotus Notes)」をサポートしている。
サポートしているクライアントの種類が最も多いのは、CryptzoneのSecured eMailだ。具体的には、Microsoft Outlook、IBM Notes、米Mozillaの「Mozilla Thunderbird」、米Appleの「メール」だ(注:本稿では、デスクトップ/ノートPC用のメールクライアントに限定して取り上げている。そのため、米Googleの「Google Apps」やMicrosoftの「Office 365」といったクラウドサービスについては対象外とした)。
新しいメールクライアントへの移行を必要とするメール暗号化ソフトウェアを選ぶ場合は、用心した方がよい。こうした製品を選ぶと、確実に不都合とフラストレーションが生じるからだ。
評価基準3:暗号の強度
現在、暗号化のベストプラクティスだと見なされている暗号アルゴリズムは「AES」だ。AESでは128ビット以上の鍵を使用する。ただし、多くのベンダーの製品は256ビットの鍵へ移行して、暗号化の強度を高めている。暗号化は鍵が長くなるほど、時間が経過した場合に、特定IDに対して複数のパスワードを試行する「ブルートフォース攻撃」(総当たり攻撃)に対する耐性が高くなる。
本稿で評価した第2世代の全メール暗号化ソフトウェアは、AESを利用可能にしている。またDataMotionの製品では、AESと「3DES」(トリプルDES)双方の暗号アルゴリズムをサポートする。AESは3DESより強力で、3DESのサポートを含むのは下位互換性のためだ。そのため、DataMotion製品は3DESではなくAESを使うように構成することをお勧めする。CryptzoneのSecured eMail、ProofPointのEmail Encryption、Trend Micro Email Encryptionは、256ビットのAES鍵を使用していると公言している。
その他のベンダーは、鍵の長さを明確に述べていない。だがこの情報は公開すべきである。鍵の長さに関する情報を公開していなければ、情報を公開していないベンダーの製品と情報を公開しているベンダーの製品を顧客が適切に比較できない恐れがあるからだ。短期的には128ビットの鍵で問題ないかもしれないが、現時点では256ビットの鍵の使用が望ましく、将来的には256ビットの鍵は必須になるだろう。
第1世代の製品であるSymantec Desktop Email Encryptionは、セキュリティプロトコルに「OpenPGP」「S/MIME」を使用している。これらのセキュリティプロトコルは、評判の高い国際的な標準をベースにしている。ただし、安全性はともかく、第2世代の製品と比較すると使いやすさに問題がある。
評価基準4:ファイルのセキュリティ
メールセキュリティ製品にとって、メールの添付ファイルを暗号化できることは何よりも重要だ。添付ファイルを暗号化できないことは、製品を評価する上で致命的な問題になる。本稿で評価した全てのメール暗号化ソフトウェアは、添付ファイルの暗号化が可能だ。
第2世代のメール暗号化ソフトウェアは、添付ファイルの暗号化以外に追加のファイルセキュリティオプションを用意する。1つは、メールシステムが一般的にサポートするサイズよりも大きい添付ファイルのサポートだ。これは、受信者が添付ファイル自体を受け取るのではなく、Webベースのインタフェースへのリンクを受け取って、添付ファイルを取得するようにして実現している。
一部のメール暗号化ソフトウェアは、大きなファイルの転送をネイティブにサポートしている。DataMotionのSecureMail Gatewayもこうした製品の1つで、100Mバイトのファイル転送が可能だ。またCryptzoneのSecured eMailは、ネイティブで200Mバイトのファイルを転送できる。
DataMotionの製品とVoltage SecureMail(Enterprise Edition)はどちらも、さらに大きなファイルの転送が可能なアドオンを提供する。特に社外の受信者宛てに大きなファイルを安全に転送する必要がある場合、メール暗号化ソフトウェアの活用は一考に価するだろう。
