ビジネスへの影響を分析
iPhoneから始まったモバイルワーク革命を生き抜くための、8つのヒント
iPhone登場から大きく変わり始めたモバイルワーク。従業員の働き方をはじめ、ビジネス自体に変化を及ぼしているモバイル革命を理解するための、8つのヒントをお伝えする。
米Appleが「iPhone」を市場に投入したのは約7年前のことだ。当時、iPhoneの誕生が最終的に消費者とビジネスにどのような影響を与えるか誰が予想できただろうか(参考:5年前にiPhoneの失敗を予想した4人)。だが、スティーブ・ジョブズ氏は、この影響を示唆していた。同氏はiPhoneが初めて公開された2007年6月29日に大胆にも次のように宣言している。
「iPod、電話、ネット通信機器。これらは独立した3つの機器ではなく、1つのデバイスです。名前はiPhone。本日Appleは電話を再発明する。これがiPhoneです」
本稿の目的は、Appleや同社のテクノロジーの価値を褒めたたえることではない。これらを賞さんするかどうかは、テクノロジーに関する宗教的な信仰によって異なるだろう。しかし、ノートPC、タブレットおよびスマートフォンの登場は仕事のやり方と遊び方に転機をもたらしたといえる。これらのテクノロジーは、「モバイルワークフォース」と一般的に呼ばれる今日の現象をもたらした。その真偽を検証してみたい。
余談になるが、少しモバイルワーカーに関する話にお付き合い願いたい。筆者の過去のコラムを読んだことがある方はご存じだろうが、現在と未来の状態をより適切に理解するために、歴史的な視点を取り入れる手法を好んで使用している。最終的な目的は、ITコミュニティーが適切な問いかけを行い、有益なビジネス価値を実現する適切なテクノロジーの活用を支援することだ。
恐らく最初のモバイルワーカーだと思われる「peddler(行商)」という言葉について考えてみたい。この言葉は、1225年に英語の語彙に加わり、徒歩で旅をする小規模貿易業者を指すラテン語、pedisから派生したとされている。peddlerの初期の類義語には、canvasser(遊説者)、cheapjack(安価な品を売る行商人)、monger(商人)、higler(外交販売員)、tinker(行商のよろず屋)、gypsy(放浪人)、solicitor(勧誘員)といった言葉がある。これらの言葉は、地方から地方へと旅をして小さな町や村の住民に商品を売り歩く人を表すために使用されていた。このような産業革命以前のモバイルワーカーは、一般的に職人工芸品を販売する個人代理店として行動していたことを補足しておく。また、不正な活動や軽犯罪活動と関連していることが少なからずあった。
「巡回販売員」は、産業革命時代のモバイルワーカーだといえる。1700年代後半に米国で人気の職種として誕生した。その後、19世紀と20世紀を通じ、National Cash Register、Eastman Kodak、Coca-Cola、General Electric、Carnegie Steel、Burroughsのような大手製造企業の進化/発展とぴったり足並みをそろえて活躍した。これらの企業は、大量生産という新興分野の方法論/技法に対応した最新の販売と販売管理の方法論/技法を開発した。これは当時最先端のビジネスプロセスモデルだった(出典:『Birth of a Salesman: The Transformation of Selling in America』(Harvard University Press、2004年)
インターネット、ブロードバンド通信およびモバイルデバイスは普遍的な存在になっている。ソーシャルメディア、クラウド、ビッグデータおよびリアルタイム分析の後押しを受けて、産業化時代は情報化時代へと変化した。ポスト情報化時代に突入したという人もいるだろう。どんな呼称を使用するかはさておき、テクノロジーにとって、この25年間が激動の時代であったことは間違いない。企業はテクノロジーを使用して、さまざまなことを実現できるようになった。労働者(ワークフォース)は、30歳以上の誰もが幼少期には知り得なかった方法でテクノロジーを使用している。そして、先進的な企業はデジタルビジネスへと進化を遂げた。
