実トラフィックが語る「セキュリティ脅威の真実」【第1回】
「OneDrive」やメールも危険? 攻撃者が狙う情報共有系アプリ5種
今、企業を取り巻いているセキュリティ脅威とは何か。それを明らかにするのは、企業の実トラフィックを見るのが近道だ。実トラフィックを基にした調査結果から、脅威の現状を明らかにする。
次世代ファイアウォールのアプリケーション識別と脅威識別の機能により、世の中で利用されているアプリケーションと脅威の傾向を明らかにする――。こうした目的の下、米Palo Alto Networksが2008年からまとめているのが、世界中の企業におけるネットワーク上で利用されるアプリケーションと脅威をまとめた年次リポート「アプリケーションの使用および脅威分析レポート(AUTR: The Application Usage and Threat Report)」です。
このリポートは、世界中の企業ネットワークにPalo Alto Networksの次世代ファイアウォールを接続して収集したデータを基にしており、単なる推測や仮説ではなく、現実のトラフィックを分析した情報です。2008年当初は世界中で60社、合計60Tバイト程度の通信データを分析しました。最新の2014年5月版(調査対象期間は2013年3月から2014年3月)では、全世界5500社、合計51Pバイトと、分析対象は6年前の2008年版の850倍の規模に及びます。日本だけでも404社、合計800Tバイトを調査しており、年々サンプル数も増加して調査の信頼性も増しています。
地域によって企業で使用されるアプリケーションや確認される脅威は若干異なるので、リポートは北米、ヨーロッパ、アジア太平洋、日本の4つの地域に分けて考察しています。今回は日本における調査結果を基に、企業のセキュリティ対策と、今まさに迫っている脅威の現状を整理します。
連載:実トラフィックが語る「セキュリティ脅威の真実」
攻撃者の格好の標的、「情報共有系アプリ」の使用状況
まず、利用されるアプリケーションの中でもグレーゾーンになりやすい情報共有系のアプリケーションから結果を見てみましょう。このカテゴリは、メール、インスタントメッセージング(IM)、ソーシャルメディア、ファイル共有、写真動画アプリケーションを含みます。
日本の企業での利用が確認された、主な情報共有系アプリケーションは次の通りです(表)。
| 利用が確認された種類 | 1企業当たりの平均利用種類 | |
|---|---|---|
| ファイル共有 | 124種(内、Webブラウザベースが60種、クライアントサーバ型が38種、P2P型が26種) | 平均17種 |
| 写真動画 | 100種 | 平均23種 |
| ソーシャルメディア | 66種(SSL利用が34種、SSL非利用が32種) | 平均20種 |
| IM | 66種(SSL利用が26種、SSL非利用が40種) | 平均12種 |
| メール | 48種(内、Webブラウザベースが37種、SSL非利用が27種) | 平均11種 |
利用が確認されたアプリケーション数の割合で見てみると、写真動画アプリケーションはグローバルでは全アプリケーションに対して6.4%、日本では8.1% でした。メールアプリケーションはグローバルが3.2%に対して日本では3.9% であり、これら2つのカテゴリについては日本において比較的多様なものが使われていることが分かります(図1)。
ファイル共有アプリケーションは、国内では1企業当たり平均17種の利用が確認されています。FTPを使うアプリケーションに加え、Webブラウザベースのオンラインストレージ同期サービスとして比較的有名な「Dropbox」「Box」の使用を許可する会社は多く存在するかと思います。しかしそれら以外に、企業で10種以上ものファイル共有アプリケーションを使う必要が本当にあるのでしょうか。実態としては、取引先ごとに利用できるアプリケーションが異なったりして、エンドユーザーが多くのアプリケーションを管理者の知らないところで使用してしまっているのだと考えられます。そのことが、結果的に脅威侵入リスクを広げているとも取れます。
管理者の知らないところでエンドユーザーが情報共有系アプリケーションを使用したために、問題が起きることも珍しくありません。その最たる例が、2013年に複数明るみに出た、官公庁における「Googleグループ」使用による情報漏えいです。動画やメールなど他のカテゴリについても、企業内でそれほど多くのアプリケーションを使う必要があるのだろうかと、同様の疑問が生じます。同時に、管理者が把握していないアプリケーションの利用による情報漏えいリスクの心配もあります。SSLを利用しないアプリケーションも多数使われていることを考えると、盗聴リスクに備える必要もあるといえます。
