開発環境も「所有」から「消費」へ
IBMのクラウド戦略、開発リソースのエコシステムでSIパートナーの“窮地”を救えるか(1/2 ページ)
IBMは「SoftLayer」「Bluemix」「Bluemix API」の提供でクラウド市場での存在感を強く打ち出している。これらのサービスは、パートナー企業の提案力の強化にどのように貢献するのか?
IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)事業への傾注、コグニティブコンピューティング「Watson」のサービス化、そしてx86サーバビジネスの売却と、ここ数年の間で矢継ぎ早に新たなビジネス機軸を打ち出してきたIBM。そんな同社のパートナービジネスは、今後どのような方向へ向かうのだろうか。
日本IBMにおいてクラウドビジネスのパートナープログラムを統括する、クラウド事業統括担当部長の及川 充氏に話を聞いた。
注
「ディストリビューター」「リセラー」という言葉の厳密な定義付けはないが、本稿では次のように位置付けている。
- ディストリビューター:幅広いベンダーから仕入れたIT商材を自社在庫として保有し、小売業者やユーザー企業に販売する卸業者。大規模な拡販、流通の役割に軸足を置く事業者。
- リセラー: IT商材をベンダー、ディストリビューターなどから仕入れ、ユーザー企業に販売する、大規模な流通経路は持たない事業者。仕入れた商材をそのまま販売するのではなく、他のシステムと組み合わせたり機能を追加したりして付加価値を高めて販売するリセラーはVAR(付加価値再販業者)という。
パートナービジネスモデルも「所有から利用へ」
IBMは今、ビジネス戦略の転換に取り組んでいる。これまでも同社は、IT業界の潮流の変化をいち早く読み取り、他社に先駆けて大胆な戦略転換を打ち出してきた。そんなIBMが注力する分野の1つがクラウドだ。2013年に大手パブリッククラウドベンダーのSoftLayerを買収し、自社のIaaS事業として提供を始めた。また2014年にはPaaS「Bluemix」の提供も開始し、クラウド分野への存在感を強く打ち出している。
こうした流れを受けて、IBMのパートナー戦略も変化しつつある。2016年2月に米国で開催したパートナー向けイベント「IBM PartnerWorld Leadership Conference(IBM PWLC) 2016」において、同社は2017年からパートナープログラムを刷新すると発表している。果たしてIBMはこれから、現状のパートナービジネスをどのような姿へ変えていこうとしているのか。及川氏は、これを理解するためのキーワードとして「トランザクション(取引)」と「コンサンプション(消費)」を挙げる。
「クラウドの台頭によって、ITの世界では『所有から利用へ』という流れが加速している。これに伴ってITのビジネスモデルも、製品やサービスを一括販売する『トランザクションモデル』ではなく、継続して利用していただく『コンサンプションモデル』への転換が進んでいる。日本IBMでは、SoftLayerやBluemixといったプラットフォームを通じて、パートナーがこの新たな市場にスムーズに参入できるお手伝いをしたい」(及川氏)
クラウドビジネスの提案力強化のための支援策
IBMのパートナー支援プログラム「IBM PartnerWorld プログラム」に登録しているパートナーは、日本国内だけでも5000社を超える。それぞれのパートナーの企業規模や業態はさまざまだが、それぞれ得意とする技術分野や、これまでのビジネス実績などに応じて、日本IBMから技術サポートや販売・マーケティング活動に役立つさまざまな情報やトレーニングが提供される。
これらのうち、特にクラウド分野にフォーカスしたパートナー企業の数は、現時点(2016年3月)でSoftLayerが約150社、Bluemixが約50社だ。その数は急速に増えつつあるという。
「これまで長らくIBMのハードウェア製品を取り扱っていただいていたパートナーにとっても、徐々にクラウドサービスの販売提案が実績につながるようになってきた。これまではどちらかというと、SoftLayerやBluemixのビジネスメリットをパートナーに周知いただく準備期間だったが、それがようやく終わり、これからはクラウドサービスがパートナーの提案の中心になるのではないかと見ている」(及川氏)
ユーザーのやりたいことを「Bluemix API」はどのように支援するのか
ではIBMのパートナーは、SoftLayerやBluemixを使って、具体的にどのようなビジネスをユーザーに提案できるのか。ここでポイントになるのがAPIだ。
IBMが提供するクラウドプラットフォームは、3階層に分かれている。最下層には、IaaSのSoftLayerがあり、中間層にPaaSのBluemixが載っている。BluemixのルーツはオープンソースプロジェクトのPaaS「Cloud Foundry」である。だからこそBluemixには、IBM独自のミドルウェアや開発言語でユーザーを囲い込むという思想はなく、世で広く使われているオープン技術を網羅した開発環境を実現している。例えば「Ruby on Rails」や「Node.js」「MySQL」といった開発環境だ。その上でIBMがBluemixのために用意したさまざまなサービス群をアプリケーションに組み込むことにより、オープン技術をベースに迅速なWebアプリケーション開発を可能にしている。
さらに、Bluemixの上層に用意されているのが、「Bluemix API」というSaaSだ。ここにはWebアプリケーションを構成するためのさまざまな機能がAPIとして公開されており、これらを組み合わせることで「まるでレゴブロックを組み立てるようにアプリケーションを簡単に開発できる」(及川氏)という。
「例えばIoTのアプリケーションを開発しようとするとき、センサーのデータをゲートウェイを通じて送り、ブローカーで制御し、データソースに溜めて、そしてアナリティクスシステムで分析する、といったように機能の組み合わせでシステムを設計する。これらの開発環境を1社のサービスだけでカバーするのは極めて困難だが、Bluemix APIにはそれぞれの機能を得意とするベンダーが、自社ソフトウェアの機能をAPIとして公開している。数としては既に140以上のAPIが登録されている。この豊富なAPIのリソースを、自分たちのやりたいことや作りたいものに応じて組み合わせていくだけでいい。API一つ一つの機能は限定的であっても、豊富な選択肢の中から組み合わせれば機能を補完し合うことができ、革新的なソリューションを迅速に立ち上げることができる」
ちなみに、Bluemixはパブリッククラウドサービスとしてだけでなく、プライベートクラウドもしくはオンプレミス環境でも利用できる。こうしたハイブリッドな運用が可能なPaaSも、現在のところBluemix以外にはほとんど存在しないという。
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