対策は進んでいるがやっぱりヒヤヒヤ
全く気を抜けないビットコインのセキュリティ事情
ビットコイン取引所は成熟しつつあるが、セキュリティの問題が依然として残っている。普及団体のBitcoin Foundationはこの問題をめぐり、良いニュースと悪いニュースの両方を紹介している。
ビットコインとその取引所は成熟しつつあるが、この暗号通貨をめぐっては依然セキュリティのリスクが懸念されている。
国際プライバシープロフェッショナル協会(IAPP)とクラウドセキュリティアライアンス(CSA)が2014年9月17日~19日(米国時間)にカリフォルニア州サンノゼで共同開催したカンファレンス「IAPP Privacy Academy and CSA Congress 2014」では、ビットコインの普及に取り組む非営利団体Bitcoin Foundationの法律顧問を務めるパトリック・マーク氏と、法律事務所Steptoe & Johnsonのパートナー弁護士であるジェイソン・ワインスタイン氏が講演し、ビットコインに今なお存在しているリスクや、ビットコインのセキュリティを強化する新技術について語った。
ビットコイン取引は匿名じゃない
マーク氏は冒頭に、「そもそもビットコインは暗号技術を応用して開発されたものだ」と、語った。ビットコインの取引は所有者だけが知る秘密鍵によって保護されている。ビットコイン所有者は取引の署名や認証に、必ず自身の秘密鍵を使う必要がある。
だが、「ビットコイン取引は匿名である」というのは完全な誤解だと同氏は強調する。「ビットコインを使用する際の匿名性は、Webを閲覧するときの匿名性と同程度だ。大まかに言えば、ビットコイン取引は全て世界規模の公開台帳に記録されているので、特定の取引に関するデータとその他のデータとの相互関係を明らかにできる」(マーク氏)。
それは例えるなら、1ドル紙幣が使われるたびに公開台帳にシリアル番号が記録されているようなものだという。「少し手間は掛かるだろうが、『私があなたに渡した1ドル紙幣がどれか』を特定することはできる」とワインスタイン氏は断言する。その1ドル紙幣のシリアル番号は確実に記録され、世界中の人が見ることができるというのだ。
また、ビットコインの秘密鍵のセキュリティをめぐる問題も懸念される。秘密鍵はビットコインの不正使用を防ぐためのものだ。ワインスタイン氏は「この暗号技術のおかげで、ビットコインの偽造は非常に難しく、ほぼ不可能だ」と語る。そして、狙われる危険があるのは秘密鍵そのものであると指摘する。
例えば、インターネットに接続されたノートPCやクラウドにビットコインの秘密鍵を保存するのは、「システムに侵入して秘密鍵を盗み、不正なビットコイン取引を実行しようという動機を誰かに与えているも同然」(マーク氏)ということになる。
ビットコインは米連邦預金保険公社(FDIC)の保証対象にはならない。クレジットカード会社や銀行がユーザーを不正取引から守ってくれるわけでもない。ゆえに、ビットコイン所有者には、いったん盗まれた資金を取り戻すすべはないのだという。
ビットコイン向けのセキュリティ新製品
だがマーク氏によれば、ハードウェアベースのビットコイン用のウォレット(財布)や金庫など、秘密鍵を安全に保管するためのソリューションも各種提供されるようになってきている。同氏はそうしたビットコイン金庫の1例として、チェコのSatoshiLabsが提供するUSBデバイス「Trezor」を挙げた。Trezorはエアギャップ(物理遮断技術)によって外部ネットワークから物理的に隔離されており、ビットコイン取引の承認をオフラインで行う。
「秘密鍵を使って取引に署名するプロセスは全てデバイス上で行われる。TrezorにアクセスするにはPIN番号が必要であり、TrezorをノートPCに接続しなければ、ビットコイン取引には署名できない。Trezorをハッキングするのは不可能だ。誰もTrezorにはアクセスできないし、マルウェアもTrezorを攻撃できない。Trezorは決してオンラインにはならないからだ」と、マーク氏は説明する。
マーク氏によれば、ビットコインのセキュリティに関するもう1つの朗報は、ビットコイン取引所の成熟度が増し、職業化が進んでいることだという。以前であれば、16歳の少年が自らビットコイン取引所を開設するもハッキングに遭って6万ビットコインを失うといったことが普通に起きていた。だが今では、銀行のコンプライアンス担当者から支払いサービス業者のセキュリティ専門家まで、より経験豊富なプロフェッショナルがビットコインサービスを手掛けるようになってきたという。
「ハッキング攻撃やビットコインの消失など、ここ数年はさまざまなトラブルがあったが、今ではそうした問題も大幅に軽減されている」と、マーク氏は語る。
それでも、ビットコインのセキュリティをめぐる問題は消えたわけではない。情報セキュリティに特化したSIサービスを手掛ける米Dell SecureWorksが2014年8月に発表した報告書によると、正体不明の何者かが、ビットコイン採掘者(※)の接続をハッカーが制御するマイニングプール(ビットコインの共同採掘サイト)に繰り返しリダイレクトし、総額8万3000ドルものビットコインを横取りしていたことが分かったという。このハッキングの実行者は、ボーダーゲートウェイプロトコル(BGP)の脆弱性を利用して接続を乗っ取っていた。BGPは、異なるネットワーク間でルーティング情報を交換するために使われるプロトコルだ。
※ビットコインの「採掘(マイニング)」とはビットコイン取引の認証作業(ハッシュ値計算)を行うことであり、「採掘者(マイナー)」には作業の報酬が支払われる。
この脆弱性がアップデートで修正されたかどうか、大手のビットコイン取引所がこの脆弱性にどう対処しているかについて、マーク氏は把握していないという。だが同氏によれば、ビットコインの成長と成熟が進む中、今後も各種の課題やセキュリティ上の懸念がなくなることはなさそうだ。「こうした問題は常に湧き上がってくるものだ。問題を1つ解決すると、またすぐに新たな問題が浮上する」と、同氏は語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ファインディ株式会社] AI利用率だけでは説明できない成果 開発組織の競争力を生む「開発資本」とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] AI活用を成功へ導く、シンプルで費用対効果に優れたクラウド基盤とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] マネージドKubernetesには限界も――メリットをフル活用する新たな選択肢とは? -
技術文書・技術解説
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] 決断の日が迫る「vSphere 8」サポート終了問題 考慮すべきリスクと選択肢は? -
製品資料
[サイバーソリューションズ株式会社] メール誤送信対策のルールが肥大化 苦しむ情シスはどうすれば救われるのか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
3
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
4
Copilot導入で陥る“目的化”の落とし穴 定着の鍵は「作り込まない」こと
-
5
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
6
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
7
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
8
祝10周年! 創業者も予想できなかったRaspberry Pi活用例
-
9
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
10
「IoT通信環境の構築・運用」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
4
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
7
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
10
マンガで学ぶXDR/MDRのメリット、中小企業のセキュリティ強化になぜ有効か?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー