BYODの複雑化、ユーザー拡大が生んだ新たな鉱脈
モバイルワーク導入で成功する企業、失敗する企業の違い
スマートフォンやタブレットで多くの人が気軽に仕事ができる時代。その「どこでもオフィス化」を手助けするサービスへの関心が高まりつつある。
モビリティ。それは企業が導入、管理した一見無害に見える1台のデバイスから始まり、今や急拡大を続けるユーザーベースの所持する膨大な数のデバイス群がからむ問題となった。モビリティを取り巻く複雑な状況が、今、企業のマネージドモビリティサービス(Managed Mobility Services)への関心を高めつつある。
「マネージドモビリティサービスは、モバイルソリューションの全ライフサイクルをカバーする広範なサービスだ。ほぼ常時提供されるサービスに加え、順次必要となるサービスも提供される」と説明するのは、米調査会社Current Analysisのエンタープライズモビリティプラクティス主任、キャサリン・ウェルドン氏だ。「サービスプロバイダーはソリューションの展開および管理の両面で支援する他、ソリューションのホスティングや顧客の背後で全てをサポートするといった積極的な役割も果たす」
マネージドモビリティサービス(MMS)には、少なくともモバイルデバイス管理(MDM:Mobile Device Management)が含まれる、とウェルドン氏。コンテナ化、アプリケーション管理、セキュリティ、エンタープライズアプリストア、通信支出管理なども一般的にエンタープライズモビリティ管理(EMM:Enterprise Mobility Management)スイートに含まれるという。これらのサービスはしばしば、一連の専門的なサービス、コンサルティング、管理、そしてデバイス統合、テスト、配備に関連するサポートなどとセットで提供される。
カナダの独立系モビリティ管理コンサルタント会社Moan Enterprisesの代表、ステファニー・モーン氏は、さらにこう説明する。「多くのベンダーがクラウドベースのMDMソリューションを提供している。各社は、MDMを前面に出したMMSを提供しているが、デバイスの調達、ユーザーサポート、ローミングパッケージの申請、ユーザー間のデバイス交換などは、全く新しいレベルのサポートになる。MDMは、マネージドサービスのコンポーネントの1つになりつつある」
マネージドモビリティサービスの必要性
もし複雑そうに見えるものがあるなら、それはまさに複雑であるからに他ならない。そして、それこそがマネージドモビリティサービス(MMS)の必要性を明確にした。「モビリティの複雑さは増大する一方だ。BYOD(私物端末の業務利用)が一般化し、OSが多様化し、さまざまなデバイスが登場した。そうした変化が、外部に助けを求めざるを得ない状況を企業にもたらしている。3、4社の通信事業者と契約して、それらを全て自力で管理しようとしたら、かなり混乱することになるだろう」とCurrent Analysisのウェルドン氏。
Moan Enterprisesのモーン氏もそうした見方に同意する。「モビリティは少なからぬリソースを要求する」と同氏は語る。「モビリティには、3つのグループが関与しなければならない。まず、モバイルデバイスを管理するIT部門。テクノロジーコンポーネントの部分は、基本的にITの領域である。HR(人事)部門が関与する領域もある。主にプロビジョニングプロセスだ。もう1つは、経理部門。月末になったら、誰かが請求書を処理しなければならない。そして、こうした組織間では必ずしも常に話が通っているわけではない」と同氏。支払担当者は毎月、請求書を受け取り、矛盾があろうと関係なく支払いを進める。支払担当者はデバイスが故障中(ITの領域)であることも、従業員が退職(HRの領域)したことも関知しないからだ。
「各部署で、通信事業者の視点からモビリティを管理するのは容易ではない」とモーン氏はいう。
企業はこの問題を、マネージドサービスを利用することで解決しようとしている。調査会社Current Analysisが企業600社を対象に行った調査によると、全体の40%がモビリティを社内管理しているという。残り60%のうち半数はハイブリッドアプローチを採用し、モビリティ管理の一部をサービスプロバイダーに外部に委託し、それ以外を社内処理している。同社が2年前に実施した同様の調査では、MMSの利用を検討する企業は全体の20%から30%にすぎなかったことを考えると、サービスプロバイダーの商機は拡大しているといえる。
さらに、Current Analysisのウェルドン氏によると、そうした商機は「今後さらに拡大する」という。
マネージドモビリティサービスへの参入
前出のモーン氏によると、MMS市場への参入を目指すサービスプロバイダーにとって、どこからスタートするかを知ることは容易ではないという。同氏は以前、そうした問題を抱える小規模なマネージドサービスプロバイダーと仕事をしたことがある。その会社はMMSの可能性を認識していたが、サービスをどのように組み合わせ、どのサービスを実際に提供すべきか知るのに苦労したという。「同社の取り組みは、どのようにMMSサービスを導入すべきか学ぶための実地訓練への投資だった」と同氏。「あまりにも多くのコンポーネントがあるため、何から何まで手探り状態だった」
米Tangoeなど既存のMMSベンダーの中には、電気通信費用管理をルーツに持つところもある。Tangoeの上級副社長、ケン・リーネンマン氏によると、同社は2001年、大企業の電気通信支出の管理業務を支援する会社として創立された。モビリティが一般化するとともに、Tangoeは顧客のモバイル請求関連の業務を手始めに、次第にプロビジョニング、管理、サポート終了(EOL)対応などのサービスへと業務を拡張していった。
「業務は複雑で、それなりの投資が要求され、一夜で何かが実現するわけでもない。MDMは、モビリティ技術を積み上げたもの、あるいはモビリティソリューションの重要なパートではあるが、全体から見れば一部にすぎない」とリーネンマン氏。「われわれは創業13年の実績の上に事業を構築できた幸運なポジションにある」
MMSパズルの何らかのピースを提供した歴史を持たない企業はどうすればよいか? 「(MMS市場への)参入は以前よりはるかに簡単になっている。EMM(エンタープライズモビリティ管理)の中心を担うサードパーティーのプラットフォームプロバイダー各社も、独自に能力を増強しつつある。彼らは以前からMDMを提供してきたが、今日ではその他にもさまざまな機能を追加している」とCurrent Analysisのウェルドン氏は言う。そうしたサービスプロバイダーは、恐らく自分たちのプラットフォームの1つをホワイトレーベル(OEM)化し、MMSを提供する手段として活用してくるだろう。
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