地域ICTプロジェクトの2割は医療関連
情報通信白書に見る、医療ICT化の現状
全国各地で実施されている医療分野のICT化事業。実際、ICT化の効果はどれくらいあるのだろうか? 総務省の「平成24年版 情報通信白書」を基にその現状を考察する。
医療分野のICT化の効果はどれくらいなのか?
国家の情報通信(ICT)政策を担う総務省では、国民のICT利用の促進、u-Japan政策や地域情報化、電気通信政策の推進など「情報通信の高度化」に取り組んでいる。中でも、医療分野では、ICT利用によって高齢化の進展、国民医療費の増加などの課題解決に注力。研究開発や実証実験を通じて、医療情報を安全かつ円滑に流通させる仕組みの確立や普及、遠隔医療の推進、情報通信ネットワークやクラウド技術を活用した医療の安全性向上、業務効率化などを推進している。
実際、医療分野のICT化の効果はどれくらいあるのだろうか? 本稿では、総務省が公表している「平成24年版 情報通信白書」で紹介されている調査・統計結果を基にその現状を考察する。
積極的にICT化に取り組むべき?
医療機関が電子カルテやオーダリング、レセプトコンピュータ(レセコン)などを導入して情報を電子化することで情報共有がしやすくなったり、事務処理が効率化したりするというメリットを享受できる。
情報通信白書では、医療機関を対象にしたICT化の効果に関する調査結果を紹介している。この調査では「積極的にICT化に取り組んでいる医療機関」「ICT化が進展していない医療機関」を対象にICT化の効果を尋ねている。それによると、積極的にICT化に取り組んでいる医療機関ほど情報共有や事務処理向上、労働時間短縮などの効果を得ていることが分かった。
特に「院内における医療従事者間の情報共有」の効果については、積極的に取り組む医療機関(76.9%)と進展していない医療機関(24.5%)との差が最も開いていた。また、今後は特に「院外での情報共有・連携」の効果が期待される。現在、政府主導で「在宅医療の推進」「医療・介護連携」が進められており、医師や看護師、薬剤師、ケアマネジャー、介護福祉士、ヘルパーなどの多職種間の情報共有が必要不可欠になるからだ。
医療・介護連携については、IT環境やIT投資金額は事業者ごとに異なるため、導入・運用維持が難しいという指摘がある。その一方で、インターネット経由で情報を共有できるクラウド基盤も市場に登場しており、情報共有を目的とするICT化を検討する医療機関が今後さらに増えると予想される。
実証地域に聞いたEHRの効果
総務省は、「新たな情報通信技術戦略」(2009年)における「どこでもMY病院」構想、「シームレスな地域連携医療」の実現の基盤となる「医療情報連携基盤(EHR:Electronic Health Record)」の普及推進にも取り組んでいる。
EHRとは「国民1人1人が自らの健康/医療情報を生涯を通じて管理把握できる環境と、それを支える国家的な医療情報ネットワーク」のことを指す。また、日本政府は、EHRの情報を国民の疾病予防や医療の効率化に役立てることを目指す取り組みを視野に入れている。
総務省、厚生労働省、経済産業省などの関係省庁は、2011年度から「健康情報活用基盤構築事業」によって広域共同利用型EHRに関する実証事業を実施している。また、2012年度から「東北メディカル・メガバンク計画」を推進するため、被災地域におけるEHRの構築を支援している。
総務省は健康情報活用基盤構築事業の一環として、香川県高松市、広島県尾道市、島根県出雲市などを中心とする3地域で「処方情報の電子化・医薬連携」「医療・介護連携」「共通診察券の活用」についての実証事業を実施。これらの地域におけるEHRの効果をアンケート調査で検証している。
3実証地域でのアンケート結果によると、EHRの効果として「診療の質の向上」「服薬指導の質の向上」「事務の効率化」などが挙げられた。さらに「EHRを閲覧することで重複検査が減少した」「患者本人が自らの診療情報・調剤情報を確認して健康状況を把握できるため、特定健診前の時期にはEHRの閲覧数が増加した」というフィードバックが得られているという。その上で、EHRの普及推進には「導入効果に関するエビデンスを積み重ねたり、継続的な運営モデルを構築すること」を課題に掲げている。
総務省によると、これまで全国で展開してきた地域ICTプロジェクトは550事業を越えている。その内の2割に当たる111事業が医療関連で、特に遠隔画像診断や救急医療、健康管理などのプロジェクトが多いという。医療分野のICT化の重要性を示唆した結果だといえる。
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