なぜ日本の学校にITが必要なのか【後編】
なぜ学校は「タブレット」「無線LAN」の導入で満足してはいけないのか(3/3 ページ)
日本の教育IT活用、IT教育が目指すべきこと
なぜ日本の学校にITが必要なのか。連載の最後に、私が考える日本の教育IT活用やIT教育が目指すべき方向性を3つの段階に分けて述べる(図2)。
第1段階:授業用システムのプラットフォーム整備
日本の教育機関は現在、デバイスやネットワークを中心に、授業用システムの基盤を2020年までに整備しようとしている段階だ。いわば教育IT活用やIT教育の第1段階だといえるだろう。この段階でIT運用ノウハウを蓄積し、安定的な運用方法を確立することが重要だといえる。
第2段階:ITを活用したデジタル教材の充実
第2段階では、デジタル教科書を筆頭としたデジタル教材の活用を充実させる。それが実現できれば、日常の授業でのIT活用を通じてITリテラシーの向上を図り、かつ国語や算数といった基礎学力を向上させるための階段を一歩ずつ登ることができるだろう。学習履歴に基づく自動出題や動画学習など、紙の教科書やノートなどでは難しいITならではの学習を可能にするデジタル教材が充実すれば、より実践的で効率の良い学びが実現できるようになるはずだ。
第3段階:校務システムによるデータ解析・活用
第3段階は先の2段階とは異なり、特に教育IT活用の主役は授業用システムから校務システムへと移行する。この段階では、学習者の学力の習熟度を体系的に管理できる状態を目指す。加えて各学習者が目指す目標や実現したい進路と、学習者が過去に学んだ履歴との関連性を解析できるようにする。
こうした校務システム面の整備により、各学習者にどの分野を伸ばせば目標に近づけるかの指針を具体的に示しやすくなる。学習者の個性や特性に合わせて、得意科目をさらに伸ばす方がよいのか、苦手科目を一定レベルへ底上げする方がよいのかといった方向性を示すこともできるはずだ。きちんとした教育の履歴がそろうのであれば、それを解析して活用するのは、ITを使えばそれほど難しいことではない。
ここでいう教育の履歴とは、その学習者が学んできた全ての実績のことを指す。例えば学習者が小・中学校と高校の12年で積み上げた出欠状況はもちろん、小テストや中間・期末テスト、絵画、作文、体育の授業でできたチームプレイなど、さまざまな学びの記録だ。
こうした情報を各教育機関での進級や進学だけでなく、他校への転校の場合にも受け継ぎ、その情報を校務システムで解析できるような仕組みができれば、より個別の学習者に合った学力の向上やITリテラシーの向上の手段が提案できるようになるだろう。そして何より、学習者の夢や目標を実現するのにも有効だ。もしかしたら蓄積されたデータが、学習者自身でも気付かなかった特別な才能に気付かせてくれるかもしれない。
これら全てを実現すれば、政府の目標はもちろん、学習者の夢も全てかなう――そんな“都合のよい未来”は、無線LANやタブレット運用の段階で問題が山積している準備段階にとどまる現状を見ると、さすがに夢物語に見えるかもしれない。だが1つの方向性として、上に示した3段階を全てクリアできれば、このような“バラ色の未来”が待っている可能性は十分にある。
事の成否は当然ながら分からない。だが、せっかく全国3万校を超える小・中学校や高校にITを導入するという大事業を展開するのであれば、これくらいの壮大な将来像を持つべきだろうと筆者は考える。
繰り返しになるが、現在の日本は資源に恵まれた国ではない。少子高齢化が叫ばれながら対策も十分に進んでいない。人口、特に労働力人口(働く意思を持った15歳以上の人口)の減少で、世界での日本の位置付けは、ほとんどの分野で今後も下降線となってしまうだろう。ここは再び原点に帰って教育に注力し、日本の復活を期待したい。教育機関のIT活用やIT教育は、その重要な手段となり得るはずだ。
明治維新、第二次世界大戦後の復興/成長と、日本は奇跡的な成長を繰り返し果たしてきた。日本が起こす“次の奇跡”が、教育IT活用やIT教育によってもたらされることを期待してやまない。
執筆者紹介
武田一城(たけだ かずしろ) 日立ソリューションズ
情報セキュリティ、システムプラットフォーム、オープンソースなどさまざまな分野のマーケティング業務に従事。現在は特に学校IT分野における市場調査や企画に重点的に携わる。2011年より日本PostgreSQLユーザ会の理事を兼務し、代表的なオープンソースデータベース「PostgreSQL」の普及啓発活動も行っている。
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なぜ日本の学校にITが必要なのか
日本の教育機関が今、IT活用やIT教育への注力を迫られているのはなぜなのか。海外の動向にも触れながら、その背景を探る。
この記事の著者
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