自動運転システムはドライバーの「守護神」たれ
Tesla Motorsは楽観的? 自動運転がどれほど進化しても残る“人の課題”
Googleの取り組みをはじめとする自動運転技術に対する注目と期待が膨らみ続けている。先進的開発関係者は、技術的課題は全て解決のめどがついたと主張するが、一方で、慎重な指摘をする関係者も少なくない。
Googleで自動運転車を開発している技術者たちは、カルトコメディー映画の続編「Hot Tub Time Machine 2」(2015年公開)が気に入ったようだ。いい映画だと思ったからではなく(多分、くだらない映画だと思っただろう)、自動運転車が活躍する明るい未来を描いていたからだ。続編では、Hot Tub Time Machineに登場したキャストの大半が2025年にタイムスリップする。スティーブ・ピンク監督が描いた2025年の世界では、自動車が人間の指示に従って人々を運び、高速道路のカーブを巧みに走り抜け、狭いスペースにぴったりと停止するだけでなく、自動運転車は無礼な人間をひこうとする。乗っている人は驚いて、自分が車内で使っていたノートPCに向かって怒鳴りつけるシーンだ。
現実の2025年はどうなるのだろうか。マサチューセッツ工科大学(MIT)のジョン・レナード氏によると、自動車が人間のコントロールから離れて自律的に走行するようになるには多くの技術的ブレイクスルーが必要だが、これからの9年間でそのほとんどは実現する可能性があるという。
機械工学教授で人工知能の研究者であるレナード氏は、先頃ハーバード大学で開催した「Brain + Machines」シンポジウムにおいて「Tesla Motorsの創業者イーロン・マスク氏は自動運転車は解決済みの問題と断言しているが、これは楽観的過ぎる」と指摘している。「自動車の運転は、脳の働きに関する根本的な問題を明らかにしたが、その解決には程遠いところにいるのかもしれない」
「Google Carは、いつか交通システムを変革する可能性がある驚異的なプロジェクト」とレナード氏は考えているが、同時に、「この技術は現在、宣伝が大げさで、多くの人は誤解している」という。
自動化運転の道のりは平たんではない
レナード氏は「Simultaneous Localization and Mapping」(SLAM)の研究を行っている。これは、自動化運転の自動車が自分を誘導するために使う地図を作成する技術だ。レナード氏は「2007 DARPA Challenge」でMITの自律走行車チームのリーダーを務めた。DARPA Challengeはカリフォルニア州の空軍基地跡で開催する自動運転車の競技会だ。
このイベントでMITの車とコーネル大学の車が衝突したが、その場面を記録した動画は、レナード氏がいおうとしている“危惧”を分かりやすく表している。このとき、MITの車はコーネル大学の車を追い越そうとして衝突している。レナード氏は、この事故を空間推論の問題だという。アルゴリズムに基づいて自動運転の車を操縦するコンピュータには、人間が持っている「世界の意味論的理解」が欠落している。これが空間推論問題の原因の1つになっている。
レナード氏は自律運転にまつわる、その他の未解決課題についても論じた。その1つは、車の運転に関連した人間の意志疎通をめぐる問題だ。同氏は自分の車のダッシュボードに取り付けたカメラで撮影した動画を見せた。これは、同氏の出身地であるボストン郊外のニュートンという町でレナード氏が運転しているときの映像で、交通量が多いにもかかわらず信号がない交差点では、対向車に手を振ってこちらの意図を伝えなければ、左折するのはほとんど不可能な状況だった。別の動画では、道路に立っている警官が赤信号の交差点を直進するように車を手招きしていた。
「この会場にプログラマがいるとしたら、赤信号では常に停止すること。ただし道路脇に立っている人が手招きしている場合を除く、というコードをどのように書くのだろうか」とレナード氏は問い掛けた。
路面状態の予期しない変化などで自動運転車が混乱させる可能性もある。例えば、Google Carは移動中のどの地点でも自身の位置を特定できる正確な地図を使用する。「だが、雪が30センチも積もったり、道路の再舗装などがあったりすると、自動運転車はすぐに混乱しそうだ」(レナード氏)
また、「引き継ぎ問題」にも注意しなければならない。これは自動運転車が路上でどうすべきか判断できなくなったとき、人間に注意を促して運転を代わってもらうにはどうすればいいのかという問題だ。レナード氏は「人間はこうした状況に対応するのが非常に苦手だ」と説明する。
このような現状を把握したうえで、レナード氏は「Googleが目指している完全な自律性を自動車が備えるまでは、自動運転機能は守護神システムとしての役割にとどめるべきだ」と主張する。このシステムにおいて、走行中は常に人間が注意を払う必要があり、人間がミスをしたり、事故が起こりそうになったときだけ、自動運転機能が作動する。
「考える」とは何かを考える
レナード氏は、自動運転車が直面する問題の解決に役立つ手段として、ニューロサイエンス(神経科学)に注目している。レナード氏が取り組んでいるのは、人間や動物の脳がどのようにして情報を収集し、物理的空間内における自分の位置を表す映像を作成するのかという問題だ。
レナード氏は、ロボットがいすにぶつかったり、車など移動する物体に衝突したりせずに、室内あるいはMITのキャンパスを通り抜けるのに役立つ視覚化した地図を使って実験を行っている。
「永続的に地図を学習する自律システムを実現するのが私の目標だ。例えば、ボストン周辺を運転するたびに賢くなっていくような自動運転車だ。その車は現実にある社会について学ぶことになるだろう」
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