デジタルビジネスの世界では、行商や巡回販売員だけがモバイルワーカーではない。モバイルワーカーには企業のために働いている人やグループが含まれる。多くの場合、企業で働いている全従業員がモバイルワーカーになる。広告会社やマーケティング会社がターゲットにしているのは人口区分だけではない。ある特定の時点で特定の場所にいる個人もターゲットにしている。また、経理部は特定のフロアに配置する必要はない。経理部の職員は、ある特定の時間に各自のニーズに合った任意の場所から仕事をすることができる。
デジタルビジネスの強化:8つのガイドライン
このような急激な変遷によって、CIOにはビジネスとテクノロジーに関する重大な課題が突き付けられている。当然のことながらビジネスチャンスについても同様だ。まだ検討を始めていない場合は、次の事項について検討を始めることを推奨する。
1. デジタルビジネスと、デジタルビジネスを支えるモバイルワーカーは、ビジネスプロセスの中核について再考する必要がある
従来のプロセスの多くは、効率的にトランザクションを実行する機能を実装することを念頭に設計されている。一般的にモバイルアプリの設計と実装には2つの目的がある。1つは顧客やユーザーのエクスペリエンスを向上すること。もう1つは異なる情報とテクノロジーのアーキテクチャが必要な関係を構築することだ。
2. モバイルアプリを適切に設計して実装するには、さまざまな要素が必要になる
単純に別のフロントエンドデバイスを導入するだけでは済まない。モバイルデバイスを通じて提供される情報は各種チャネルで利用できなければならない。例えば、Web、支店/店舗、コールセンター、CRU(音声応答装置)などだ。また、このようなチャネルで処理される情報はモバイルユーザーが利用できる必要がある。それも多くの場合はリアルタイムでだ。
3. 大半のアプリのアーキテクチャとサポートインフラの設計と実装は、モバイルアプリが普遍的なものになる前に行われている
一般的に、新しいタイプのユーザーやデータ、新しいネットワークとデータ管理の要件に対応するには、ユーザーID、認証、データセキュリティおよび機能やデータに対する権限を確認して強化する必要がある。
4. モバイルデバイスの紛失は多い
モバイルデバイスに保存されているプログラム、データおよび権限は、不正なアクセスから保護しなければならない。
5. 企業またはユーザーが所有するデバイス、アプリおよびデータのプロビジョニングとプロビジョニング解除を受け入れる必要がある
企業が所有する情報と個人が所有する情報の両方が同じアプリで処理される場合、特に大きな課題となる。このようなアプリには、電子メールアカウント、予定表、連絡先、ブックマーク、ファイル共有サイトなどがあるだろう。
6. モバイルデバイスとモバイルアプリは「いつでも、どこでも、何でも」という約束の下に提供される
このような広いアクセシビリティと高可用性により、多くの企業はある課題に直面する。それは社内外のネットワークで処理、保存、転送しなければならないトランザクションとデータの量が1桁増える可能性があることだ。そのため、処理、ストレージおよび通信の機能と関連費用の増加については入念な計画を立てる必要がある。
7. モバイルアプリの設計、コーディング、テスト、導入に必要なIT担当者とユーザーのスキル/能力は、従来のスキルとは異なる
従来型のメインフレーム、クライアントサーバまたはWebベース開発作業を支援するのに必要なスキル/能力とは異なるため、モバイルアプリ開発に適切なスキルを持つ人材の雇用、教育、専門能力の開発が極めて重要になる。
8. モバイルアプリは一般的に小さなサードパーティー企業が提供している
このようなサードパーティー企業は革新的だが、典型的な企業の調達やベンダー管理のガイドラインに適合しない恐れがある。そのためガバナンスとリスク管理のポリシーについては、慎重な見直しを行う必要がある。その際に注意すべきは、社内外の運用上の要件を順守しながら、適切なリソースを賢明に使用できるようにすることだ。
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