「メールで大容量ファイル送付」が国内企業の癖? 情報共有系アプリの使用帯域
情報共有系アプリケーションの使用帯域について見てみましょう。写真・動画アプリケーションは、グローバルではアプリケーション全体のトラフィックの15%、国内では10%を占めています(図2)。写真や動画は、文書と比べるとファイルサイズが大きいので、消費帯域の割合が大きくなる傾向は日本だけに限らず、世界のどの地域でも同様の結果です。
企業のインターネット回線容量は限られており、業務と直接関係しない写真や動画サイトの閲覧トラフィックによって業務アプリの通信が阻害されることは避けるべきですし、そうならないよう監視することも重要です。ある企業では、昼休みの時間帯に動画共有サイト「YouTube」を閲覧する従業員が多く、業務アプリに影響が出たために次世代ファイアウォールを活用し、昼休みの時間帯はYouTubeに対して帯域制限を掛け、業務アプリの通信が確実に流れるようにしています。
使用帯域で特筆すべき点は、メールのトラフィックがアプリ全体に占める割合が、グローバルでの2%に対して日本では5%と2倍以上の違いがあったことです。この背景としては、日本は他の国よりも早くブロードバンド化が進んだこともあり、ファイル共有を使わずとも、大きなサイズのファイルを直接メールに添付して送信することが多いためと考えます。
多数の参加者が入っているメーリングリスト宛てに、何も気にせずに10Mバイトもの容量があるファイルを送るユーザーも少なくないでしょう。機密情報も含まれるであろうファイルを、それを見る必要のない人にまでメールで送ってしまうと、不必要なファイルのコピーがどんどん増え、漏えいのリスクも高まります。ファイル共有に使用するアプリケーションや利用するユーザーに関するポリシーを明確にすることは、非常に重要です。
狙われる情報共有系アプリとは
続いて、情報共有系アプリケーションを攻撃経路とする脅威について詳しく見てみましょう。情報共有系アプリケーションを経路とする脅威は、グローバルでは脅威全体の32%を占めています。一方、国内では脅威全体の17%であり、これは地域別では一番低い割合となっています。国内の内訳を詳しく見てみると、コード実行が約半分の8ポイントを占め比較的大きいですが、これはWebブラウザやプラグインなどの脆弱性を狙うため、時期や地域を問わずよく見られます。コード実行に限らず、あらゆるタイプのスパイウェアが情報共有系アプリケーションで検出されています(図3)。
情報共有系アプリケーションのうち、国内で発見された98%以上の脅威(エクスプロイトとマルウェアの合計)は、メールプロトコルの「POP3」「SMTP」、ファイル共有プロトコルの「WebDAV」、FTPを使うアプリケーションに加え、Microsoftのオンラインファイル同期サービス「OneDrive(旧SkyDrive)」を加えた5種のアプリケーションを攻撃経路としていました。
企業における情報共有系アプリとの付き合い方
情報共有系アプリケーションはさまざまな種類が存在しますが、企業として明確にルールを作ってアプリケーションの利用を限定している組織はまだ少ないのが現状です。エンドユーザーが自由にアプリケーションを利用することは、不注意および意図的な機密情報漏えいや著作権侵害の原因となったり、標的型攻撃の侵入/拡散経路として利用されるリスクを高めることになります。さらに、不必要な帯域を浪費して重要なビジネスアプリケーションの通信を阻害する要因にもなり得ます。組織としてのオフィシャルルールを明確化し、次世代ファイアウォールなどのセキュリティ製品が備えるアプリケーション識別および制御を取り入れることが重要です。
三輪賢一(みわ けんいち) パロアルトネットワークス合同会社
外資系ネットワークおよびセキュリティ機器ベンダーのプリセールスSEを15年以上経験。現在は次世代ファイアウォールおよびエンタープライズセキュリティを提供するパロアルトネットワークスでSEマネージャーとして勤務。主な著書に『プロのための図解ネットワーク機器入門(技術評論社)』がある。
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実トラフィックが語る「セキュリティ脅威の真実」
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