総点検: SMBのためのBI活用【番外編(前編)】
“何でもExcel分析”から脱却すべき理由
手軽なデータ分析手段として有用な「Microsoft Excel」。ただし、中堅・中小企業が望むデータ分析を実現するには、Excelだけでは十分とはいえない。調査結果を基に、その理由を説明しよう。
「ビッグデータ」の取り組み事例は、新聞やテレビなどで日々紹介されている。大量のデータをリアルタイムに処理することで、今まで得られなかった新たな知見をビジネスに生かす動きだ。現在は大企業や産官学共同体が主体だが、それほど遠くない将来には、中堅・中小企業においても高度なデータ分析をビジネスに生かす日がやってくるだろう。
とはいえ、いきなりビッグデータの取り組みに飛躍するのはさすがに難しい。「Microsoft Excel」を用いた簡単な集計や分析はイメージできるが、その次のステップとして何をどう始めればよいか――。こうした課題に悩む中堅・中小企業が多いというのが実情だ。
そこで本稿は、中堅・中小企業のビジネスインテリジェンス(BI)活用に関する動向を追ってきた本連際の番外編として、「Excelからの次の1歩」としてのBI活用を踏みだす際に留意すべきポイントについて、調査データを交えながら考察していくことにする。
連載「総点検: SMBのためのBI活用」
中堅・中小企業がまず求めるのは「セルフサービスBI」や「誰でもBI」
以下の図1は、ERPを導入している年商5億円以上500億円未満の中堅・中小企業に対し「BI活用に際して実現したい目的」(複数回答可)を尋ねたもののうち、回答件数が比較的多かったものをプロットした結果である。
「一般社員がさまざまなデータを手軽に集計/分析できる環境の構築」が39.3%と、他の項目と10ポイント以上の差を付けて最も多く挙がっている。旧来、ERPなどの業務システムに格納されたデータを分析するには、対象となるデータを別の場所に抽出するなどの作業が必要だった。ITの運用管理を担う担当者が不在だったり、人材が限られたりする中堅・中小企業にとっては、非常に高いハードルだったといえる。
昨今では技術面の向上などによって、業務システムのデータをより手軽に分析できる手段が充実しつつある。その結果、一般の従業員が自らデータ分析をすることも可能となってきた。こうした動きは「セルフサービスBI」もしくは「誰でもBI」などといった言葉で表現されている(参照:【導入効果】未来予測に進む「BI」、中堅・中小企業のメリットは?)。BI活用の裾野が広がりつつあるわけだ。
BI活用におけるこうした進歩は、当然ながら中堅・中小企業にとっても歓迎すべき流れだといえる。「どうすれば売上単価を向上できるのか?」といったビジネス課題を持っているのは、現場の実務担当者だ。実務を担う従業員が自らデータ分析できれば、ビジネスに直結したBI活用が可能となる。上記の結果は、こうしたニーズの表れだと捉えることができるだろう。
Excelだけでは「セルフサービスBI」や「誰でもBI」を実現できない理由
ではセルフサービスBIや誰でもBIを実現するため、中堅・中小企業の多くはどのような手段を望んでいるのだろうか? 以下の図2は、セルフサービスBIや誰でもBIへの取り組みを予定している年商5億円以上500億円未満の中堅・中小企業に対し、その実現手段として望ましいもの(複数回答可)を尋ねた結果のうち、比較的多く挙げられた回答をプロットしたものだ。
「Microsoft Excelなどの使い慣れたツールで集計/分析が行えるBIツールを採用する」「ブラウザや簡易な操作画面で誰でも集計/分析が行えるBIツールを採用する」が突出して多く挙げられている。ユーザーインタフェース(UI)の使い勝手のよさが最も重視されているわけだ。
「それならば、Excelを使えばよいのではないか」――。こうした意見は当然出てくるだろう。もちろん、Excelでもピボットテーブル(クロス集計機能)による集計/分析が可能だ。アドオンツールである「PowerPivot for Excel」を活用すれば、データベース管理システムの「Microsoft SQL Server」を始めとするさまざまなデータソースに格納されたデータも集計/分析できる。
ExcelによるBI活用の問題点としてよく挙げられるのが、扱えるデータ件数が限られることだ。だが企業規模が小さい場合、それほど大量のデータは必要としないことが多い。また、Excel側にデータを取り込むのではなく、ODBC(Open DataBase Connectivity)経由で接続したデータベース内のデータを分析対象とすれば、データ件数の制約を回避することもできる。このように、工夫次第ではExcelだけでもセルフサービスBIや誰でもBIは十分実現できそうにも思えてくる。
Excelは、既に大半の中堅・中小企業が導入済みだ。にもかかわらず、セルフサービスBIや誰でもBIが広く実施されていないのはなぜだろうか? その答えとなるのが、以下の図3である。ERPを導入している年商5億円以上500億円未満の中堅・中小企業に対し「BI活用に際して解消したい課題」(複数回答可)を尋ねたもののうち、回答件数が比較的多かったものをプロットした結果である。
先に述べた「Microsoft Excelなどの簡易ツールでは扱えるデータ量が限られる」といった課題も多く挙げられているが、留意すべきなのは「集計/分析の対象となるデータの所在が分からない」や「集計/分析すべきテーマそのものが設定できない」といった課題も多い点だ。つまり、「そもそも、どこにどのようなデータがあるのかが分からず、分析に際しての指標や軸を設定することも難しい」というのが、中堅・中小企業が置かれた現状だといえる。
「データソースに接続し、テーブルを指定し、グラフやチャートを作成する」という過程をどんなに便利にしても、こうした課題を解決することはできない。これが、ExcelだけではセルフサービスBIや誰でもBIが難しい理由である。
中堅・中小企業が、セルフサービスBIや誰でもBIを効果的に進めるにはどうすればよいのか? 後編では、具体的な解決策を製品/サービスの動向と併せて紹介する。
岩上由高(いわかみ ゆたか)
ノークリサーチ シニアアナリスト
早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻卒業後、ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ベンチャー企業数社でIT製品およびビジネスの企画や開発、マネジメントに長年携わる。ノークリサーチでは多方面で培った経験を生かし、中堅・中小企業のIT活用全般にわたるリサーチやコンサル、執筆・講演など幅広い分野を担当。
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総点検: SMBのためのBI活用
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