ペットシッター分野の“Airbnb”と呼ばれるRover.comの事例
シェアリングエコノミー業界はデータ分析が命綱、データ駆動型改革のススメ
シェアリングエコノミービジネスにとって、データに基づいた意思決定はなぜ重要なのか。ドッグシッターのマッチングサービスRover.comの最高技術責任者(CTO)であるスコット・ポラド氏がその理由を説明する。
スコット・ポラド氏には、幼少期に犬を飼っていた経験もなければ、大人になるまで犬を飼ったこともなかった。だが現在、ポラド氏の生活は犬一色だ。正確に言えば、犬とデータ駆動型のイノベーションを、シェアリングエコノミーの世界にもたらすことがポラド氏の生活の中心になっている。
ポラド氏は、ドッグシッティング(ペットシッター)分野の“Airbnb”と呼ばれるRover.comで、最高技術責任者(CTO)として働いている。このポストに就いたのは、同氏が人生で初めて犬を飼ってから程ない約5年前のことだった。同氏が妻と記念日の旅行の計画を立てているときに、不意に思い至ったのだ。旅行中、犬の世話はどうすればよいのだろうかと。
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データサイエンスチームに求められる人材とは
「ペットの世話について考えなければならない経験はそれまで一度もなかった」とポラド氏は振り返る。その当時はウイットに富んだWebサイトを運営するCheezburgerのCTOとして働いていた。
犬の世話をどうすべきか友人に相談した後に、ある友人がRover.comを立ち上げようとしていることを知った。ポラド氏から見ても、そのアイデアは理にかなっていた。この記念日の旅行の間、同氏は犬を自分の兄弟に預けたが、その友人のアイデアは同氏の頭の中に深く根付いた。ポラド氏がRover.comに加わったのは、その2年後のことだった。
ドッグシッターのマッチングの鍵を握るのはアルゴリズム
ポラド氏は、CTOとして自分のチームと共に、犬の飼い主とドッグシッターを適切に引き合わせるアルゴリズムに取り組んだ。チームが利用したのは機械学習アルゴリズムだ。このアルゴリズムは、満足度が最も高く、頻繁に予約があり、安全に関わる問題の少ないドッグシッターを調べる。また、地理的な要素も考慮に入れる。それは、犬の飼い主が近場に住んでいるドッグシッターを希望することが多いためだ。
このアルゴリズムは、長い時間を掛けて犬の飼い主がドッグシッターに望むものを学習する。また、学習したことを利用して適切なドッグシッターを推薦するだけではなく、現在高い評価を得られていないドッグシッターにアドバイスを提供して、改善の手助けもしている。
「直感には頼れない。対処する要素が実に多様なためデータを当てにするしかない」とポラド氏は語る。
このアルゴリズムの開発と管理をするために、ポラド氏はさまざまな背景を持つ人材で構成されたチーム作るべく、新たに人材を雇用した。このデータサイエンスとエンジニアリングのチームを構成する25人の中には、コンピュータサイエンスや統計学のような従来通りの分野の出身者の他に、生物学や原子力工学の学位を持っている者もいる。
ポラド氏によれば、このアプローチを採用するメリットは問題に対してさまざまな見解を得られることだという。「異なる分野を背景とする者は、同じ問題に対して異なる見方をする。それが、データ駆動の改革につながる可能性がある。つまり、さまざまな考え方を出し合うことができるようになるのだ」(ポラド氏)
また、分析マネジャーの多くは、ビジネスの問題に精通したスタッフを好むが、ポラド氏は学界出身者を雇用している。重要なのは、科学的な物の見方をできる人物であることだ。Rover.comではこの方針が功を奏した。これは、同社が取り組んでいる「安心して利用できる依頼しやすいドッグシッターに犬の飼い主を引き合わせる」という問題の性質が科学的なアプローチに適していたことに起因する。データ駆動型マーケティングや、プロセスの自動化のような、分析を通じて追求する他の目標よりもずっと適していたのである。
ポラド氏とチームは、分析にPeriscope Dataの「Periscope」というツールを利用している。このツールを使用すると、ユーザーはSQLクエリを記述して、データダッシュボードを構築および共有できる。Periscopeは、Amazonのデータウェアハウス「Amazon Redshift」、オープンソースのデータベース「PostgreSQL」、顧客データベース「Zendesk」に接続している。データサイエンスの要素が濃い業務は、IPython Development Teamが開発したブラウザベースの「Python」ツールである「IPython Notebook」を利用している。
「必要があれば他のツールもサポートするつもりだ」とポラド氏は言う。例えば、Rover.comのテクノロジーチームは、過去にオープンソースの「R」プログラミング言語を使用していたことがある。だが、アナリストの求めるツールを何でもサポートする傾向に対しては、批判的だ。前職でそうしたアプローチを試したことがあるが、全員がそれぞれ独自のツールを使用していると共同作業が難しくなることが分かったからだ。
「物事の柔軟性がほとんどなくなった。自由が利かなくなるだけの場合が多かった」と以前オンライン薬局のDrugstore.comに勤めていた経験もあるポラド氏は話す。
分析の革新に向けた大勝負
ポラド氏とチームの手には多くの命運が懸かっている。ポラド氏によれば、シェアリングエコノミーのビジネスを展開する企業は、まだ顧客にサービスを提供する最善の方法を解明しようとしている段階にあるという。最善の方法の解明を特に難しくしている理由は、Rover.com、Uber、Airbnbが、いずれも顧客と直接やりとりしないからだ。企業ではなく、顧客が主に個別の契約者に対応する形になっている。そして、プラットフォームは、そのようなやりとりが円滑に行われ、優れたサービスが提供されることを保証する役割を担っている。
そのために分析が非常に重要になる。シェアリングエコノミーの企業は、顧客とやりとりした実際の経験に基づいて意思を決定することができない場合がある。だが、少なくとも手元にあるデータから多くのことを学べる。そうしたデータを活用するために、データ駆動の改革が必要になる。
「顧客との間で起こっていることをより正確に把握できる企業が勝ち残ることになるだろう」とポラド氏は自身の見解を語る。
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