CSAJ「テレワークとクラウド」セミナーリポート
“在宅勤務あるある”の課題を解決、中堅・中小企業が本気でテレワークを導入するには?(2/2 ページ)
テレワークの課題をいかに解決するか――意識、セキュリティ、コスト
企業に明確なメリットがあり、かつ関連市場も盛り上がりを見せるテレワーク。だが普及状況は芳しくない。総務省が2015年7月に発表した調査結果「平成26年度通信利用動向調査」(総務省)によると、制度としてテレワークを導入している企業は11.5%にとどまる。テレワーク導入は、現時点では大手企業が先陣を切っている形で、中堅・中小企業の導入率は低いのが現状だ。
テレワーク導入に踏み切った企業も悩みは尽きない。「『導入しても企業にメリットが出ない』という声はいまだに聞こえてくる」と田澤氏は言う。その多くは意識、心理面での不安だ。
例えば管理職には「部下がちゃんと仕事をしているかどうか分からないので不安」「部下に指示がしにくく、自分の仕事が増えてしまう」という悩みがあるという。テレワークをしている従業員の同僚からは「子育て中の人だけがテレワークを利用している、という不公平感がある」との声が漏れる。
一方でテレワークによる在宅勤務者は、「肩身が狭く、サボっていると思われたくないために仕事をし過ぎてしまう」「孤独感がある」「家で仕事をしていると遊んでいるように見られ、家族に理解してもらえない」といったプレッシャーを感じている。中には、「在宅勤務をしたら『出世を諦めたのか』と言われた」人もいるという。また机や椅子、クライアントPC、プリンタなどの設備、同僚・上司とのコミュニケーションの取りやすさなどを比較して「家よりも会社の方が仕事をしやすい」と感じる人もいるようだ。
テレワークの課題は「ほとんどが解決可能」
日本テレワーク協会では2000年度から、テレワークを活用した、またはテレワークの普及に貢献した企業や団体を表彰する「テレワーク推進賞」を毎年実施している。数々の受賞企業の成功事例を目にしてきた篠崎氏は「テレワーク導入時の課題・疑問は、ほとんどが解決可能だ」と語る。
テレワーク導入の費用・維持管理コストについては、「今は安価かつセキュリティを確保でき、リモートアクセス可能なシステムが多数提供されている」と篠崎氏は話す。国や自治体のテレワーク助成金を利用することで初期投資の軽減も可能になる他、中には無償のテレワーク支援ソフトウェアもある。セキュリティについても、リモートデスクトップなど手元にデータを残さないシステムを利用すれば、情報漏えい対策となる。総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」を参照し、各企業の事情に合わせた対策を取ることが望ましい。
2015年度に総務省は「テレワークの普及促進に向けた調査研究」を開始した。日本テレワーク協会がこの活動を受託し、テレワーク導入を検討中の企業や自治体の参加を募集している。調査研究活動の一環として、テレワークの専門家を無料で派遣して有用性や方法を訪問説明するサービスと、専門コンサルタントがテレワーク導入のコンサルティングからトライアル、正式導入までを無料で実施するサービスの2つを用意する。厚生労働省管轄の「テレワーク相談センター」でも同様の導入相談、支援事業を実施している。
「リモートアクセス」と「遠隔会議システム」がテレワークの鍵
テレワークの導入の3本柱は「労務管理」「情報通信システム」「執務環境の整備」だ。導入に当たっては人事部門、情報システム部門、総務部門、導入対象部門のメンバーで構成するプロジェクトチームで推進することが重要だと、篠崎氏は説く。試験導入の過程でプロジェクトチームは、
- 導入範囲、携帯など基本戦略の明確化
- テレワークに関する社内ルール作り
- 情報通信システムの活用によるテレワーク環境の向上
- テレワーク導入に当たっての教育研究
を推進し、課題の洗い出しと効果測定を行い、その後に本格導入するのが望ましい。
篠崎氏は、テレワーク導入を成功させる要素に次の4点を挙げる。これらの要素の実現は、テレワークへの心理的な不安を解消することにも大きく貢献するという。
- 経営トップの強力な支援を得る
- ボトムアップで推進しても、トップの支持がなければ制度は持続しない。トップの指示に基づいて、人事部門、情報システム部門、総務部門、現場部門で構成するタスクチームによるサポート体制の構築は必要
- 対象者を拡大する
- 最初は「育児・介護中の方」などに対象を限定してもよいが、一般従業員にも対象を拡大することが、不公平感の解消につながる。また、一般従業員にも制度を拡大しないと、育児期や介護の必要な家族を抱える従業員もテレワークを実施しづらい
- 中間管理職にも体験してもらう
- 部下が目の前にいない、ということに対する中間管理職の抵抗は大きい。そのため、中間管理職自らがテレワークを実践することで、テレワークへの理解が得やすくなる
- 仕事のやり方を変える
- どこにいても本拠地のオフィスと同様に働けるように仕事のやり方を根本的に変える。また、従業員の誰でもテレワークを利用できるような仕事の仕組みに変える。具体的にはペーパーレス化、決済の電子化などが必要になる
テレワークを実現するための必要最低限の情報通信システムは「リモートアクセス」と「遠隔会議システム」だ。
リモートアクセスには主に3つの方式がある。VDI(仮想デスクトップインフラ)、クラウドアプリケーション、リモートデスクトップだ。VDIはクライアント端末にデータを保存しない仕組みで安全性が高いが、導入の手間とコストから大規模企業向けといえる。クラウドアプリケーションは、中小規模の企業向けに低コストなサービスも増えている。リモートデスクトップは、既存のシステムをそのまま利用できるというメリットがある。
遠隔会議システムにはP2P型のビデオ・電話会議、SaaS形式のWeb会議システムなどがある。USBキー1つでシンクライアント環境を構築可能な、簡便で安価なシステムも充実している。セキュリティを確保しながら、利用規模とコストとの兼ね合いで導入システムを選びたい。
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