第2世代のメール暗号化ソフトウェアが提供するファイルセキュリティオプションがもう1つある。それは、添付ファイルをダウンロードして、メールメッセージの一部でなくなった後でも暗号化を維持する機能だ。この機能を標準提供する製品はない。ただし、CryptzoneのSecured eMail、DataMotionのSecureMail Gateway、Voltage SecureMail(Enterprise Edition)は、その機能を備えたアドオンを販売している。ファイルの暗号化を維持する必要がある場合は、この機能も検討に値するだろう。
評価基準5:モバイルデバイスのサポート
現在、多くの企業がスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を活用している。手動でメールを暗号化しているユーザーは、モバイル端末でも手動でメールを暗号化できることが重要だ。
幸い、取り上げた全ての第2世代メール暗号化ソフトウェアは、どのモバイル端末のWebブラウザからでもアクセスできるWebベースのインタフェースを備える。また、Appleの「iOS」、Googleの「Android」、カナダBlackberryの「Blackberry」など一般的なモバイルOS向けアプリケーションを提供しているものもある。製品を評価するときは、このようなモバイルインタフェースをテストして、インタフェースが問題なく機能し、モバイル環境でも十分な機能を発揮するかどうかを確認してほしい。
評価基準6:ポリシーとIDベースの暗号化
ポリシーベースの暗号化では、ユーザー企業のポリシーに基づいてメールの暗号化に関する判断を自動的に決定する。例えば、クレジットカード番号を含む全てのメールを暗号化したり、人間が送信した全てのメールを暗号化するなどだ。第2世代のメール暗号化ソフトウェアは一般的に、ポリシーベースの暗号化が利用可能だ。
IDベースの暗号化では、受信者の特性に基づいて鍵を自動的に生成する。一般的に特性として使用するのは、受信者のメールアドレスだ。幾つかのメール暗号化ソフトウェアは、IDベースの暗号化に関する国際標準をサポートしている。特にTrend Micro Email EncryptionとVoltage SecureMail(Enterprise Edition)では、その傾向が強い。他の製品では、水面下で動的に鍵を生成して管理していること以外、鍵の処理については言及していない。
正直なところ、このレベルの情報は評価の段階で分析するには細かすぎる。評価対象の製品でIDベースの暗号化が正式にサポートされていなくても、交渉を難航させるものだと見なすべきではない。
むしろ関心を向けるべきは、受信者がメールの暗号化を解除するために行うべき作業だ。登録が必要なのか、パスワードを提示する必要があるのか、他の資格情報を提示する必要があるのか、ということである。Trend Micro Email EncryptionなどのIDベースの暗号化製品では一般的に、受信者に秘密鍵を渡すことが必要になる。一方、多くの第2世代のメール暗号化ソフトウェアは、受信者を認証するオプションを用意する。受信者に送ったメールを傍受した第三者が、メールに記載のリンクを使用して、暗号化されたリソースにアクセスすることを防ぐためだ。
将来の環境も踏まえた製品選定を
ネットワーク経由で伝送中のメールメッセージと添付ファイルを保護できる第2世代のメール暗号化ソフトウェアには、幅広い種類がある。これらの製品は、全ての鍵をバックグラウンドで管理する。機密データを強力に暗号化する使い勝手のよいメールセキュリティ製品であり、送信者が受信者へ送信する機密データを傍受から保護できる。
ただし、特定の環境にどれだけスムーズに導入できるかについては、製品によって大きな違いがある。例えば、手動の暗号化が必要な場合に、メールクライアントによってこうした機能の利用が可能なものと、そうでないものが出てくる。
本稿で紹介した第2世代のメール暗号化ソフトウェアは、どれも企業で導入するものとしてはお勧めだ。特にTrend Micro Email EncryptionとVoltage SecureMail(Enterprise Edition)は強力で柔軟性が高い。また、本稿で紹介した評価基準は、各企業の環境で必要な製品を選定する基礎となるだろう。
メール暗号化ソフトウェアは、手動でファイル転送を保護するといった既存のワークロードに取って代わることもできる。企業は、メール暗号化ソフトウェアが自社の環境にどのようなメリットをもたらすのかを検討すべきだろう。現在の環境だけでなく、将来の環境についても考慮することが肝要だ。
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