介護スタッフ間の円滑な情報共有を実現
地域包括ケアシステムの課題解決を目指し、愛媛県西予市が採用したクラウドとは?(2/2 ページ)
介護サービスの質向上に「kintone」を活用
西予市では現在、kintoneのユーザー数は148人で、各介護事業所に1アカウント、ケアマネジャーは1アカウントを保有している。kintoneでチーム単位でのコミュニケーションに使う機能「スペース」は12種、情報を蓄積してチームで共有するためのデータベース機能「アプリ」は23種、特定のテーマに関する投稿を集約する「スレッド」は31種ある(画面1)。
kintone導入のきっかけとなったのが、ケアマネジャーの空き状況を把握できる「ケアマネジャーの空き検索」アプリだ(画面2)。他にも西予市の介護事業所・施設の空き状況が一覧で把握できるアプリもある。これらのアプリを利用することで、市役所は市民からの問い合わせがあった場合に適時適切にケアマネジャーを紹介したり、ケアマネジャーがショートステイ先を素早く選定したりできる。また、市役所や地域包括支援センターからの一斉連絡がkintoneへの一回の入力で済むなどの効果がある。
西予市では地域リーダー、ケアマネジャー、デイサービススタッフなどの同一職種内で情報を共有するスペースを作成したり、アンケートの実施などにも活用したりしている。井上氏は「これまでシステムというと、開発から運用に至るまでに時間がかかっていた。kintoneは、機能拡張に際しても簡単に柔軟に取り入れることができる。コストパフォーマンスはいい」と語る。
kintoneは、マウス操作によるノンプログラミングでのアプリ作成が可能である点も特徴の1つだ。西予市地域包括支援センターでkintone管理者としてアプリを作成する網干 由美子氏は「当初はアプリ作成のスキルは全くなかったが、サイボウズの担当者に1つずつ教えてもらうことで理解することができた。自分で作ったものを皆さんに使ってもらえるととてもうれしかった。より多くの人に使ってもらいたい」と話す。
また、業務連絡以外にも「通行止め情報」、警察などと徘徊(はいかい)者の情報を共有する「緊急連絡」など特定の情報を取り扱うスレッドがある。西予市地域包括支援センター 主任介護支援専門員の清水眞樹氏は「通行止め情報スレッドは、ケアマネージャーやヘルパーの方に便利だととても喜ばれている。今後も必要なアプリを協力して作っていきたい」と語る。
利用者毎月額170円を徴求、コスト感に不満なし
現在、西予市のkintoneには1日当たり150~200件のアクセスがある。井上氏によると「導入に当たり、説明会を3回実施したがそれほど機運が盛り上がっていなかった」という。「『LINEのように使えます』と伝えたこともあったが、そもそもLINE自体を知らない人も多くいた。実際に使ってもらって初めてそのメリットを理解してもらった。関係者全員が使わないと意味がないため、そこに尽力した」(井上氏)
一般に介護事業所のIT投資額は決して多いとはいえない。西予市では、2014年度のモデル事業では無料とし、2015年度からはアカウントごとに月額170円で利用している。河野氏は「事前にアンケートを取り、どれくらいなら負担できるかを聞いた。意見はさまざまあったが、苦情は特になかった。もっと多く支払っても構わないという声もあった。コスト面では納得してもらっている」と説明する。
より広域的な視点での取り組みを進める予定
地域包括支援センターでは医療介護連携を視野に入れている。「包括的なケアは医師会との連携なしにはうまくいかない。現在は、双方の連絡程度は共有できるスペースがあるが、要介護者の個人情報を関係者で共有できるスペースにしたい。そのためにはセキュリティが万全ではないといけないが、課題にもなっている」(河野氏)。「半歩ずつでも進めていくことで、少しずつ着実にクリアしていきたい」(井上氏)
西予市 生活福祉部 高齢福祉課 課長 宇都宮 一雄氏は「2014年度のモデル運用に続き、2015年度の本格運用に当たり、まずは順調な取り組みだと評価している。今後の継続的、発展的な取り組みにおいては情報管理上のリスクなどの課題もあると思う」と説明する。また、「今後は障害者や子供など福祉分野においても地域づくりの視点が必要となる。クラウドシステムを活用した多職種連携の取り組みのIT活用事例が、全国の一歩先を行く高齢社会となった西予市の地域課題を解決する糸口となるのでは」との考えを示す。
西予市では、クラウドサービスを多職種連携、現場の担当者の負担軽減、市民へのサービス向上に役立てている。現在は高齢者に関わる事業での連携にとどまっているが、今後は他部署横断的に障害者や子どもの支援などを含めて、より広域的な視点での取り組みを進める予定だ。
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