ガートナーの提言
6つの事例が示す 注目を集める「超高速開発」ツールの真価(2/2 ページ)
大規模開発だからこそツールで標準化する
住友電気工業は、SPL(Software Product Line)の考えに基づき1999年から複数のWebアプリケーションで共通する部分をできる限り部品化し、アプリケーション開発自動化を実践してきた(その成果は、部品組立型のWebアプリケーション構築ツール「楽々フレームワーク」として外販している)。主に部品化しているのは画面遷移の部分だ。業務で使うWebアプリケーションの画面遷移は照会、登録、変更、削除など共通するものが多い。従来、これらを共通部品として再利用すれば、各アプリケーションで個別にコーディングする必要がない。テストも自動化し、シナリオで約1000件、項目で約1万件をカバーするようにした。これらの取り組みにより、住友電気のアプリケーション開発自動化はかなり進んだ。実際、アプリケーションのコード数は平均164行と一般の1割ほどでしかない。そのため開発生産性は極めて高い。1人時当たりのファンクションポイント(FP、大きいほど機能が複雑)は0.33と一般の3~5倍に達している。
基幹システムに付き物のバッチ処理は、往々にして機能追加やシステム連係によってどんどん肥大化し、性能や保守性が悪化するものだ。B社は基幹システム再構築に当たり、バッチ自動生成ツール「ODIP」(販売:インテリジェントモデル)を採用し、バッチ開発を一から見直した。ODIPでは、バッチ処理の入力、加工、出力をメタデータで定義する。複雑化しやすいバッチ処理フローを見える化でき、最適化しやすい。B社では実際、バッチ処理の入出力数が減った結果、プログラム量も圧縮できた。開発生産性(1人当たりのFP)は従来比4~5倍にまで高まり、3割近くのコスト削減を成し遂げたという。
最後に紹介する採用事例は、メガバンクによる勘定系システム統合・刷新。究極の大規模プロジェクトである。富士通のアプリケーション開発自動化ツール「Interdevelop Designer」を使い、日本語設計書からソースコードや単体テストの仕様書・データが自動生成されるようにした。その最大の目的は標準化にあった。膨大な数の開発者が参加する大規模プロジェクトで“属人性”を許していると品質は安定せず、共同作業もスムーズにいかない。結果として無駄な作業が生まれ、開発生産性は下がる。確かにツール活用の前工程として、業務用語やコード、メッセージなどシステム内情報を一元管理するデータ辞書への情報登録は大変な作業だが、いったん辞書が整備されれば、属人性排除の効果は大きい。片山氏は「こうしたツールは経験豊富な開発者から疎まれるが、IT部門は何が重要かを考えてほしい」と話す。
採用前に使い込んでツールの真価を見極める
6つの事例では、各社がそれぞれ別のアプリケーション開発自動化ツールを使っている。現状、デファクトスタンダード製品があるわけではなく、自社に合ったものを選ばないといけない。片山氏は「選択ポイントは多く、どのポイントを重視するかはユーザー企業それぞれ」と前置きした上で、賢い選び方を紹介する。ある企業は複数のベンダーからアプリケーション開発自動化ツールを検証用に借り、それらで稼働中の本番アプリケーションと同じものを開発し、開発現場の声をフィードバックして購入するツールを選んだ。やはり使い込んでみないと真価は分からないと判断したからだ。
単体アプリケーションの開発だけでツールの使い勝手を判断すると見誤るかもしれない。アプリケーション開発自動化ツールは製品によって処理ロジックをより重視するか、データモデルをより重視するかの違いがある。あくまでも単体レベルでの開発生産性(処理ロジック)を求めるか、単体同士をつなぐ大規模展開(データモデル)を視野に入れているかで、おのずと選ぶ製品は違ってくるという。
紹介した事例を見ても分かるようにアプリケーション開発自動化は広がっており、大規模開発への適用も始まっている。片山氏は「IT部門の中では依然、『ソースコードがないのはあり得ない』『ベンダーにロックインされる』『開発者のスキルが磨かれない』などと、自動化ツールに対する抵抗は強い。自分たちに求められているのは何なのか、合理的に考えてほしい」と訴える。アプリケーション開発の在り方を根本から変える決断の時は目前にあるようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー