各サービスの主導権争いが激化
Starbucks「財布を持たない未来」とモバイル決済の今後
Starbucksがモバイル決済企業Squareと手を組んだ。「財布を持たない世界」の主導権をめぐる争いが激しくなるのは確実だ。
財布を持たない未来とCIO、エンタープライズコンピューティングとはどのような関係があるのか。私は自分の昔を思い出しながら、そのことを考えていた。20世紀に10代だった私が夏の間働いていた米国メーン州の日用品店のなじみ客は、誰も財布を持っていなかった。私の家族は持っていたが、それは私たちが夏の間だけの住人で、そのことを知らなかったからだ。
パンを1斤とか、新聞紙に包んだゆでたロブスターを家族の集まりのためにと買い求めていく町の人たち(革命戦争前からあるこの町にとっての有力者)は単に、「つけておいて」と言うだけだった。私は、町の300世帯ほどの住民の名前と顔、そして、つけが効く人とあまり効かない人を覚えておくか、さもなければ気の短い店長に名前を尋ねなければならなかった。当時はそんな時代だったそして間もなく、21世紀の初めにそのためのアプリケーションが登場する。
米Starbucksはこのほど、Twitter創業者のジャック・ドーシー氏が3年前に設立したモバイル決済企業Squareと組んで、既に成功を収めているモバイル決済アプリを新たな段階に引き上げる発表を行った。
この仕組みではまず、モバイル決済を採用している他の店と同じように、スキムラテとスコーンを買うために携帯電話を見せることになる。だが、StarbucksがSquareの位置情報技術を導入すれば、私のiPhoneがカウンターのレジ係に、来店客はリンダ・トゥッチというイタリア系の名の女性だと告げ、私の名前と顔写真が画面に表示される。私がその写真に一致すれば、レジ係は私の支払いをつけにしてくれる。しかも、店やバックエンドシステムから月末に請求書が送られてくることはない。決済は自動的に済んでいるのだ。
Squareと組むというStarbucksの決断が米国の決済業界にとって大きな意味を持つことは間違いない。米ビジネスメディア、Fast Companyのサラ・ケスラー氏が指摘した通り、Starbucksは、Androidの王者Googleや、オンライン決済大手PayPal、あるいはAT&TとT-Mobile、Verizon Wireless連合が設立したモバイル決済企業のIsisを選ぶこともできたはずだ。
しかしStarbucksの考えは違った。そしてこのSquareとの提携話を黙って見ている者もいなかったようだ。米経済紙、Wall Street Journalの報道によれば、Wal-MartやTargetなどの米小売り大手は自分たちのモバイル決済手段となる「Merchant Customer Exchange」(MCX)を結成している。財布を持たない世界の主導権をどこが握るのかは今後明らかになるだろう。そしてその主導権争いが、今の私たちの財布の中身をめぐる争いと同じくらい激しくなるのは確実だ。
行きつけの店のクレジットカードがたくさん入った財布を誰もが持ち歩いていた時代は、そう昔のことではない。こうしたカードは数が減り、あるいは姿を変えて、店が発行するMasterCardやVisaになった。あるいは、私のような客は、20%の割引を受けるために時折退会して再入会し、用が済むとまた退会したりする。
スマートデバイスのセキュリティ対策についての記事
あるCIOは先日、「誰かが何かを購入する方法をコントロールできれば、多くのものをコントロールできる」と話してくれた。この人物は大手信用組合のCIOで、決済市場への新規参入者に大きな不安を感じているはずだ。しかし彼にとって最大の懸念は、モバイル端末を通じてしか取引相手のことを知りたくない、自分のことも知られたくない、という客の投げ掛ける課題に、自分の会社、そしてさまざまな業界のエンタープライズコンピューティングがどう対応するかだという。
「われわれにその準備はできていないし、準備できている企業も多くはない」とこのCIOは言う。もう1つはっきりさせるべき点として、彼自身も含め、モバイル端末を通じた関係のみを望む人たちにとっては、即座に欲求が満たされることが大切だという。それができないと不満を感じる。
さあ、誰もがあなたの名前(と顔)を知っている世界へようこそ。
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