【連載コラム】医療ITの現場から
医療業界のIT化を加速する「APIエコノミー」、医療業界特有の商流に風穴を開けるか
日医標準レセプトソフト(ORCA)と電子カルテの連係を筆頭に、医療IT業界にもAPIのサービス連係が普及しつつある。この仕組みは医療ITの普及と地域包括ケアシステムの実現を後押しするかもしれない。その理由は。
近年、クラウドコンピューティング(以下クラウド)の普及とともに、医療現場でもAPI(Application Programming Interface)という言葉を耳にするようになってきました。APIとは、コンピュータプログラムの機能や管理するデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約のことです。個々のソフトウェア開発者が、毎回全ての機能を一から開発するには手間がかかりますが、APIが提供されている機能であれば独自に開発する必要はありません。APIを利用すれば、自分で一からプログラミングすることなく、効率的にソフトウェア開発をすることが可能になります。
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APIによってつながり、自動化していく社会
例えば「Googleマップ」のAPIを活用したさまざまなサービスを各社が提供しています。空前の大ヒットとなったAR(拡張現実)ゲーム「Pokemon GO」もこのAPIを活用した事例です。このようにわれわれの身近でも、「既に存在するサービスを活用して開発する」という考え方が普及しつつあります。APIが普及することで、さまざまな企業が自社の保有するプログラム(サービス)をAPIでアクセスできるように公開し、システム同士が相互につながり合い、組織を超えて自動化していく社会が生まれようとしています。
地域包括ケアシステムでつながる社会
医療業界では「地域包括ケアシステムの普及」を国家目標として掲げています。この地域包括ケアシステムを全国に普及するため、補助金や診療報酬点数による評価を行っています。今後は医療と介護のシステムが相互につながることによって、情報共有が進み、効率的な情報連係、サービスの質の向上が進むでしょう。
また、医療業界にAPIという考え方が進むことで、医療情報システムを開発している企業がAPIを公開し合い、システム間の連係が容易になり、スムーズな情報共有、情報蓄積、そしてビッグデータの活用が進むと予想します。
レセコンのAPI公開の意味
では、医療情報システムで最も普及が進んでいるレセプトコンピュータ(以下、レセコン)を例に、API公開の意味を考えてみましょう。
レセコンは、医事会計システムとも呼ばれ、主に診療報酬明細書(レセプト)を作成するために開発されたシステムです。このシステムは、原則として2年に1回の診療報酬改定に合わせたプログラムの更新や、毎月の新薬の追加などが必要であるため、開発に多くの手間とコストが掛かってきました。そのような中で、日本医師会がレセコンソフト「日医標準レセプトソフト(ORCA)」をオープンソースソフトウェア(OSS)として公開したことにより、レセコン開発をしなくても電子カルテの開発が可能になりました。従来、診療所のような小規模施設向けの製品では、電子カルテとレセコンは同一ベンダーが開発するのが一般的であり、別々のベンダーの電子カルテとレセコンを接続するのは困難だと見なされてきました。ORCAはこの医療業界独特の「システム間連係が難しい」という開発習慣に風穴を開けたのです。レセコン大手が独占していた市場に風穴を開けた結果、多くのベンチャー企業などが電子カルテの開発をするようになり、現在では、ORCAと連係する電子カルテは30社を超えています。
参考
日医標準レセプトソフト(ORCA)連係電子カルテと接続システムのリンク集(ORCAプロジェクトのWebサイト)
電子カルテ以外にもさまざまなシステムとの連係が進み、クラウドによるAPIの公開で、連携ソフトはさらに増加するでしょう。
APIは医療業界特有の「商流」や「料金形態」に変化をもたらすか
APIを「システム同士をつなぐための接着剤のようなもの」と考えると、医療業界においてさまざまなチャンスが生まれるだろうと容易に想像できます。先に挙げた「地域包括ケアシステム」においても、APIの利用は大きな効果をもたらすでしょう。
医療や介護における「つながる社会」を実現するために、各企業は積極的にAPIの公開をしていく必要があります。そのためには、医療業界特有の「商流」や「料金形態」などクリアすべき課題が多くありますが、そのような既成概念に捉われていては、世の中の急速な変化には対応できません。企業や業界がいつどのような形で変化するのか、これからの数年、「医療のIT化」は大きな変革を迎えようとしています。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2013年医師の右腕を育成する「電子カルテクラーク導入プログラム」をプロデュース。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
医療関連商品カタログ「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医院・クリニックのオフィシャルホームページ制作システム「Wevery!」
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