電波よりタフなワイヤレス接続
可視光通信がIoTの普及に貢献できる理由
可視光通信(VLC)技術は、「IoT」(モノのインターネット)を製造現場、オフィスビル、学校の教室で利用できるように後押しする。古くからある手法が最新のIoTに貢献できる仕組みを解説する。
大手小売業者カルフールは、2015年に改装した大型スーパーマーケットに800基のLED照明器具を使った「ネットワークシステム」を導入した。これは、「LEDで接続」してデータ通信ができるPhilips Lightingが提供する製品だ。位置情報ベースのサービスを利用するアプリに位置情報を送信できる。カルフールは、このネットワークシステムと自分たちで特別に設計したアプリ「PROMO C'ou」を使って買い物客に室内における位置情報を送信できるようにした。
Philips Lightingの企業システム・サービス部門、小売部門、ホスピタリティ部門の責任者を務めるカレン・ゴフ氏は「Philips Lightingの屋内位置特定システムは、LED設備、クラウドベースの位置情報データベース、当社のiOSまたはAndroidアプリ開発キットで構成している。ユーザー企業は、この開発キットを使ってモバイル操作プラットフォームを作成できる」と説明する。Philips Lightingのソフトウェアとクラウドベースの位置情報データベースは、カルフールのモバイルアプリに統合している。
Philips LightingのLED照明は可視光通信(VLC)を使用して、片方向のデジタル情報ストリーム(カルフールの導入事例では屋内位置情報)を高パルスで買い物客のスマートフォンに送信する。このLEDの高速な明滅はカメラで検出できるが人の目は認識できない。
IHS Markitで照明とLEDのアナリストとして働くマイク・ホーナング氏は次のように説明する。「LED照明は、ダイオードのオンとオフを高速に切り替えることで機能している。その速度は非常に速くて人が認識できないほどだ。だが、デバイスのカメラはそのパルスを読み取り、送信する光を信号として検出できる」
スマートフォンのカメラが光の明滅を検出すると、スマートフォンにインストールしたアプリがその明滅をデータ通信と認識してアクセスする。カルフールのスマートフォンアプリはVLCによるデータ通信を読み取り、買い物客が店舗内で立っている位置を50センチ以内の誤差で正確に感知する。
Philips LightingのVLCシステムにより、780平方メートルの店舗でセール商品がある場所まで誘導するなど、カルフールは新たなサービスを買い物客に提供できるようになった。このシステムではアプリをダウンロードした買い物客をサービスに登録するが、このアプリはいつでも無効にできる。
カルフールでコマーシャルモデルとイノベーション部門のディレクターを務めるセリーン・マーティン氏は次のように語る。「カルフールは2015年に店舗内の照明を全て取り替えて、買い物客の手助けをしたり店舗内の移動経路を効率化したりするサービスの提供を試みた。また、セール品を見つけやすくすることも重視している。セール品は年中変わるため、買い物客は該当する製品を見つけるのが困難なことが多い」
IoTをより身近なものにするVLC
「VLC技術は、無線電波の妨害や混雑の影響を受けないため、無線LANといった無線通信手段の代替技術になると考える関係者も多い。光は壁を貫通しないため、VLCはセキュリティも高い」と語るのは、VLCに注力しているLightPointeベンチャーであるFirefly Wireless NetworksでCEOを務めるハインズ・ビレブランド氏だ。同社のVLCは、500Mbps以上の転送速度を実現している。「VLC技術は、IoTが大量の家電やM2M(端末間通信)デバイスに低コストで接続できる通信手段の1つだ」とビレブランド氏は述べる。
「現在、工業用通信に関するプロジェクトに取り組んでいる。例えば、工場の倉庫にインターネット接続可能なデバイスを導入する場合、倉庫には金属で構成する物体が大量にあり、その全てが電波を反射する。そのため、電波を使う無線データ通信は非常に難しい。この場合、光の信号を用いるVLC技術が活躍する」(ビレブランド氏)
Grizzly Analyticsの創立者で主席アナリストを務めるブルース・クルルウィック氏は次のように指摘する。「工場のフォークリフトに内蔵したLED照明などを利用するデバイスが企業のIoTアプリに対応していれば、VLCでデバイスの位置を認識できる。このシステムの導入に当たってLED電球以外にインフラを整備する必要はない」
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