フィリップスはブロックチェーンの開発研究所を設立
大手企業が熱い視線を注ぐ、医療分野のブロックチェーンの“光と影”(2/2 ページ)
セキュリティは保証されているが、大部分で規定が必要
最近、香港のビットコイン為替両替所のBitfinexがハッキング攻撃を受け、約720億ドル相当のビットコインが奪われた。これに関して、「ハッキングされたのはブロックチェーンではなく、その上に配置された両替用アプリケーションだ」とブラント氏は指摘する。
その一方で、Deloitte Consultingでテクノロジー部門の責任者を務めるビル・ブリッグス氏は次のように危惧している。「最終的にブロックチェーンは医療分野で幅広く導入されるだろう。しかし、ブロックチェーンのセキュリティは、チェーンのノードの大半を制御するエンティティによって侵害される恐れがある」
「そのエコシステムを管理するための予防措置を講じる方法が問題だ。これには、技術的な意味とガバナンスの意味の両方がある」(ブリッグス氏)
ニコル氏やブラント氏を含むブロックチェーン識者や開発者にとって、ブロックチェーンをストレージや相互運用の基準として命じる役割だけなら、医療分野のブロックチェーンに関与して大掛かりに働きかけなければならないのは政府だ。
さらに、現在は競争でこう着状態にあり、システム内の健康データの共有に反対する大半の医療プロバイダーやEHRベンダーも、ブロックチェーンの使用に同意しなければならない。Deloitteの最近のレポートによれば、金融業界では、世界最大級の銀行42行で構成されるコンソーシアムが、そのような合意を模索しているという。
包括的な医療記録に向けて
設立から1年程度のブロックチェーン関連新興企業には10億ドルを上回るベンチャー投資が行われた。ブロックチェーンベンダーのFactomもその投資を受けた企業の1社だ。同社は最近、クラウド医療記録サービスプロバイダーのHealthNauticaとの契約を結んだところだ。
Factomは、世界最大級となる5300個のノード(サーバ)で構成される既存のビットコインブロックチェーンや従来の企業ネットワークへのリンクを使用している。
HealthNauticaとの契約は、Factomが帯域幅機能を開発しているため、まだ発展途上にあると同社の上級幹部は語る。HealthNauticaとの契約では、Factomのブロックチェーンテクノロジーが医療記録とHealthNauticaの医師顧客や病院顧客の請求を確認してタイムスタンプを設定するようになるという。
Factom創立者のポール・スノウ氏は、次のように主張している。「ブロックチェーンは、念願の長期医療記録を初めて可能にし得る存在だ。それは患者があらゆる場所で幼少期から老齢期までに受けた治療における、全ての症状の発現の医療記録を含む。この機能によって医療ミスは大幅に減って治療の質が向上するだけでなく、個人が自身の医療記録を完全に管理できるようになる。ブロックチェーンによって利用可能な全ての医療情報が迅速かつ効率的なやり方で評価されるようになり、命が救えるようになることには疑いの余地がない」
誇大広告をかきわけて進むONC
ブロックチェーンに対する一般的な批判の1つは、あまりに多くのコンピューティングリソースを消費するため、複雑で高価なものになるという懸念だ。
「ブロックチェーンに対応するためのコンピューティングインフラは既に存在している」とブラント氏は反論する。
ブラント氏によれば、そのインフラとはビットコインネットワークだという。
ブロックチェーン戦略に関与しているONC当局の担当者は、全ての提案の評価をまだ終えていなかったため、次のように背景を説明している。「このプロジェクトの目的は、過剰な宣伝文句を抜きにして、医療分野のブロックチェーンの位置付けを解明することだ」
この事業に近しいONC当局担当者の1人は次のように明かす。「医療分野のブロックチェーンの発展は非常に不安定なため、ONCは“レベルの設定”に取り組み、最も関心が集まっている部分はどこかを確認する試みについて考えている」
さらに、同局員は政府の観点から次のように話している。「ブロックチェーンは、医療データのプライバシー、セキュリティ、追跡、整合性を前進させるという面では、非常に高い可能性を秘めている」
「連邦医療IT当局がEHRに対して取ったスタンスと同様に、ONCは政府ではなく民間企業がブロックチェーンテクノロジーを進化させることを期待している」(ONC当局員)
医療分野におけるブロックチェーンの評価を最初に行ったのは米国政府ではない。英国、オーストラリア、エストニアの政府は、このテクノロジーに対して相当な介入を行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
AIで人を減らした企業がもう心変わり 「AIブーメラン現象」の実態
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー