“次の波”を見据えたGoogleクラウドのハードウェア戦略とは
Googleが「Intel提携」「ASIC採用」に踏み切った “納得の理由”
Googleのプラットフォーム担当バイスプレジデントを務めるバート・サノ氏が、企業の需要を踏まえたGoogleのハードウェア選択や、顧客の移行に関する課題、クラウドの“次の波”について語る。
膨大なデータのクラウドへの移行が進む中、クラウドプロバイダーはインフラオプションの拡充にしのぎを削っている。大手の一角を占めるGoogleも、市場で勢力を拡大する方法として新しい技術に着目している。
Googleのプラットフォーム担当バイスプレジデントを務めるバート・サノ氏は、同社とほぼ同じ歴史を持つチームを率いている。このチームは、大規模な運用で有名な同社のデータセンターとその内部全体を設計している。
サノ氏にGoogleのハードウェアとインフラについて話を聞いた。「これらが企業の需要に合わせてどのように調整されているか」「クラウドコンピューティングの次の波は何か」「顧客のさまざまなワークロード(アプリケーション)の移行における課題は何か」といった点を中心的に取り上げた。
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――GoogleとIntelは最近、企業におけるクラウドの導入促進に関する提携を発表しました。提携の一環として、Googleは2017年にクラウドサービス「Google Cloud Platform」への次世代Intelチップの採用を予定しています。この提携に至った理由は何ですか。
サノ氏 エンドユーザーにとってのメリットとしては、まず当然のことながら、Google自体のサービスがより便利になることが挙げられます。私たちの検索や広告など、あらゆるシステムが新チップの恩恵を受けます。
それだけではありません。私たちのインフラをクラウドサービスとして外販しているGoogle Cloud Platformも非常に便利になります。パフォーマンスが向上するとともに、構成のオプションが充実し、より大容量のメモリ、より多くのスレッドなどを用意して、さまざまなワークロードを稼働できます。さらに、より高度な計算処理や、複数のデータに対して同様の計算処理を一度に実行するベクトル処理が可能な構築アーキテクチャも提供します。
――Googleは、自社に固有の要件に合わせてインフラを構築した後で、さまざまなニーズを抱えるGoogle Cloud Platformの顧客の需要に沿って、ハードウェアに変更を加えますか。
サノ氏 Googleは、5~8つの異なるサービス領域を手掛けており、これらのサービス領域には、固有のフォームや機能があります。Google Cloud Platformの顧客は多種多様です。その多くは、私たちが社内で使用している構成の範囲内で、Google Cloud Platformを使っていただけます。このインフラは基本的に汎用(はんよう)的なものだからです。
しかし、極めて大容量のメモリ構成や、極めて高速な浮動小数点演算性能を求める顧客もいます。Google Cloud Platformでは一般的なアプリケーション処理だけでなく、数値計算でも活用できるように多様な構成を可能にしています。各種GPUを用意している他、機械学習のための専用プロセッサ「TPU」(Tensor Processing Unit)も使えるようにしています。
――大手クラウドプロバイダーは、プラットフォームにGPUやFPGA(Field Programmable Gate Array)といった技術を盛んに取り入れているようです。狙いは何ですか。
サノ氏 私たちは、“次の波”をサポートしようとしています。それは機械学習やビッグデータ処理であり、機械学習や分析をビッグデータに適用することです。ビッグデータ処理の成果を理解するには、膨大な数値計算が必要になります。
例えば、特定の1つのタスクを行う小規模な機械学習モデルを実行するのであれば、誰もがGPUを必要とするとは限りません。CPUの機能で十分かもしれないのです。しかし、われわれが取り組む問題が大きくなるにつれて、GPUを使わなければならなくなりました。そしてさらに問題が大きくなり、私たちは自前のカスタムハードウェアを手掛けなければならなくなりました。現在ではカスタムASIC(特定用途向けIC)を作るか、FPGAを使うかの判断が必要となっています。両者はアーキテクチャアプローチが異なります。これは「よりプログラマブルなものと、機能はより固定的だが、効率が高いもののどちらが欲しいか」という選択です。いずれも一長一短があります。
こうしたさまざまな技術が必要になってきたのは、一般的なアプリケーションの処理から、機械学習や分析といった比較的複雑な処理へと用途がシフトしているからです。クラウドプロバイダーは、汎用モデルでは不要だったこうした分析機能を取り入れようとしています。
――Googleではそのプロセスがどのように進んだのかをもう少し説明してもらえますか。
サノ氏 まずFPGAについて説明しましょう。通常はFPGAを採用します。プログラマブルであり将来予測はできませんが、柔軟に使えるからです。FPGAは大量に展開し、後でパーソナライズできます。先を見通すのは難しいので、そうしたいと考えるのはもっともなことです。FPGAは汎用的ですが非常に高価であり、大量の電力を消費します。
これに対し、カスタマイズしたASICを迅速に開発でき、素早く展開できれば、FPGAのメリットは薄れます。実際、私たちはASICをタイムリーに開発できます。ある意味で再製造が可能で、担当者変更や再パーソナライズも容易なインフラの運用に常に取り組んでいます。
――Googleはコンテナのアーリーアダプターでした。現在、この技術が人気を呼んでいることについてどう見ていますか。
サノ氏 私がGoogleに入社して間もないころに、私たちは仮想マシン(VM)とコンテナのどちらを採用するかを決めることになりました。しばらくの間、それが悩ましい問題だったことを覚えています。しかし、私たちは最終的にこう判断しました。「コンテナの方がオーバーヘッドが小さい。管理などを複雑化させる面もあるかもしれないが、はるかに効率の高いソリューションを生み出す」と。これは良い判断でした。VMは非常に柔軟ですが、その柔軟性のために高い代償を払うことになります。私たちにとっては効率性が肝心です。私たちのサービス規模では、メモリ効率、プロセッサ移行時間、オーバーヘッドの1~2%の改善が重要な意味を持ちます。
――Googleは、顧客の大規模なクラウドへの移行を促進する上で、どのような課題に直面していますか。
サノ氏 データを移動するのは簡単なことではありません。これは大きな課題です。ですが率直に言って、ソフトウェアが最大の課題です。データセットもそうですが、ソフトウェアを全てまとめ、移行するのは大変です。異なるプラットフォームが混在する環境の移行も厄介で、注意が必要です。
顧客のオンプレミス環境から私たちのクラウドへの移行に当たっては、ソフトウェアを移行するだけでなく、物理的な制約に対処することも必要です。いわば顧客はハードウェアに縛られており、この問題の解決のために、私たちは顧客と協力しています。顧客をクラウドに迎えるために、私たちはできるだけ柔軟な対応を図っています。私たちの業界は、まさにこうしたシステムの枠組み転換を成し遂げていかなければなりません。
――クラウドへの移行に関連して他にも大きな課題がありますか。
サノ氏 レガシーシステムなどを運用している大企業の場合、移行戦略を策定し、実行する必要があります。私にとってはそれが最大の問題です。移行過程で多くのブリッジ(支援策)を作り、ハイブリッド環境の構築につなげています。
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