「国際福祉機器展」イベントリポート【後編】
障害児の気持ちも伝えられる、身近な福祉ツール「iPad」の可能性
高齢者や障害のある人を支える介護・福祉の現場では、よりよいサービスの提供を支援するIT化が進められている。そこで重要な役割を担うようになったのが、iPadやAndroid端末などのスマートデバイスだ。
介護・福祉の現場でスマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスを導入する動きが進んでいる。前編「介護・福祉の現場を支えるWindows 8/RTデバイスの強みとは?」に続き、2013年9月18日から20日まで東京ビッグサイトで開催された「第40回国際福祉機器展2013」に出展されたAndroid端末やiOS端末、デジタルペン関連の製品/サービスを紹介する。
より身近なツールでコミュニケーションを支援する「トーキングエイド for iPad」
スマートデバイスは、会話や筆談が困難な障害のある人のコミュニケーションを補助するツールとしても利用できる。ユープラスは、iPadを利用したコミュニケーション機器「トーキングエイド for iPad」を展示。トーキングエイド for iPadは、1985年に当時のナムコ(現バンダイナムコゲームス)などが開発した会話補助装置「トーキングエイド」シリーズ(2013年3月販売終了)の後継機種となる。「テキスト入力版」「シンボル入力版」の2種類をAppStoreからダウンロードして利用できる。
テキスト版は、画面上に表示される「平仮名」「片仮名」「アルファベット」「シンボル(絵文字)」などのキーボードから文章を作成することでコミュニケーションを支援する(写真1)。入力内容は4種類の合成音声で読み上げたり、メールで送信することも可能。
シンボル版は、画面上からシンボル(絵文字アイコン)をタッチ(選択)してコミュニケーションする(写真2)。「気持ち」「友達」など10種類のカテゴリーの中から選択する。カテゴリーの追加や変更も可能。また、利用者の能力に合わせて表示するシンボルの数を増減させたり、写真や画像を追加して独自のシンボルを登録できる。利用者の設定を切り替えられ、複数の利用者で使うこともできる。
ユープラスは「iPadアプリにしたことで、より身近なツールとして利用できるようにした」とコメントしている。
サービス実施記録の入力を楽にする「ほのぼのTouchシリーズ 訪問アプリAndroid版」
通常、訪問介護や訪問看護の現場では、サービスの実施日時や種類、身体介護や生活援助などのサービスの実施記録を複写式の記録紙に記入する。その後、記録用紙に利用者のサインをもらって利用者控えとして1枚を利用者に渡し、事業所保管用としてもう1枚を持ち帰る。事業所に戻ってからは、記録書の作成のために同一の内容を転記する作業が発生していた。
携帯性に優れたスマートデバイスは、介護ヘルパーや訪問看護師などが訪問先に持参し、ケアサービスの予定実績の入力や事業所との情報共有などに役立てることが可能だ。訪問介護や看護、定期巡回随時対応サービスなどにより適しているといえる。
こうした中、NDソフトウェアは、介護保険業務支援システム「ほのぼのNEXT」と連動する「ほのぼのTouchシリーズ 訪問アプリAndroid版」(以下、ほのぼのTouch 訪問アプリ)を出展。ほのぼのTouch 訪問アプリは、専用アプリをインストールしたAndroid端末とモバイルプリンタで構成される(写真3)。2013年7月に提供を開始した。
ほのぼのTouch 訪問アプリでは「訪問看護記録書II」の内容を画面の項目をタッチして入力できる(写真4)。利用者情報やサービス算定、バイタル、身体状況、処理、申し送りなどの入力データは、30分間隔でほのぼのNEXTとデータ同期が行われる。また、Bluetooh経由でモバイルプリンタから利用者控え・事務所控えの2枚が出力される。事業所に戻ってからの転記作業が不要になり、実際に導入している施設からは「転記の回数が減ったことで、1日当たり50分の業務効率化を実現できた」という声もあるという。
