【連載コラム】医療ITの現場から
医療従事者が喜ぶ、マニュアルいらずで直感的なシステム開発のコツ
医療現場のスタッフ指導の場面では、多忙のためにマニュアルを作れなかったり、そもそも使わなかったりするケースが多い。この医療現場ならではの課題の中に、システム開発のヒントが隠れているのではないだろうか。
電子カルテの導入や運用支援などで診療所に訪問すると、「医療現場はマニュアルレス」であることに気付きます。診療所におけるスタッフ指導では、先輩スタッフが手本を見せ、後輩スタッフがそれをまねしていく方法を選ぶケースは少なくありません。そのため診療所では、新人研修や新人育成のためのマニュアルをあまり見掛けません。こうしたマニュアルをあまり活用しない文化に、医療現場向けのシステム開発のヒントがあるのではないのでしょうか。
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慌しくてマニュアルに目を通せない人たち
電子カルテや診療予約システムなどのシステムを新規に導入する場合は、ベンダーはユーザー組織に操作研修を実施します。この時、スタッフは研修内容を忘れないようにと、個人個人でメモを取ります。ノートに書き込むスタッフもいれば、メモ用紙に書き込むスタッフもいます。ただし、これらのメモを診療所全体で取りまとめることは少ないようです。従って、研修内容を踏まえたクリニック独自の操作マニュアルを作ることもないようです。
医療の現場では、医師、看護師、受付スタッフは常に慌ただしく動いており、ゆっくりとマニュアルに目を通す余裕がありません。さらに各自が過去の経験を頼りに、体に染み付いた技術(ノウハウ)をもとに業務を遂行しているため、診療所で独自に操作マニュアルを作るという発想が生まれなかったのでしょう。
開発ヒント(1):マニュアルが必要ないシンプルなUI
医療現場向けにシステムを開発する際、マニュアルレスという発想は非常に重要です。医療現場で受け入れてもらうためには、マニュアルを必要としないほどにシンプルで直感的なユーザーインタフェース(UI)の設計を心掛けることが大切です。さらに、既に世の中で普及しているソフトウェアと操作が似ていることが、操作の直感性に大きく影響します。例えば「『Microsoft Excel』のような操作性」を実現したソフトであれば、Microsoft Excelを使いこなすことができるスタッフは、その応用としてすぐに利用することが可能でしょう。
開発ヒント(2):操作を忘れても思い出しやすい構造
前述のように、マニュアルをゆっくりと見ることが難しい医療現場では、システムの操作方法を忘れてしまった場合、大抵のスタッフは「勘を頼りに思い出す」「周囲のスタッフに聞く」という行動を取ります。ここにも開発のヒントがあります。
医療向けシステムは「操作を簡単に思い出すことができる」という構造が大切です。例えば次のような、エンドユーザーへの配慮が必要です。
- 操作ボタンはできるだけ1カ所にまとめる
- 操作のガイドラインを表示する
- 業務の流れに合わせた操作手順を組む
システム上の合理性が現場では非合理になることも少なくありません。いかに現場目線でシステムを開発できるかが重要です。そのためには、リリース前にシステムを試用するモニターを募り、自由に触ってもらうことが有効です。医療従事者の使用体験が、操作を思い出しやすい構造の実現につながります。
開発ヒント(3):操作量を極力少なくする工夫
操作量が少なければ少ないほど良いシステムといえます。そのためには、マウスのクリック数などを減らすだけでなく、システム同士の連係にも考慮する必要があります。
例えば再来受付機を電子カルテと連係することで、患者IDの入力が不要になります。これにより受付業務の効率化を図るとともに、ID入力の間違いによる患者の取り違えを防止することもできます。IDを入力するという行為を省くことで大きな効果が得られるのです。
電子カルテと画像ファイリングシステムが連係していれば、2つのシステムを同時に操作することもできます。この連動による操作量の減少は、医療現場を楽にする重要なポイントです。
医療従事者が楽にならないシステムは普及しない
多くの医療向けシステムが雨後の筍のように発売されます。しかし実際に現場で受け入れられ、定着するものはごくわずかです。システムを定着・普及させるためには「導入のメリットは明確か」という経営層の問いに応えるだけでなく、「そのシステムは現場のスタッフを楽にするか」「現場のスタッフが利用しやすいものか」という現場の問いにも応える必要があります。この「楽になる」という視点は、業務の軽減や効率化を意味し、「利用しやすい」という視点は、シンプルで直感的な操作性を意味しています。
医療向けのシステム開発は、「楽になる」「利用しやすい」という2つの条件をクリアした上で、いかにオリジナリティー(他社との差別化)を発揮できるかを考えていただきたいものです。
著者紹介
大西大輔(おおにし・だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2013年医師の右腕を育成する「電子カルテクラーク導入プログラム」をプロデュース。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
医療関連商品カタログ「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医院・クリニックのオフィシャルホームページ制作システム「Wevery!」
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