データ分析専門家が注目する「Apache Spark」
あなたにしか見えないテレビCMも可能? ビッグデータ分析が変える広告配信
有料テレビ広告の最適化を手掛ける米BlackArrow。同社CTO(最高技術責任者)のジョー・マタレス氏は、ビッグデータ分析技術の「Apache Spark」が同社のITシステムの要だと語る。
ジョー・マタレス氏が分散データ処理フレームワーク「Apache Spark」(以下Spark)に初めて興味を持ったのは、Sparkがまだ米カリフォルニア大学バークレー校のAMPLabで開発されていたころのこと。同氏が最も気に入ったのはSparkのスケーラビリティだ。このフレームワークによって、増加の一途をたどる膨大なデータを分析やステージングのために処理できる技術が実現できると思われた。
2014年6月、マタレス氏は米BlackArrowのCTO(最高技術責任者)としてSparkを導入する機会を得た。BlackArrowは米Comcastや米Time Warner Cableのようなケーブル・有料テレビ事業者が、視聴者層に応じて異なる広告を動的に番組に挿入できるように支援している。この広告挿入は、番組が従来のテレビサービスと新しいオンラインプラットフォームのどちらで放送されていても行われる。BlackArrowはこれらの広告が有効に機能しているかどうかを分析するサービスも提供している。マタレス氏は使用経験を踏まえ、「Sparkはまだ改良の余地があるが、豊富な機能を備えるに至っており、本格的な実用期に入ろうとしている」と考えている。
「Sparkは、それを導入した組織と開発者同士の良いコミュニティーが形成されている。私がSparkを好きなのはそのためだ。もっとも、Sparkはまだ比較的若い技術だ。われわれもさまざまな問題に直面したが、対処することができた。この技術には、機能が充実しているという魅力がある。それらの機能を活用していくつもりだ」(マタレス氏)
Sparkを使った分析データ収集
BlackArrowは現在、Sparkによる処理を利用して、ケーブル事業者からローカルデータを収集している。その中には、視聴されている番組と使われている視聴プラットフォームの詳細や、視聴者の基本情報などが含まれる。BlackArrowはこれらのデータを使って、視聴者の特性から見てコマーシャルをいつ表示すべきか、どのような広告が最も効果的かを判断している。広告の放送後には、Sparkは視聴者がどの広告を見たか、どの広告をスキップしたかのデータを、分析データベース「Infobright」に蓄積する。顧客のケーブル事業者はこのデータベースにアクセスし、作成済みのリポートを見たり、データ統合・分析基盤ソフトウェア「Pentaho」のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールやデータ可視化ツールを使って、広告の効果について独自にアドホック分析を行ったりできる。
マタレス氏は他のデータ視覚化製品と比較した上で、2015年7月にPentahoを選定したという。Pentahoでは、BlackArrowの顧客にリポートを提供する方法をきめ細かくコントロールできるからだ。同社は従来、自社開発したリポーティングシステムを使っていた。だが、顧客から、アドホッククエリを行いたいという要望が数多く寄せられるようになったため、定型リポートとユーザークエリをサポートするパッケージツールが必要だと判断した。
マタレス氏は、データ処理の速度および能力に加え、SQLクエリ機能と機械学習機能を理由にSparkの採用を決めた。同氏はBlackArrowがこの2つのデータアナリティクス機能を具体的にどのように使っているかは明らかにせず、「BlackArrowがこれらの機能で行うのは独自の作業だ」と語る。だが、データのクエリと機械学習アルゴリズムの実行は、「広告の選択と配置を最適化する上で重要な役割を果たしている」とも述べている。
問題対処が必要な場面も
だが、Sparkはいいことずくめではない。例えば、マタレス氏のチームは導入以来、安定性の問題を経験しているという。BlackArrowは最初から、米ClouderaのSparkディストリビューションから「Hadoop」コンポーネントを除いたものを使用している。ある時、オープンソースのApache Sparkの最新バージョンをBlackArrowの開発環境に導入しようとしたところ、前のバージョンのSparkに組み込んでいたプロセスとのコンフリクトが発生した。マタレス氏は、この種の問題を解決するには、粘り強く取り組むことに加えて、「Sparkを導入したら、開発とメンテナンスを継続していかなければならない」という覚悟が必要だと語る。「いろいろなハードルを乗り越えていかなければならない」と同氏は注意を促す。
マタレス氏は、ビッグデータの専門家の間で以前から注目されている「Sparkのデータ処理フレームワークはHadoopに取って代わるか」という問題に関しては、この2つのシステムは、非常に異なるユースケースをサポートしているとの見方を示す。BlackArrowにとっては、データを顧客に届けることが最優先事項であるため、処理が高速で、クエリが簡単なSparkを使うことが理にかなっている。しかしマタレス氏は、Hadoopが役に立つ状況もあると考えており、その例として特に、データ量が膨大で、時間の制約が緩い場合を挙げている。
結局のところ、肝心なのは業務に最適なツールを選択することだ。「この選択の出発点は、自分たちが何をしようとしているか、どのような問題を解決しようとしているかという理解だ」(マタレス氏)
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