データから読み解く企業の思惑
「データサイエンティストはつらいよ」、注目職種も求人が多くない理由
将来のビジネスシナリオを予測したり、多くのデータから有益な事実を見つけ出す、データサイエンティスト。魅力的な職業だが、企業側からみた実情は違うようだ。
データサイエンティストは「21世紀で最も魅力的な職業」と呼ばれている。データサイエンティストは、将来のビジネスシナリオを予測したり、延々と数字が並んでいる未加工のデータから有益な事実を見つけたりすることができる。このように、魔法のような偉業を成し遂げられることを考えれば、データサイエンティストがこのように呼ばれているのは驚くべきことではないだろう。だが、大きく取り沙汰されているにもかかわらず、企業側ではデータサイエンティストに対して特別高い需要があるわけではない。
最近では、魅力の面でデータサイエンティストよりもデータエンジニアに多くの需要が集中しているのが実情だ。データエンジニアの職務は、データ分析ツールを選定し、実装して、データベースチームと協力してデータを分析できる状態にすることである。
データエンジニアの需要増加は、Googleの検索結果からは特定できない。「data scientist」(データサイエンティスト)の検索件数は2012年を境に急増していて、2012年以降も大幅な上昇を続けている(図1参照)。一方、「data engineer」(データエンジニア)の検索件数は、「data scientist」の検索件数の3分の1にも満たない。
一方、米LinkedInのサイトで求人情報をチェックすると、「データエンジニア」の求人件数は“データサイエンティスト”の3倍近くにも上る。これは今に始まったことではない。米Indeedの求人情報サイト「Indeed.com」によると、2006年以降、同サイトの求人情報にデータエンジニアが占める割合は全体の約1.5%と比較的安定した状態を維持している。ただし、2012年前後の短期的な急上昇とそれに伴う急下降は例外とする(図2参照)。
「データサイエンティスト」の求人もほぼ横ばいである。だが、その平均はデータエンジニアよりずっと低く、全体の0.15%を辛うじて超えているにすぎない。また、掲載されているデータサイエンティストの総求人件数は、直近で最高値を記録した2013年の値を大きく下回っている(図3参照)。
優秀なデータサイエンティストが足りていない
この格差の一因は、真のデータサイエンティストを雇用できる機会があまりに少ないことにあるかもしれない。データサイエンティストには、下記のようなスキルを兼ね備えていることが期待されている。
- 分析
- 統計
- モデリング
- データ視覚化
- コミュニケーション
そのため、実在しないといわれている"ユニコーン"のような存在になっている。適切な候補者を見つけられそうもないことに気付いたのであれば、企業がわざわざデータサイエンティストの求人情報を掲載しないのは当然の対応だろう。
単純にデータサイエンティストを雇用することに企業があまり価値を見だしていない可能性もある。さまざまスキルを持っていることから、データサイエンティストには高額な給与を支払わなければならないことが多い。コストの面で考えると、データエンジニアを1人と複数のビジネスアナリストで構成されるチームを雇用した方が理にかなっているのかもしれない。データエンジニアの職務は情報が流れる仕組みを整えることだ。そして、ビジネスアナリストは、質問を投げ掛けて解を得るセルフサービス型BIツールを使えることなどだ。このようなソフトウェアには、米Tableau Softwareの「Tableau」や米Qlik Technologiesの「QlikView」などがある。
結局のところビジネスは実用主義である。米Glassdoorの求人情報サイト「Glassdoor.com」による試算では、データサイエンティストとデータエンジニア、データアナリストの米国における平均給与は下記となっている。
| データサイエンティスト | 11万8709ドル |
|---|---|
| データエンジニア | 9万5936ドル |
| データアナリスト | 6万2379ドル |
データサイエンティストを1人雇う場合と比較して、データエンジニアとデータアナリストをそれぞれ1人雇った方が人件費は高額になるかもしれない。だが、一般的に後者は前者よりも具体的なビジネス価値があり、もっと多方面における任務を担うことができる。また、1人のデータサイエンティストより多くのことを遂行できるだろう。
データサイエンティストはそれほど必要とされないのか
ニーズという問題もある。多くの企業には、博士号を取得しているデータサイエンティストにしか解決できないような大きく複雑なデータに関連する問題はない。多くの企業が抱えるデータの問題は、ずっと規模が小さい。高度な統計分析技術やプログラミングの知識がなくてもセルフサービス型BIツールを使うことでどうにかできるものだ。
このいずれもデータサイエンティストが企業にもたらすメリットを軽んじているわけではない。データサイエンティストは、適切なニーズがある企業に大きな変革をもたらす可能性を秘めている。データサイエンティストの役割は、あまりに大きく取り沙汰されてきた。そのため、企業幹部がデータサイエンティストの雇用について、ビジネスの魔法使いの雇用と同義だと考えていても仕方のないことだろう。多くの場合、世間の熱狂レベルは現実から乖離している。
データ分析に精通した若者は、どの道で自分のスキルを生かすかを検討している場合、この現状に留意されたい。魅力的な職に就きたいのであれば、データサイエンティストがお勧めである。だが、多くの就業機会が得られる職業や安定した職業を望む場合は、データエンジニアになる方が職業の選択として適切かもしれない。
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