中堅・中小企業のための“脱Excel”ロードマップ【第2回】
データ分析はベテラン従業員の経験を否定するのだろうか?(2/2 ページ)
データ分析はベテランのノウハウを否定せず、業務そのものを置き換える
カードローン会社が人の手で申し込み審査をしていた時代には、ベテランと呼ばれる従業員が、長年の経験によって得たノウハウをもって、精度の高い審査をしていたはずです。しかしデータ分析を導入することで、「審査する」という業務自体が人の手からシステムに置き換わってしまいました。つまり人の判断を代替するデータ分析は、ベテランの経験を否定するのではなく、ベテランや新人といった区別なく業務そのものを最小限に減少、もしくは無くしてしまうのです。
とはいえ、どんな業務でもこのようなデータ分析できるとは限りません。統計的な分析をするには、データが継続的に取得でき、かつ取得したデータが分析に十分な質と量を兼ね備えている必要があるからです。ただし、「モノのインターネット(IoT)」が提唱され、あらゆるモノがインターネットにつながるといわれている現状では、IoTデバイスから得られるデータによってデータ分析が可能な業務は、今後、さらに増えていくでしょう。また、人工知能(AI)技術がさらに発達していけば、単純な判断しかできなかったデータ分析比較して、はるかに複雑な判断をAI技術が代替することが可能になります。
オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が2013年に発表した論文で示していた「あと10年で無くなる職業、消える仕事」という内容が話題になりました。そこに記載された職業や仕事については、本当に10年でなくなるかどうかはさておき、なくなる可能性が高いとは考えておいた方がよいでしょう。
ベテラン従業員は今後どうなるのか
最後に、企業における3つの意味合いのベテランの立場が、人の判断を代替するデータ分析によって、どうなるかを考えてみましょう。まず「勤続年数の長さ」という意味のベテランですが、社内の人間関係や業界の内情などは、データを取得することが難しく、たとえ取得できたとしても、判断を代替するようなデータ分析は困難です。こうしたベテランをデータ分析やAI技術で代替することは難しく、データ分析によって仕事がなくなる可能性は低いかもしれません。ただし企業からは勤続年数の長さに比例する仕事の成果を出すことが求められることになるでしょう。
「職種の長さ」という意味のベテランについては、業務の一部がデータ分析やAI技術によって代替される可能性があると考えられます。例えば人事における採用業務などは、就職希望者の提出書類をデータ化し分析することで、採用判断の一部を代替することは十分に可能でしょう。営業のように一見、代替できそうにない業務においても、簡単な商品説明と、説明に対する質疑応答程度であれば、AI技術で代替できる可能性は否定できません。人が担当する業務量が全体的に減少すると考えられるため、残された業務がベテランならではの経験を必要とするかどうかが、ベテランの立場を決めることになるでしょう。
最後に「技術などの専門領域に精通している」という意味のベテランについては、ベテランの持つノウハウがIoTデバイスなどによってデータ化され、蓄積することが可能であれば、データ分析やAI技術によって代替される可能性があります。話題になっている自動車の自動運転は、その好例です。人が携わる専門領域の仕事が限りなく減少するので、AI技術を上回るスキルを持つベテラン以外は、生き残れないかもしれません。
2045年には、シンギュラリティ(技術的特異点)が起こり、AI技術が人間の能力を超え、社会の在り方が一変してしまうといわれています。30年先ではありますが、シンギュラリティの訪れを待つことなく、データ分析やAI技術によって代替される業務は増えていくと考えられます。このような話は中小企業にはまだまだ縁がないと考える人も多いかもしれませんが、ベテランに限らず、現在の仕事がデータ分析やAI技術によって代替されてしまうかどうか真剣に考えておく必要があるでしょう。
村山 聡(むらやま・さとし)
1971年愛知県生まれ、名古屋大学経済学部卒、中小企業診断士。
IT企業在職中に、単一業種においてキャリアを積んでいくことに疑問を感じ、どんな業界、職種でも通用する知識を得るべく中小企業診断士を取得。複数社を経て、現在の勤め先にて、コンサルタントとして、データを活用した業務効率改善に取り組む。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
中堅・中小企業のための“脱Excel”ロードマップ
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー