医療・介護分野で最適なコミュニケーションを支援
LINE感覚で使える医療・介護専用SNS「メディカルケアステーション」
医療・介護従事者間のコミュニケーションを円滑にすることを目指した新サービスが2013年7月に発表された。FacebookやLINEなどの感覚で使える医療・介護専用SNSで、より身近な場面からICT化を促進する。
トップダウンによる医療分野のICT化は難しいのか? 総務省が全国展開している「地域ICTプロジェクト」や厚生労働省の「地域医療再生金」などで、地域が抱える医療問題の解決をICT化で支援する取り組みが進められている。しかし、総務省の「ICTが成長に与える効果に関する調査研究」(2012年)によると、中小規模の保健、医療、福祉業界のICT化の活用や効果は他の産業と比べて遅れているという。また、総務省の「情報通信白書 平成24年版」では、「保健、医療、福祉業界ではネットワーク化、グループウェアの利用、SNS、モバイルなどの活用が他業界より遅れている」という結果が出ている。
実際、都道府県の基幹病院や地域の中核病院などを核にした医療連携では、電子カルテの診療情報や訪問看護指示書、紹介状などの各種文書の連携が中心だ。しかし、在宅医療・介護連携のように多事業所や多職種の関係者で情報共有する場合、IT環境やITスキル、所属組織などが異なることがネックとなり、その情報連携は容易ではないのが現状だ。
こうした現状を踏まえ、医療・介護従事者間のコミュニケーションを円滑にすることを目指した新サービスが2013年7月に発表された。“専用SNS+スマートフォン”の組み合わせで医療・介護業界におけるICT化を支援するサービス「メディカルケアステーション」だ。
メディカルケアステーションは、ソフトバンクテレコム、日本エンブレース、JRCエンジニアリングの3社が共同で提供する医療・介護専用SNS。メディカルケアステーションが開発・運営の主体となり、ソフトバンクテレコムが「ホワイトクラウド」などのクラウド技術を提供、JRCエンジニアリングがサポートやサービス連携のための共通APIの提供などを行う。
ソフトバンクテレコムのヘルスケアプロジェクト推進室 担当部長 長澤 哲氏は「『eヘルスコネクトコンソーシアム』の認定指導を受けて、医療現場のニーズに即したサービスを立ち上げた」と説明する。eヘルスコネクトコンソーシアムは、地域の保健医療・介護福祉環境向上と発展のため、患者や利用者本位のサービスの開発や普及などの推進を目的とした設立された団体だ。
医療・介護分野のICT化が進まない原因
「医療・介護分野のコミュニケーション手段は電話、FAX、メール、患者宅にある連絡ノートなどが主流になっており、リアルタイムな情報共有が難しい」と、ソフトバンクテレコムのヘルスケアプロジェクト推進室 担当部長 小林広明氏は 語る。また、以下6項目を医療・介護分野のICT化が進まない理由として指摘する。
- 移動が多く常に端末の前にいるわけではない
- 人の出入りが多く、高度なシステムを使いにくい
- 職種によってICT環境やスキルが異なる
- 個人情報を扱うため、セキュリティ面に不安がある
- ICTへの投資が少ない
- 多職種連携が基本となるため、共通のIT基盤が作りにくい
さらに、医療・介護業界のICT化を進めるコミュニケーションツールの条件として「いつでも、どこでも、必要なときに使える」「誰でも簡単に使えて、操作を覚えられる」「運用コストが安価である」「セキュリティの心配がなく、安全に使える」を挙げる。これらの条件を考慮し、「医療・介護分野で最適なコミュニケーションツールは“専用SNS+スマートフォン”だと考え、今回発表したサービスを提供開始する」と説明する。
FacebookやLINEと同様のコミュニケーションが可能
メディカルステーションは、完全非公開型のSNS。参加施設ごとの登録制で、登録者からの招待によって施設外の関係者も参加できる。参加希望者を招待する場合には、患者と医療者双方の承認を受けてから参加可能にしている。病院やクリニック、介護施設、薬局などの医療関連施設、患者とその家族などが患者の医療・健康情報を共有する。クライアントPCやスマートフォン、タブレットで利用可能なマルチデバイス型を採用している。
メディカルステーションでは患者単位でグループを作成し、患者とのコミュニケーション、院内外の医療スタッフ間でのタイムリーな情報共有を可能にする。グループの自動作成も可能で、特定の患者や疾患ごとに関係者間で連携可能なプラットフォームとして利用できる。利用者とサーバ間の通信は暗号化されている。
メディカルケアステーションは、SNSで主流のタイムライン方式で患者情報を時系列に表示する。「FacebookやLINEのような分かりやすいコミュニケーションを実現する」(小林氏)。タイムラインに入力するとその情報はリアルタイムに表示され、メッセージ送信時に各種ファイルを添付できる。相手が既読かどうかのステイタスを把握したり、過去履歴もタイムラインで確認したりできる。
また、医療・介護関係者が連携するタイプと、医療・介護関係者に加えて患者とその家族も連携するタイプの2つのタイムラインを提供する。患者のタイムラインに書き込むだけで、即座に情報共有が可能。2つのタイムラインはタブで切り替えて表示でき、タブの切り替え時にはアラートを表示する。
患者やその家族など、医療・介護関係者以外の患者情報共有は任意となる。
メディカルケアステーションでは以下の機能を標準搭載し、全て無料で活用できる。1施設当たり1Gバイトまで無料で保存可能で、保存データ容量の追加は10Gバイトごとで1カ月当たり5000円となる。
| 機能名 | 説明 |
|---|---|
| 個人プロフィール | 医療・介護従事者ユーザーの名前、資格、経歴などを表示 |
| スタッフ招待 | 所属施設のスタッフを招待 |
| 医療関連施設ページ | 医療関連施設の名称などの基本情報、診療科目を表示 |
| 患者管理 | 医療関連施設の患者登録、変更、削除などの管理 |
| 患者タイムライン(医療者・患者) | 患者ごとのタイムライン機能、医療者用と患者用の2種類を提供 |
| 患者ノート | 患者についてのメモをフリーテキストで共有 |
| 関係者招待機能 | タイムラインに医療介護関係者を招待 |
| ファイル添付機能 | メッセージ送信時に各種ファイルを添付 |
| 権限管理機能 | 招待時の承認、許可などによるアクセスコントロール |
| 患者検索 | 患者の検索機能 |
| お知らせ通知機能 | メッセージの受信などについてメールで通知 |
| パーソナルメッセージ機能 | 1対1のメッセージ機能 |
| スタッフ情報共有タイムライン | 所属施設のスタッフ同士の情報共有専用のタイムライン |
| 連携グループタイムライン | 連携グループの情報共有専用のタイムライン |
メディカルケアステーションでは、クリニック専用SNSページを開設することも可能。また、在宅患者を個別に登録したり、CSVファイルで一括登録したりすることで患者データベースを構築できる。
さらに患者ごとに対象患者の治療に関わっている医療者、家族、友人などをホワイトリスト的に登録する「グループメンバー(サポーター)」機能、参加者間で個別にメッセージ送受信する「パーソナルメッセージ」機能なども備える。
既に、豊島区医師会、武蔵野市在宅療養グループ、江東区在宅療養グループ、調剤薬局グループなど50施設以上がトライアルを実施している。今後は、付加機能を利用できる「PREMIUMユーザーモデル」も提供する予定だ。
SNSを中核とする総合医療健康サービスを視野に
ソフトバンクテレコムはメディカルケアステーションによって、SNSを中核とする医療・介護従事者とパートナー企業のITサービスをつなぐ共通プラットフォームを確立し、医療・介護分野のICT化促進を目指すという。パートナー向けにSNSと連携するプラットフォームを用意し、各種ICTサービスなどを医療・介護関係者に提供する仕組みを提供する。また電子カルテやレセプトコンピュータ、医用画像管理システムなどとAPI経由で連携したり、書籍や各種医材、ケア用品などの物品の販売プラットフォームとしても利用できる「MCSストア」というサービスも用意した 。さらに情報提供やマーケティング活動が可能なパートナー向け専用サイトを設立する。既に20社のベンダーの参加を見込んでいるという(2013年7月12日時点)。
長澤氏によると「まずは、コミュニケーション連携の必要性が最も高い在宅医療分野に注力し、医療介護分野全般で広く活用してもらう」と説明。最終的には、医療介護ビッグデータビジネスなどの総合医療健康サービスとしての展開を目指す。同社は2015年をめどに15億円の売り上げ、7000施設の導入を目標に掲げている。
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