多剤大量処方の問題が解決する?
Apple元CEOジョン・スカリー氏が提案する、米国の薬剤給付管理システムとは
Appleの元CEOジョン・スカリー氏は、クラウドベースの薬剤共同管理システムを携えて医療ITに参入した。これの導入によって、どのようなメリットが生まれるのだろうか。
AppleとPepsiCoのCEOを歴任したジョン・スカリー氏は、クラウドベースの薬剤管理システムベンダーRxAdvanceを設立投資して、現在副会長を務めている。同氏は、クラウド薬剤管理プラットフォームのメリットと、慢性疾患やその他の疾患への薬剤処方に掛かるコストを抑えるための薬剤管理システムの活用について語った。
本稿は2部構成のQ&Aセッションの第1部である。第2部「高額医療費問題をどう解決? Apple元CEOジョン・スカリー氏の挑戦」では、スカリー氏が薬剤取引サイクルの最適化およびMACRA(Medicare Access & CHIP Reauthorization Act of 2015)という、米国の医療法と薬局のIT化に関する相互運用性について語っている。
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――クラウドベースの薬剤共同管理システムとは何なのか。このシステムは、どのように機能するのか。
スカリー氏:処方箋医薬品のエコシステムは、3兆ドル規模になる医療のエコシステムの中では最も大きな区分で、その収益は約8400億ドルにも上る。薬剤給付管理(PBM、注1)のサービスは、薬剤のサプライチェーンを促進している。8400億ドルの処方箋医薬品エコシステムのうち、薬剤のサプライチェーンが占めているのはわずか3700億ドルだ。このエコシステムには、薬剤、治療法管理、専門薬、患者のケアに関わるあらゆることが含まれる。患者のケアが含まれるのは、これが薬剤にも関連するからだ。クラウドベースの共同サービスは、現在のPBM業界が注力しているものよりもはるか先を進んでいる。PBM業界は約30年前に誕生し、そのときに初めて設計されたテクノロジーを基盤としている。つまり、クライアント/サーバ時代のテクノロジーだ。ただし、今はクラウドの時代だ。そして、ビッグデータ分析と機械学習の時代でもある。新しいテクノロジーの導入が他の業界で成功していたら、同じように活用したいと思うだろう。医療業界では、多くの新しいテクノロジーの採用が遅れている。
現在、医療業界では、信頼を獲得し、大規模な導入に対応でき、大幅なコストダウンと強化がなされたテクノロジーを取り入れている。これらは、急激な成長を遂げるテクノロジーと見なされている。クラウドプラットフォームと機械学習プラットフォームを使用することで信じられないほどの非効率さと膨大なコストを軽減および排除できるのも、大きなチャンスだ。
Amazon、Google、Facebook、LinkedInといった他の業界の企業を見てみると、こうした企業が線形時間ではなく指数時間で拡大していることが分かる。だが、私たちは線形時間で物事を考えることに慣れている。これが人間の直感的な考え方だ。しかし、私たちは指数時間の時代を生きている。ほんの10年前には利用できなかったテクノロジーを利用して、このようなイノベーションを経験したことがない業界にテクノロジーを適用することが可能になっている。
※注1:薬剤給付管理(Pharmacy Benefit Manager:PBM)は、米国の医療制度における、第三者機関による処方薬の適正な給付管理プログラムのこと。
――このテクノロジーは、どのような混乱をもたらすのか。新しいテクノロジーを導入した既存のPBMシステムベンダーは存在しないのか。
スカリー氏:大きな成功を収めているPBMシステムもある。そこに疑いの余地はない。だが、必ずしも既存のPBMシステムを置き換える必要はない。PBMシステムは、薬剤を運ぶ物理的なサプライチェーンの促進に注力している。このサプライチェーンは、医薬品メーカーからあらゆる医療システムを通じて、処方箋を介して売り場に患者のための薬剤を届けているのだ。しかし、このシステムのデータを使用すれば、例えば不必要だった処方箋を調べるなど、いろいろなことができる。一般的に長期的なケアが必要な6~7つの疾患を抱える患者は、6~7人の専門医から処方箋をもらっている。多くの場合、1日に最大で15種類の薬を摂取している。
患者のために書かれている処方箋に重複がないかを示すデータを得られれば、「この患者は1日に15種類も薬を飲む必要はない。効能が重複している部分があるから、10~11種類で十分かもしれない」と判断できるだろう。PBMシステムを活用すると、先発医薬品の代替となるジェネリック医薬品をより多く生み出し、投薬量を調べて、患者が実際に服用しているかを確認できる。
――PBMシステムへの新たな潮流の一部となっている、薬を忘れずに摂取するためのアプリやスマートピルボトルなどのIoTテクノロジーについてどのように考えているか。
スカリー氏:スマートピルボトル(注2)は、ほとんど医療システムに組み込まれていないのが実情だ。例えば、スマートピルボトルは薬を摂取した時間を教えてくれる。しかし、その情報は、全ての医療専門家、患者の健康を管理しているかかりつけ医、ケアマネジャー、保険会社ごとに設定した保険支払い対象医薬品のリストに還元する必要がある。そして医療システムのあらゆる地点において、この情報を追跡できなければならない。だが、医療システムには、さまざまな関係者との間に良好なデータの相互運用性がないのが実情だ。
※注2:薬の飲み忘れを防ぐ目的で、警報機能が付いている薬瓶。
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