日本マイクロソフトのCSAに聞く
“オープンソースへの傾倒”は本物か、「Microsoft Azure」の今(2/2 ページ)
2016年のAzureの方向性
2014年までの“溜め”の期間を終了し、2015年においてAzureはブランド力のあるクラウドサービスとして大きく飛躍した。では2016年のAzureはどんな方向性を目指そうとしているのか。土居氏は「もうIaaSというレイヤーにこだわる時代は終わったのではと感じている」とした上で、「マシンラーニングやデータウェアハウジングなど、Microsoftならではの価値を訴求できるサービスにこれからはフォーカスしていくだろう。『Docker』や『OpenStack』にMicrosoftが注力しているのも、時代に適したモダナイズされた環境を提供していきたいからで、いまさらIaaSのレイヤーで競争する理由を見いだせない」と語る。現在、Microsoftは米Dockerや米Mesosphere(クラスタリソースマネジャー「Apache Mesos」の開発元)といったオープンソース企業に多額の投資を行っており、この傾向は2016年も続くとみられる。
Microsoftはユーザーに対してクラウドファーストを推奨しているだけあって、同社自身の開発スタイルもクラウドファーストへとシフトしている。新しい技術はまずクラウド上でテスト、製品化し、オンプレミスへの対応はその後だ。「今はオープンソースを取り込みながら、クラウド上でスムーズに稼働するかどうかが製品開発の優先事項になっている。2年に1回のアップデートが一般的なオンプレミスではクラウドの進化に追い付けない」と土居氏。
だが、Microsoftほどの企業ならそういうアプローチも可能だが、一般企業はそうはいかない。クラウドを部分的に使いつつ、メインのアプリケーション環境はオンプレミスという企業はいまだに多数派だ。こうした企業のニーズに応えるためにMicrosoftが提供するのが「Azure Stack」だ。Azureと同様のリソース管理を顧客企業のデータセンターで可能にするソフトウェアで、さながらデータセンターに“ミニAzure”を実装するイメージだろうか。オンプレミスからのクラウド移行が進まない企業でも、Azureと同様のクラウドライクな環境を容易に得ることができる。平野氏はAzure Stackを「顧客のニーズ、そしてクラウドの多様化に対応した製品」と表現する。「どうしてもクラウドに持っていきたくないアプリケーションやデータがあるというなら、その意向は尊重すべきだ。われわれも決してAzureだけにこだわるわけではない」。その辺りはAWSとは考え方が違う。「2016年はより多くのサービスがクラウドにやってくるのは間違いないが、その全てをMicrosoftで巻き取れるわけではない。ならば顧客がハッピーな選択をするためのアシストを行えばいい。Azure Stackはそうしたエクスペリエンスを拡大するための製品」(平野氏)
ユーザーのニーズに応えていくという点でいえば、2015年はかつてライバルとされていた米Red Hat、米Akamai、Salesforce.com、米VMwareといった企業とのクラウドビジネスにおける提携を次々と発表したことも大きな話題となった。筆者は2015年9月、米サンフランシスコで開催されたSalesforce.comの年次イベント「Dreamforce 2015」を取材したが、その単独基調講演にナデラCEOが登壇した姿を見て隔世の感を覚えた。まさかMicrosoftのCEOがDreamforceのステージに立つ日が来るとは、10年前なら誰も思わなかったはずだ。平野氏は「なりふりかまわず提携しているわけではなく、顧客が望むニーズを巻き取っているだけ」と語る。もしその方針がこれからも続くなら、2016年はさらに驚くパートナーシップの発表が聞けるかもしれない。
インタビューの最後、どうしても聞きたかった質問を平野氏にぶつけてみた。ナデラCEOのリーダーシップと平野氏や土井氏のようなCSAの奮闘を見ていれば、Microsoftがオープンソースへの対応に向けて懸命に努力しているのは確かに理解できる。だが、多くのオープンソース関係者はゲイツ氏やバルマー氏がオープンソースコミュニティーを批判した過去を決して忘れてはいない。いつ手のひらを返し、オープンソースコミュニティーを敵に回す事態にならないとも限らないのでは? またMicrosoftの社内にもオープンソースへの対応を快く思わない勢力も残っているのでは? 平野氏は「そういった懸念がグローバルであるのはもちろん知っている。だからこそCSAの存在が重要になってくる。いまだにMicrosoftのインフラというと、『それってIIS(Microsoft Internet Information Services)じゃないの?』といわれることもある。そうした“呪い”を一つ一つ取り除き、Microsoftは本当に変わった、オープンソース関係者もMicrosoftで活躍している、そういうところを見せていきたい」と答えている。Microsoftの変化へのアプローチは本物なのか、その答えはオープンソース対応の影響を最も受けることになるAzureの2016年における成長にあるのかもしれない。
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