孤高の人はたいてい失敗する
“独善”データサイエンティストが陥る6つの勘違い
現代IT技術で注目のビッグデータで要となるデータサイエンスチームは最も花形のセクションだ。優柔な人材が集まってくるが、それだけに、自らの誤りに気付かないままビジネスを窮地に追い込むこともある。
ビッグデータが注目の的から頭痛の種になりつつあるとしても、諦めるのはまだ早い。最高情報責任者(CIO)やデータサイエンスチームが致命的な失敗を起こさないように、優秀なビッグデータ解析担当者にありがちな6つの“勘違い”について、Bloombergでデータサイエンスチームの責任者を務めるギデオン・マン氏が解説する。
マン氏はGoogleのリサーチサイエンティストとして6年間勤務した後に、Bloombergに入社した。Bloombergでは、最高情報責任者(CTO)室で社内と顧客向けのビッグデータプロジェクトに携わってきた。「ビッグデータプロジェクトでは、製品管理部門の役割を果たすこともあれば、設計者になることも、試作者になることも、そして、研究員になることもある」(マン氏)。
いずれにしても明らかなのは、協力者との明快な意思疎通が鍵を握ること、そして、柔軟性の高いプランニングが重要になるということだ。
勘違い1:アルゴリズムは魔法だ
データサイエンスと機械学習は強力なツールだが魔法ではない。こんな当たり前のことを、ビッグデータプロジェクトの「スコープ」を定める上でわざわざ念頭に置くことが大切だとマン氏はいう。なお、マン氏はスコープを「成功とは何かを定義すること」と説明している。
成功の基準が合理的に考えて人間には実現不可能だった場合、アルゴリズムにも成功は期待できない。その理由は単純だ。マン氏は「時間という文脈を取り出す必要がある」と語る。「検索エンジンの仕組みを例に取ると、この作業は人間にもできる。ただそのためには全ての文書を参照して適合するかしないかを判断しなければならないということだ」
勘違い2:小手先の修正で十分だ
機械学習の技術は最初から最速を発揮するものではないが、多くの場合、持続性の高いソリューションを提示してくれる。そのことを他のチームのメンバーに正しく説明することが重要だ。例えば、感情分析において最初に小さなルールを多数書き出すことは簡単だが、そのままでは拡張(スケーリング)ができない。言葉は変わり続けるものであり、1つのフレーズについて全てのバリエーションをリストアップする作業はいずれ無意味になる。
最初のうち、製品開発チームは小手先の修正ですぐに対応しようとするだろう。そのほうが修正した効果をすぐに得ることができ、構築に時間がかかる機械学習のアルゴリズムと同じ成果が出せるからだ。しかし、場当たり的な修正がいかにもろいかを製品開発チームはすぐに認識することになる。この過ちを避けるため、マン氏は「製品開発チームが期待する製品改善の内容について、ビッグデータ解析チームが提供できる提案に合わせてもらうように」とマン氏は提言する。
幸いなことに、製品チームの判断力が高まれば、この手の勘違いは解消できる。「BloombergやGoogleのように高い技術力を持つ企業では、製品チームの理解力も高い。何がうまくいって何がうまくいかないか、どんなスケーリングが必要になるのか、あるいは不要なのかを、直感的に理解できる」(マン氏)。
勘違い3:作り終えたら放置してよい
「きのうは通用したテクニックも、自分が対象としている物の性質が変われば、明日は通用しなくなるかもしれない」(マン氏)。例えば、Googleの広告サービス「Google AdWords」の目標は、広告主にとって最も高い投資効果をもたらす広告を検索結果の隣に表示することにある。
だが消費者の行動は常に変わり続ける。だから、広告を表示するアルゴリズムは静的であってはならない。アルゴリズムを常にテストし、評価の見直しを行う必要がある。マン氏によると、データサイエンスチームは、自動化されたテストと手作業のテストを繰り返し組み合わせて、アルゴリズムの精度を評価している。評価を行う回数は「世の中の変化の速さ次第」だという。
勘違い4:失敗は許されない
機械学習やビッグデータプロジェクトに最初から完璧を期待する姿勢は災いを招く。データサイエンスチームは、製品が顧客に使ってもらえるだけの価値を提供できる(それによって次世代製品の開発に必要なデータを収集できる)場合と、その基準に到達できない場合を分ける、きわどい境界線の算定に長けている。
Facebookの仮想パーソナルアシスタント「Facebook M」と、Appleの自然言語処理システム「Siri」の違いを考えてみよう。Siriは確かに機能するが、あらゆる場面で使えるほどの精度は達成できない。このため、顧客がSiriを使う場面は限られ、それはAppleが収集できるデータの範囲に影響を及ぼす。
Facebook Mは、人の行動と機械の行動を相対的に連携させ、ユーザーがどんな問題でも解決できるようにしている。結果としてFacebookは学習用データを非常に広い範囲から収集でき、それを使ってモデルの学習ができる。
勘違い5:プライバシーは無視していい
顧客のプライバシーは扱いが難しい。ユーザーの買い物習慣に関する情報を収集する「Facebook Beacon」は拒むのに、交通情報を提供するために個人情報を収集する仮想アシスタントの「Google Now」はなぜ受け入れるのか。
「アプリケーションとの接し方に尽きる」とマン氏は説明する。顧客はFacebook Beaconには冷淡だったかもしれないが、顧客のデータを商品として利用するFacebookそのものにはそうした反応を示さない。恐らく、そういう「商売的な事情」が背後で行っている分には顧客は無視してくれる。
「顧客は、Facebookを使うことで得られる価値を分かっている」とマン氏は指摘する。顧客にとっての価値と監視との一線を見極めるためにマン氏は、試行錯誤とユーザーフォーカスグループ、そしてユーザーそのものとの対話を勧めている。
勘違い6:自分たちが何を求めるかを会社は分かっている
機械学習システムの構築にかかる時間と、製品に対するニーズが変化するまでの時間は大抵かみ合わない。CIOとデータサイエンスチームは、その現実を受け入れるべきだ。事業が次から次へと落とし穴にはまる事態を防ぐために、事細かく精巧に構築するのではなく、汎用性のある構築によって柔軟性あるゆとりを持つことをマン氏は提言する。「小さな問題は変わる可能性があるからだ」(マン氏)
会社側が最初に「お勧め製品を提案するエンジン」を求めておきながら、後になって「本当に必要なのはお勧めニュースのエンジンだった」と気付くことさえある。「機械学習の構成をどれだけ厳密に設計したかによって、対応できることもあれば、できないこともある」とマン氏は話す。
アジャイルワークフローの導入は、CIOやデータサイエンスチームが柔軟性を保ち、必要とあれば調整を行う助けになる。
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