ガートナー 片山治利氏に聞く「超高速開発ツール」
劇的に進むユーザー企業の内製化 IT部門はスピードと“シャドーIT”にどう対応する?(1/2 ページ)
アプリケーション開発の内製化を図る企業が国内でも増え始めている。その背景には何があったのか。内製化トレンドで再び脚光を浴びる「超高速開発ツール」とは?
企業ITの世界で、“シャドーIT”という言葉を耳にする機会が増えてきた。これは、業務部門のユーザーがIT部門を通さず、独断でファイル共有サービスなどのSaaS(Software as a Service)やWebアプリケーションを利用したり、私物のスマートフォンやタブレットで業務を行ったりする行為を指している。こうした行為は、データ漏えいやコンプライアンス違反を招きやすいとして批判される傾向にある。だがビジネスユーザー側からすれば、「IT部門に依頼すると遅い」という不満が常に存在する。ビジネスのスピードは日々高速化しているにもかかわらず、もしIT部門の調達速度が数年前から一向に変わる気配を見せないのであれば、より速く、直接的に自分たちの課題にリーチしてくれる外部のサービスやBYOD(私物端末の業務利用)に頼りたくなるのも無理はない。
一方で、IT部門側にも変化の兆しが見えている。以前ならアウトソースで済ませていた業務アプリケーションの設計、構築、保守の一部を自らの手で行い始める企業が増えているのだ。特に、いわゆる“超高速開発ツール“と呼ばれるツールを導入し、スピードにこだわってアプリを内製するケースが目立つようになってきている。
こうした業務アプリケーションをめぐる業務部門/IT部門の双方の明らかな変化は何を物語っているのか。今回、ガートナー ジャパン リサーチ部門 アプリケーション開発 リサーチディレクター 片山治利氏に、国内企業の業務アプリケーションに対するアプローチの変化について聞いた。
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ユーザー企業の内製化
内製化トレンド、原因はシャドーIT
「シャドーITはなくなりません。むしろその傾向はますます強くなるでしょう」――IT部門にとっては、もしかしてあまり信じたくない頭の痛くなるような言葉かもしれない。しかし片山氏は、「IT部門に頼んでも、業務部門が満足するスピードで結果が返ってこないことに対する不満は多くの企業で顕在化しています。シャドーITは確かにIT部門の存在価値を脅かしていますが、本来、ビジネス側のニーズに応えるのがIT部門の役割なので、その役割を果たせていないとあれば、ビジネスユーザーが外部に目を向けるのは当然でしょう」と指摘する。
ではIT部門はシャドーITがはびこるのを黙って見ていればよいのかというと、やはりそこにはセキュリティの問題が必ず付きまとう。リスクは可能な限り小さくすべきだろう。そもそもIT部門のリソース調達スピードが改善しないからこそ、ビジネスユーザーはシャドーITに走る。IT部門が躍起になってシャドーITつぶしをしたところで問題の根源は残されたまま。たとえ一時的にシャドーITを一掃できても、すぐまた同じ状況に陥るのは火を見るより明らかだ。
ここで興味深いトレンドが生まれている。前述したようにアプリケーション開発の内製化を図る企業が国内でも増え始めているという現象だ。片山氏は「IT部門としての付加価値をどうやって業務部門に対して示していくか、ビジネスに対する具体的な貢献をいかに果たしていくべきか、徐々にではありますが、そういった危機意識を持ってITの変革に挑む企業が増えています。アプリケーションの内製化やそれに伴う超高速開発ツールへの関心の高まりは、IT部門による試行錯誤の表れともいえるでしょう。特に事業の差別化にかかわるようなアプリケーションに関しては、業務部門とIT部門が一緒に作り込んでいく必要があると認識し始めた企業も少なくありません」と説明する。シャドーITはむしろIT部門に起因する課題であり、今までのIT部門のやり方に対するアンチテーゼ、そう認識し始めた企業から、少しずつ変化が起きているのだ。
「ある食品会社のIT部門では、いかにして自分たちが会社に貢献できる存在になれるのか、といった視点であらためて業務を見直し、より上流工程にフォーカスしていくという選択をしました。業務部門と調整をしながら、ITの価値を反映させていくシステムを目指しています。もちろんそのアプローチにはツールの採用も含まれています」(片山氏)
実はIT部門がアプリケーション内製化や開発ツール採用に動く理由は、シャドーITだけではないと片山氏は指摘する。「IT部門を称していながら、開発や技術の世界から遠ざかってしまった現実に危機を感じている企業が現れています。本来、技術者集団であるべきIT部門が、実際にはベンダーと業務部門の調整役でしかないという状況はまずい、そう考えるようになってきたのでしょう」。ビジネスに貢献するITを実現するには、まずIT部門が本来の役割を認識する、そう考え始める企業が少しずつではあるが国内にも登場してきている。
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