ほのぼのTouch 訪問アプリによって、事業所側では外出スタッフの予定実績の管理が容易になる。スタッフが出勤時にアプリにログインすると、ほのぼのNEXTで管理されているスタッフごとの当日スケジュールが表示されて、スタッフは当日のスケジュールを把握できる(写真5)。これにより、事務所側でのスタッフごとのシフト連絡作業が不要になる。また、実績データをほのぼのNEXTに自動的に取り込むことで月末月初の請求業務が軽減され、利用者台帳、職員・事務所の情報も同期されるなど情報の一元管理が可能。ほのぼのTouchシリーズ 訪問アプリは2013年7月から提供されており、今後はiOS端末への対応を予定しているという。
タブレット端末に対応するケア記録支援ソフト「すぐろくTablet」
ワイズマンは、タブレット端末に対応するケア記録支援ソフト「すぐろくTablet」を2013年9月に発売した(写真6)。すぐろくTabletでは、介護・福祉施設の利用者の健康状態や介護状況を記録・参照でき、介護記録システム「ケア記録オプション」と連動することで介護スタッフ間での情報の共有や利用が可能になる。
「利用者」「時間」をピンポイントでタッチできる時間割入力や、個人ごとや「異なる利用者の同一項目」「複数利用者の一括記録」などの操作も可能だ。
富士通も参考出展
今回のイベントでは、富士通も介護事業者支援システム「HOPE/WINCARE-ES」のスマートデバイス対応製品を参考出展(写真7)。ほのぼのTouch 訪問アプリと同様、スタッフが専用端末とモバイルプリンタを訪問先に持参して実施内容を入力、印刷するシステムだ。
富士通によると「セキュリティ面を強化し、情報漏えいが発生しない仕組みを構築している」段階にあり、リリース時期は未定だという(2013年9月現在)。
デジタルペンで現場の事務処理を省略化する「訪問介護システム」
介護/福祉の分野でもIT製品/サービスが充実してきたが、IT化を進めるに当たり、スタッフがスマートデバイスを持つことに抵抗を感じることがある。実際、「ツール導入が決まった後、クライアントPCやスマートデバイスの操作に不慣れな介護スタッフが退職した」というケースも起きている。今回のイベントでは、そうした不慣れなスタッフでも対応できる、従来の紙への記録に近い形式のツールも出展されていた。
日立製作所は「訪問介護システム」のデジタルペン対応機器を展示。カメラが内蔵されたデジタルペンと複写用紙形式のデジタルペン専用記録ノート「でんしのーと(介護記録ノート)」で構成される(写真8、写真9)。利用者宅にでんしのーとを設置し、介護ヘルパーがデジタルペンを持参し、現場で介護サービス記録を記載する利用方法を取る。
スタッフが介護サービスを提供した後、サービス内容をデジタルペンででんしのーとに記入すると同時に、記入された内容をデジタルペンが記録する。スタッフがデジタルペンを事務所に持ち帰り、専用スタンドに置くと自動的に訪問介護システムに介護情報が取り込まれるという仕組みだ(写真10)。
訪問介護システムに取り込んだデータには、用紙の画像がページ取り込まれる(写真11)。サービス実施の日時や内容(身体介護、生活援助)、申し送り事項で書いた文字内容を認識して内容を表示するため、キーボード入力も必要ない。事務所のクライアントPCでは電子化されたデータを修正できる。
従来のように記録ノートを利用者宅に置くことで、利用者や家族がサービス内容を確認するとともに、他のスタッフへの申し送り事項も共有できる。紙媒体なので利用者控えや事業所控えとして持ち帰って提出する運用となる。また、スタッフはボールペンと同じような感覚で使用でき、事務所に戻ってからの転記作業は必要なくなり、事務処理の効率化が図れる。日立製作所によると「デジタルペンに保存するデータは暗号化されており、デジタルペンを紛失しても個人情報の漏えいの心配はない。また、通常の替え芯を使用できるためメンテナンスもしやすい」という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー