照明器具がIoT化を促進する
「不審者侵入の即時警報を」──学校の安全を可視光通信とIoTで守る
IoTの普及に当たっては全てのデバイスをネットワークで接続することが重要になる。これが意外と難しい。その活路として期待したいのが無線LAN……、ではなく照明器具を使う可視光通信だ。
光の明滅する組み合わせで伝えたい情報を送るという可視光を使う通信の仕組みは、古くからある発光信号から特に変わっていない。しかし、現代の“発光信号”では、明滅のタイミングを極端に速くすることで、500Mbps以上という最新規格の無線LANによるデータ通信に相当する転送速度を可能にした。
この可視光通信(VLC:Visible Light Communications)を利用するネットワーク機器に多くのベンダーが参入しようとしている。そのうちの1つ、Philips LightingのVLC技術は、オフィスや倉庫環境、小売やサービスの現場が導入している。Philips Lightingの企業システム・サービス部門、小売部門、ホスピタリティ部門の責任者を務めるカレン・ゴフ氏は「Philips LightingはVLCを使って、顧客が運用コストや従業員に関わるコストを削減したり、ブランドのポジショニングやメッセージを改善したり、IoTへの参画を後押ししている」と話す。
例えば、同社はCisco Systems(以下 Cisco)と提携して、CiscoのIoTベースの「Digital Ceiling」に取り組んでいる。これは、建物の全サービスを単体のコンバージドIPネットワークに接続する枠組みだ。2社が提携したことで、Philips LightingのイーサネットLEDをベースにしたインターネット接続照明システムとCiscoのITネットワークが統合して、オフィスビルにIoTを導入できるようになる。
Philips Lightingのブログでは次のように投稿している。「LEDのデジタル技術に基づき、セキュリティが確保できるネットワーク技術を使用することで、Digital Ceilingにおけるインターネット接続照明は、照明とITを融合する。これからは照明の役割を果たすだけではない。照らした空間にいるユーザーと管理者がデータを収集して共有するためのプラットフォームとしても機能する」
Digital Ceilingは、インテリジェントなモノをつなげて新たな利用方法と使い勝手を生み出し、総コストを抑え、ビジネスに役立つデータ分析を可能にすることで、従来の労働力を強化するのが目的だ。提携した2社によれば、企業はDigital Ceilingによって得た情報を使用して省電力化を図り、従業員の生産性を高め、ワークスペースを最大限に活用できるという。
Ciscoで Internet of Everythingソリューショングループの最高技術責任者(CTO)を務めるジョン・バーケルマンス氏は次のように述べる。「Philips Lightingが照明機器に力を注ぐ一方、Ciscoはネットワークに定評がある。Ciscoは30年間にわたってモノ同士をつないできた。Ciscoは、ネットワークに集まった音声とカメラの扱いについては既に実績がある」
バーケルマンス氏によれば、建物の内部で使うテクノロジーで同じことを実現するには、従来の蛍光灯が次々とLEDに置き替わっている今が絶好のタイミングだという。今、屋内ネットワークの方法として照明が最有力候補なのは明らかだ。さらに「照明によって、IPアドレスに接続した光のエンドポイントの初期層を天井に作ることで、ネットワーク接続を実現している」とバーケルマン氏は付け加える。
「LED照明は、実際に必要な電力量とできるように最適化している。そのため、同じネットワークから電力を供給可能だ。ネットワークが構成済みなら、同じネットワークを使用して建物内の照明機器を接続するのは理にかなっている。今では全ての照明が独自のIPアドレスを持つ小型PCに相当するセンサーを備えている。Philips Lightingでは、各照明機器の内部に3つのセンサーを組み込んでいる」(バーケルマン氏)
この統合センサーには、各照明の状態と動作に関する情報を伝達できる。また、照らした領域の温度や湿度の変化といった気象要因に関するデータを収集して通信できるものもある。例えば、Philips Lightingのセンサーを搭載するイーサネットLED照明から得た情報を分析して、従業員や建物の管理者がスマートフォンなどのデバイスから照明を操作できる(ただし、このデータを分析して利用するには、データをどこかに持ち帰らなければならない。このネットワークを使用すれば、照明器具への電力経路だけでなくデータを送る経路も必要になることは留意しておきたい)。
さらにCiscoは、Creeなどの照明関係パートナー企業と提携し、建物向けのIoTを実現している。2016年初頭、Creeは照明で建物のIoTを実現するオープンプラットフォームの「SmartCast Power over Ethernet」(PoE)をリリースした。
Creeのプレスリリースによると、SmartCast PoEはセンサーとVLC対応ネットワークコントローラーを組み込むことで、建物の効率と人の生産性を高めるという。また、従来のLED照明システムよりも低い電力量でより適切な照明器具になると訴求する。
CiscoのDigital Ceilingフレームワークは、ネットワークへの接続を可能にする。センサーを搭載していれば、ネットワークにリンクしたLED照明を使用して収集したデータをサーバに送信して分析できる。「SmartCast PoEによってVLCを展開するイーサネットLED照明を使用すれば、照明の個別設定をあらかじめ構成しておくことで、さまざまな部屋に入ったときに照明を調節できる。
教室でVLCはこう使う
Creeの顧客の1つにMobile County Public Schoolsがある。同校でIT部門の上級マネジャーを務めるデビッド・アクリッジ氏は「当校では長期にわたってCiscoのネットワーク設備を導入しているが、最近イーサネットスイッチに接続したPoE天井照明をある校舎に導入した。この校舎には、10個の教室と生徒がプロジェクトに取り組むメディアルームがある」と語る。また、システムが保証している省電力以外に、照明の色合いを調節して、特定の用途に特化した過ごしやすい教室にもできると紹介している。
さらにアクリッジ氏は「非常事態ごとに異なる色で点滅するようにプログラミングすれば、インテリジェントな照明は非常通報システムやセキュリティシステムとして機能できる。例えば、火災の場合は赤色にして、建物内に武装した侵入者が認められた場合は黄色で点滅させ、封鎖の避難措置が必要であることを通知できる」と補足する。それ以外にも、点滅を連続させたり、一定のパターンで点滅させたりできるようにプログラミングして、学校を直ちに封鎖しなければならないことを伝えることも可能だろう。
「学校を封鎖する必要がある状況になると、スマートフォンや屋内設置の電話に着信する。犯罪者には何が行われたのか分からないため、安全性は非常に高い」(アクリッジ氏)
「最終的に、本校は89ある設備にシステムを導入することで、職員や教師が照明の明るさ、色、温度を調整して、生徒の要求や授業の要件に合わせられるようにしたい」とアクリッド氏は話している。
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