kintone cafe、JAWS-UGに積極参加
ヤマハ発動機がコールセンターをクラウド化、成功の秘訣はコミュニティー活動にあり(2/2 ページ)
コールセンターをクラウド化したヤマハの目的とは
ヤマハ発動機は近年、各種クラウドサービスの導入に積極的なだけでなく、浜松でのkintone Cafeの開催を強く後押ししてきた他、AWSのユーザー会「JAWS-UG磐田」にもコアメンバーとして名を連ねるなど、コミュニティーの形成や情報発信に力を入れてきた。その目的と真意を聞き出すため、kintone Cafeの数日後、同社の敷地内にある展示スペース「コミュニケーションプラザ」を訪ねた。迎えてくれたのはヤマハ発動機の原子 拓氏や、同社のITサービスを支えるヤマハモーターソリューションで先端的な取り組みをしている面々だ。浜松地域の産業振興支援を図る団体、浜松地域イノベーション推進機構の西野直也氏も同席。まずはコールセンターをクラウド化した経緯と狙いについて聞いた。
ヤマハ発動機のコールセンターは大きく2つに分けられる。1つは販売店や卸売業者からの注文や問い合わせを受け付けるためのコールセンター、もう1つはヤマハ発動機の製品ユーザーからの問い合わせに応えるためのコールセンターだ。今回クラウド化したのは前者のシステムである。
従来はいずれも、一般的なコールセンター同様にPBXを設置して運用していた。「IP-PBX化しても、フロントシステムをPC化しても、機器を運用し、定期的に更新するという作業からは逃れられなかった」と話す原子氏。クラウドPBX採用の大きな目的は、機器の保守運用、更新業務をなくすためだった。しかしそれだけでは、仮想デスクトップを用意した理由が説明できない。その点について問うと、災害対策以外にも業界ならではの興味深い課題を聞くことができた。
販売店や卸売業者からの問い合わせの中には、ベテラン技術者でなければ答えられないような内容も珍しくない。しかし団塊の世代の定年退職によって、知見を持った技術者が減ってきているという。「知見のある人に定年退職後も仕事をしてもらえるよう、嘱託社員や契約社員として、在宅でコールセンター業務に当たってもらうことを視野に入れています」(原子氏)
仮想デスクトップなら問い合わせ内容などの業務情報が端末に残らないので、在宅でも安心して使ってもらえる。また在宅での問い合わせ対応が可能になれば、育児や介護でフルタイムの出勤が難しい人材の活用も可能になる。PBX、フロントシステム、デスクトップをクラウド化したからこそ実現する構想だ。
業務のスピードを速めるために、クラウドとコミュニティーが不可欠
一方で、企業としてクラウドを活用するだけではなく、地域のクラウドコミュニティーを先導する理由はどこにあるのだろうか。
「ベンダーから情報を引き出してものづくりやセキュリティ対策をしてきたオンプレミスの時代とは、情報の流れ方が大きく変わりました。クラウドではユーザー発信の情報の方が早いケースが多く、面白いものも多いのです」(ヤマハモーターソリューション 伊藤秀樹氏)
オンプレミスの場合はベンダーから情報をもらうケースが一般的だ。カスタマイズの際も、ベンダーに要望を伝えてバージョンアップ時に組み込まれるのを待つ。クラウドサービスはオンプレミスに比べてアップデートの頻度が多く、同じようなトライアルをしているユーザー企業同士の情報共有も頻繁だ。
「地域に育ててもらった企業として、地域に貢献するという面もない訳ではありません。継続してコミュニティー活動を続けていれば、いずれ地域に返ってくるものがあるはずです。コミュニティーが育ってクラウドを活用する環境が整ってくれば、ビジネスの面でも潤ってくるでしょう」(原子氏)
率先してクラウドを活用することで、先進的なトライ&エラーの情報を地域に提供していく。地域のクラウドコミュニティーはそのフィードバックを受け止めてくれる場所であり、集合知として解決策を共有して、その先にあるそれぞれのコアビジネスのスピードを上げていくための場でもあるという。
静岡県は、自治体としていち早くオープンデータ(自治体が保有する公開データ)のカタログを公開した県でもある。ユーザー企業のコミュニティー活動が根付きやすい下地もあったのかもしれない。オープンデータ関連の動きも活発で、ヤマハ発動機も非営利のオンライン地図プロジェクト「OpenStreetMap」の地図データを使ったツーリングアプリケーションや燃費記録アプリケーションを提供している。
これらのアプリケーションはインフラに、モバイルアプリケーションの開発や運用に必要なサーバ機能をサービスとして提供するBaaS(Backend as a Service)を使っている。「クラウドやオープンデータの活用は、アイデアをスピーディに形にしてユーザーに提供していく1つ解答だと考えています」(ヤマハ発動機 藤本勝治氏)
クラウドサービスやオープンデータの活用、そのスピードアップのためのコミュニティー支援。先端のIT活用に向けるヤマハ発動機の視野は、予想以上に広いものだった。
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