身代金は払うべきではない
米国では1日4000件、避けられない医療機関に対するランサムウェア攻撃をどう防ぐ?
医療機関に対するランサムウェア攻撃は避けられないと考えたほうがよさそうだ。専門家によると、攻撃に対する多面的な防御措置とバックアップが医療機関を守る鍵になるという。
医療機関に対する身代金要求型マルウェア「ランサムウェア」の攻撃には、多くの複雑な要因が絡んでいる。医療機関のIT担当者は、他のサイバーセキュリティ脅威や攻撃と同様に、最善を尽くしてランサムウェア攻撃の発生を阻止しなければならない。だが、それと同じくらい重要なのは、医療機関がランサムウェア攻撃に遭った後に何ができるかを計画することだ。
残念ながら、ランサムウェア攻撃に遭う可能性は高いだろう。2016年の初頭だけを見ても、医療機関への攻撃は1日に約4000件発生している。米国政府の各機関共同報告書によると、これは1日約1000件のランサムウェア攻撃が報告されていた2015年と比較して、約300%の増加だ。
ただし、医療機関の最高情報責任者(CIO)は、ランサムウェア攻撃を受けても医療機関は身代金(ランサム)を支払うべきではないという共通の見解を示している。
攻撃者には絶対に身代金を支払ってはならない。そう語るのは、Children's Hospital of Pittsburgh of University of Pittsburgh Medical Center(UPMC)でCIOを務め、Global Health Servicesでバイスプレジデントを務めるハルン・ラシード氏だ。「1度支払えば、他のランサムウェアの標的にされる可能性が高くなるだけだ。攻撃に屈して身代金を払う医療機関だと攻撃者に思われるからだ」
問題はそれだけではない。医療機関が身代金を支払ったとしても、攻撃者からデータが返還される保証はないと同氏は指摘する。
「攻撃者はどこにいるかは分からない。他国にいるかもしれないし、誰にも分からない場所にいるかもしれない。そして、身代金を払った後、全く連絡が取れなくなる可能性もある」(ラシード氏)
結局のところ、防止策とバックアップが重要になるとラシード氏は語る。
医療機関に対するランサムウェア攻撃を防止する6つの方法
ランサムウェア攻撃に対する堅牢な防止策として、医療機関と医療システムは多面的なアプローチを取る必要がある。ラシード氏からのアドバイスは次の6つだ。
脆弱(ぜいじゃく)性の検出
テクノロジーに投資することで、医療機関宛てに送られる「CryptoLocker」、ダウンロード、スパム、実行可能ファイルといったトロイの木馬の侵入に悪用される脆弱なバックドアの検出に役立てるのが良いだろう。また、メールのフィルター処理をしたり、医療機関のネットワークにアクセスしてパスワードを盗むことができる人を特定したりすることもお勧めする。
メール
医療機関宛てに送られてくる「.exe」ファイルが添付された全てのメールをスキャンおよびフィルター処理し、なぜそのような実行可能ファイルが送られてきたのかを理解する必要がある。なぜなら、実行可能ファイルを開くと、基本的には、ランサムウェアがネットワークに入り込むのを許すことになるからだ。そのため、医療機関にランサムウェアが入り込む前に排除する方法を特定しなければならない。
リモートデスクトップ
医療機関のネットワークにリモートでアクセスしている職員をしっかりと管理し、職員がネットワークにアクセスしているときにすべき対策をきちんとやるべきだ。また、厳しいアプローチを採用し、限られた人しかネットワークにアクセスできないようにすることをお勧めする。
モバイル
「UPMCでは、モバイルデバイスの全使用者に強力で認証されたパスワードの作成を義務付けている。保護目的でモバイルデバイスには当機関のファームウェアを搭載している。そのため、職員がデバイスを紛失した場合、そのデバイスにある情報をリモートでワイプ(削除)することが可能になっている」(ラシード氏)
Wi-Fi
医療機関では、機関内のWi-Fiを分けて、ゲストが接続するWi-Fiと職員用のものを分離するのが賢明だ。
ソフトウェアの更新
これは医療機関がうまく対処できていない分野だ。ベンダーは、マルウェアや脆弱性に対応するべく頻繁にソフトウェアのパッチと更新プログラムを提供しており、その役目をしっかりと果たしている。
更新プログラムやパッチのことになると、医療機関は積極的でないことがあるとラシード氏は指摘する。
「パッチについて完全に把握し、ソフトウェアをアップデートすることが非常に重要だ。ソフトウェアのアップデートによって全てのデバイスを最新の状態に保つことで可能な限り侵入を減らし、攻撃を最小限に抑えることができる」(ラシード氏)
医療機関がランサムウェア攻撃から回復する方法
医療機関は、ランサムウェアによる攻撃を防ぐためにできる限り力を尽くすべきだが、それでも攻撃を阻止できない場合はある。
そのため、医療機関はランサムウェア攻撃を受けた後に、身代金を払わなくてもデータにアクセスできるよう準備をしておかなければならない。この際、鍵となるのは頻繁かつ継続的にデータのバックアップを取ることだ。
「ランサムウェアの影響をなくす上で最も効果のある手段は、定期的なバックアップだ。攻撃を受けた場合、攻撃される直前のデータは失うかもしれない。だが、データをバックアップしておけば、バックアップから情報を復元することが可能になる」とラシード氏はいう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー