覆る通説
最強の経営管理ツール「Excel」の落日
Excelシートと格闘する日々は終わるのか――。業務で幅広く使われているMicrosoft Excelの経営管理分野における利用率が低下している。その背景とは? 経営管理ツールの利用動向を紹介する。
「Excelの利用率が非常に低い。経営管理ツールの通説を覆す結果だ」。アイ・ティ・アール(ITR)のプリンシパル・アナリスト 浅利浩一氏は同社が5月15日に開催した同社のイベント「IT Trend 2013」でこう述べた。日常の数値管理から経営判断につながる資料作成まで日本企業で広く使われている「Microsoft Excel」。さまざまな経営管理ツールが登場している中で実は最も使われるツールはExcelというのがこれまでの定説だった。経営管理ツールに何が起きているのか。浅利氏の講演から探る。
企業規模によって異なるExcelの利用率
ITRは2013年3月、「従業員数100人以上で日本国内外でビジネスを展開し、グループ連結経営を実施または検討中の企業」200社に対してアンケートを実施した。「経営管理のシステム化で最も主体となるシステム」を聞いた設問では全体の33.5%が「独自開発」システムを使っていると回答。次いで「ERP」が28.5%を占めた。「表計算ソフト(Excelなど)」は7.5%だった。経営管理におけるExcelの利用率は企業規模によって異なる。100~999人規模の企業では10.5%だが、3000~4999人規模では3.3%だ。
IT環境の変化が経営管理における“脱Excel”を促進しているといえるだろう。浅利氏はハードウェアを中心とするITインフラへの投資は一段落し、多くの企業では「情報をどう得て、経営の意思決定の有効な手段にするのか。それを本格的に検討する段階にある」と見る。また、ビジネスのグローバル化が進展し、企業は将来を予測しづらくなっている。その中で経営戦略立案から実行、モニタリングまでを一連のサイクルで効率的に管理するにはExcelでは不十分。拠点が世界中に広がり、リアルタイムに近い経営判断が求められる中では専用の経営管理ツールが必要になる。
浅利氏はITRの「IT投資動向調査2013」を説明し、「2013年に向けて大企業が最も投資を強化するのが経営管理」と指摘した。ERPや財務会計ソフトへの投資が横ばいの中で経営管理ツールへの投資は年平均成長率9.7%(2010~2015年)で推移している。従来、グローバル展開する大企業が中心だった経営管理情報活用のニーズが中堅企業にも広がっている。これが経営管理ツールの成長率を押し上げている。ITRの別の調査からは「来期以降、経営管理システムの利用者を4人に1人以上に増やし、利用者の裾野を拡大する意向もうかがえる」(浅利氏)という。
グローバル標準化やコストなどが課題に
拠点ごとにバラバラだったビジネスアプリケーションを標準化しようとする動きも、全社規模での経営管理ツールの利用を促進している。IT投資動向調査2013によると、大企業の回答者の39.1%は現在「日本主導でグローバル標準化を進めている」と回答。今後については54.5%が標準化を進める予定だ。中小企業においても現在33.3%が日本主導によるグローバル標準化を進めている。「インフラ整備を終えた段階で、次の一手を打つために情報の標準化をどう進めるかが課題になっている」(浅利氏)
経営管理ツールの課題はコストだ。従業員規模別に経営管理およびシステムの課題を聞いた調査で、1000~2999人の企業に勤める回答者の44.1%が経営管理ツールの課題として「ライセンス費用が高い」と回答。「導入費用/維持費用が高い」も41.2%を占めるなどコストが大きな負担になっていることが分かる。3000~4999人規模の企業の回答でも同様の結果が出ている。
一方、従業員数が1万人以上の企業ではコストを課題と考える比率は低下し、「経営管理情報のニーズが組織、地域、利用者ごとに異なる」が課題として浮上する。世界各地の拠点で経営管理ツールを利用することでそのコスト負担が分散され、問題視されることが少なくなるとみられる。だが、このような超大企業は別にして、ほとんどの企業ではコストが経営管理ツールの課題になる。
Excelではできない経営管理ツールの役割は、経営層、事業部門、IT部門という社内の3つの部門間で情報を効率的に循環させることだ。経営管理ツールはさまざまなシステムが出力するデータを標準化し、業務プロセスを可視化する。その上で経営視点、事業部門の視点で戦略のPDCAを管理する。浅利氏は「予測をいくら入念に積み上げても昨今の状況ではほとんどの場合、その仮定は崩れてしまう」と話し、仮定を前提とした経営の危うさを指摘する。重要なのは事実に基づくデータと社内外の重要な兆候。このデータを整備するのが経営管理におけるIT部門の役割だ。
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