本気で考えるテレワーク導入【第4回】
在宅勤務の導入前に再考する勤怠管理の在り方
在宅勤務の可能性を模索する企業にとって、“自宅”という職場の勤怠管理は課題の1つとなる。新たな業務スタイルを取り入れる場合の考え方や対策とは何か。
ハードルは低い? 明日からでも実施できる在宅勤務
人事・給与・勤怠の管理は、企業と従業員の関係を健全に保ち、社員と事業が共に成長・発展するための重要な基幹業務だ。最近では特に働き方の変化や法令への順守に素早く対応できるよう、より柔軟な運用システムが求められている。
2011年6月28日に都内で開催された、ニッセイコム主催の「人事労務管理IT実践セミナー」では、こうした年々複雑化する雇用形態の現状、労働基準法の改正で求められる対応など、人事労務の現状や問題、解決策が紹介された(2011年7月22日に第2回開催)。
震災を機に在宅勤務の導入を検討する企業にとって、勤怠管理システムの見直しは課題の1つだ。
在宅勤務は、目新しいワークスタイルではない。育児や介護の必要がある、または身体的・距離的に本社までの交通移動が困難であるなど、出社が難しい人材を雇用する形態として、一部の企業で導入が進んでいる。
企業にもよるが、在宅勤務は労働基準法第38条の2にある「事業場外みなし労働時間制」が適用できる。みなし労働時間は、内勤と外勤の合計時間を所定労働時間と見なす考え方だ。例えば、営業職の社員が午前中に顧客先へ直行し、そのまま外回りしてから帰社して内勤した場合、外勤と内勤の合計を所定労働時間としてカウントする。「残業代は出ないが、自由に仕事できる環境が得られるので、社員側からは比較的受け入れられやすい」と、アイリス社会保険労務士法人、社会保険労務士の花村邦哉氏は言う。
みなし労働は、企業の就業規則に条文として記載されていることがほとんどだ。「節電対策やサマータイムの導入で始業・終業時刻や所定休日などを変更する場合、就業規則の変更が必要なので、労働基準監督署に届け出なければならない。でも、在宅勤務をみなし労働で対応する場合、極端な言い方をすると届け出なしで翌日からでも実施できる」(花村氏)。
後は、VPN環境やセキュリティツールなどを検討し、導入できればすぐにでも移行できる。
企業と社員の在り方を見直す
ここで気になるのは、残業の考え方だ。みなし労働では何時間働いても、基本的には所定労働時間としてカウントされる。社員からすると、どんなに仕事をしても賃金という形での評価がなされない不満が残る。
これについて、最近は内部告発の増加も手伝い、監督署からの賃金不払いに対する是正指導が増えているという。日通システム 営業本部 東京支店課長の大村好尚氏によると、「2003年から1000社以上の企業が是正指導を受けており、企業は過去にさかのぼって時間外賃金の未払い分を支払うケースが増えている」そうだ。最近では、大手住宅メーカーがグループ会社を含め約9000人の従業員に約2年分の未払いサービス残業代32億円を支払っている。高額になるケースも少なくない。
一方の企業からすれば、目の届かないところにいる社員が本当に仕事をしているかチェックできない不安がある。労働基準法では、60時間を超える時間外労働について残業代を50%割り増しで計算するように改正された(※)。目の届く範囲であれば、残業しているかどうかを確認でき、支払いの妥当性を計ることが可能だ。在宅では確証が持てない。
(※)一定の中小企業は除外。
こうした実情もあり、「在宅勤務は、成果を中心とした人事評価制度と賃金制度を適用できる業務が妥当」と花村氏は言う。それ以外の業務形態であれば、キータッチのログの記録やログイン/ログオフ状況などを監視するなど、勤務状況を知る仕組みを技術的に解決することになる。
ただし、これは応急措置に近い対策だ。長期化が予想される節電や、震災でよりリアルさを増したBCP対策への十分な対応では、「企業と社員の在り方」という根本を見直す必要がある。
勤怠管理の視点で見る在宅勤務時の心得
- 企業は“人財”が効率的に仕事して成果を出し、事業成果の拡大や業務コスト削減を実現できるよう、さまざまな働き方を許容し、法令を順守して、環境を整える
- 社員はワークライフバランスを考慮した最適な労働環境を整えることで、安心して業務に専念できるようになる。結果的に、労働に見合った正当な評価・賃金を期待できるようになり、労働意欲が高まり、努力は企業および社会への貢献へと結実する。
こうした両者の“Win-Win”の関係とバランス、信頼関係は、企業の設立と同時に誕生した人事・給与・勤怠システム(ERPシステム)を強化し、アップデートをかけることで、醸成することができる。
ERPによる統合労務管理で土壌を一新する
ERPシステムのパッケージ/ASPサービス「GrowOne Cube」の提供やサポートを提供するシステムインテグレーターのニッセイコムは、日通システムの勤怠管理システム「勤次郎Enterprise」と連携し、統合労務管理を実現できる。
勤次郎は、多様な雇用制度・勤務形態に対応し、勤務状況をリアルタイム管理できる勤怠管理システムだ。出退勤時刻や勤務実績を締め日以外で確認でき、36協定(残業に関する協定)や連続勤務などを事前にチェックしてアラーム通知することで迅速な是正が可能となる(図1)。
リアルタイム性を導入したことで、例えば従業員のスケジュールを自動作成して、予実績をベースとした適切な人員配置ができる。またプロジェクト単位や作業単位で勤務時間を集計できるほか、例えば他店舗への応援勤務時間の適切な集計にも対応しており、生産性と労働のバランスを保ち、トータルでのコストダウンことも実現可能だ。
この他、PCや携帯電話、ICカード(PASMO他)、指静脈認証機器を使った打刻にも対応する。GPSで特定のエリアから打刻のみを受け付けることも可能で、さまざまなニーズに応えられる。
勤次郎と連携するのが、ニッセイコムの人事・給与システム「GrowOne Cube」だ。給与・賞与を999体系まで登録でき、登録できる明細項目数は無制限。同月に複数回の賞与支給や年4回以上支給など、複雑な支給方法に対応できる。システムは、オンサイト導入型、SaaS/ASP型、システム管理を含む給与計算代行型(ペイロール運用)から選択でき、導入・構築・運用サポートまでを一括受託する(図2)。
GrowOneは、企業規模・業種共に多岐にわたり導入されている。セミナーでは、ニッセイコムの松井英一氏が幾つかの活用事例を紹介した。
1つは、雇用形態の複雑化と度重なる法改正で自社開発ソフトでは対応しきれなくなり、アウトソーシングを選択した企業の事例が挙げられた。給与明細書や源泉徴収票などの作成および配送も委託したことで、同社はシステムの煩雑な運用管理に悩まされなくなったという。
また別の例では、全国各地の店舗拡充に伴う人事情報の充実と地域性を生かした人材配置を行うために、システムの一本化を図った企業が紹介された。さらに同社では店舗ごとに帳票フォーマットが異なり、それぞれの形式で出力したいというニーズがあった。これはExcelへのデータ出力機能を活用して、それぞれのフォーマットに成型する方法で対応することとなった。
「同じ会社でも、事業所によって帳票フォーマットや残業時間の丸め単位など、細かく異なることがある。特に企業合併では、別々の勤怠管理システムの計算方法を暫定的に残して処理した結果、それに引っ張られる形で人事・給与計算の処理が煩雑になるケースもある」。ニッセイコム 第一システム技術本部 システム第二部部長 松井英一氏は、変更が社員に直接影響を与えるために変えづらい点も述べた。
つまるところ、勤怠管理は企業の歴史と文化だと松井氏は言う。現在の非常に複雑な勤怠形態の背景には、企業と社員が歩み寄り、積み重ねてきた進化が存在する。「だから、人事・給与パッケージの開発やSI事業の片手間で勤怠管理システムは作れない。勤次郎との連携は重要だった」(松井氏)
連携する勤次郎は、企業文化の多様性を全て受け止め、長い時間をかけてそれぞれ標準機能として組み込んできた。「これほどの精度で複雑な雇用形態や労務管理に対応できる製品はないと自負している」(大村氏)
在宅勤務体制は、導入を検討する企業の文化に新たな進化をもたらす。そうした観点から、下支えするERPシステムを含めて再考するのも、必要なステップかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー