ライフサイエンス企業のCIOが描く成長戦略【第2回】
製薬企業の営業・マーケ部隊をITで支援する2つの方向性とは?(1/3 ページ)
MR(医薬情報担当者)の多くは、顧客である医師と5分以内の面談時間で情報提供をしているというデータがある。このような制約下で営業・マーケティング部隊の生産性を高めるためにITが貢献できることは何だろうか。
連載について
本連載では「ライフサイエンス企業におけるITの現状と課題」をテーマに、ライフサイエンス企業の中でも特に製薬業界でのIT事情を解説する。初回の全体像の紹介に続き、「制約された環境下におけるプロモーション」「情報プラットフォーム」「CIO(最高情報責任者)やIT部門の役割と展望」と全4回の連載で各項目を解説する。
第1回「製薬企業のIT部門は販促活動の環境変化に備えよ――知っておくべき技術トレンド」ではライフサイエンス企業、中でも特に製薬企業のIT部門を取り巻く現状と環境変化について俯瞰した。医薬品や業界の特殊性から生じるさまざまな制約条件下でも、製薬企業の営業・マーケティングの現場にはビジネスの成功をリードするというミッションがあるのだ。
連載第2回では、制約のある環境下でのプロモーションに関して、現場のニーズや課題、IT活用事例を紹介し、それを踏まえてIT部門に期待される「テクノロジー面のチャレンジ」について解説する。なお、日本製薬工業協会では「『プロモーション』とは、いわゆる『販売促進』ではなく、『医療関係者に医薬情報を提供・収集・伝達し、それらに基づき医療用医薬品の適正な使用と普及を図ること』」と位置付けており、本連載でもこの定義にのっとり記載している。
製薬企業の営業・マーケティング活動を取り巻く制約条件
医薬品や医療機器は、生命や身体に関わる製品特性を持っているため、常に高い倫理性と透明性確保が求められている。当然ながら製薬企業の業務は、関係法規や業界団体が定めた自主規範に基づいて遂行する必要があり、順守状況は関連省庁や団体によって厳しく監視される。
製薬業界の営業・マーケティング活動における制約条件についてあらためて整理をしておく(表1)。特に医療用医薬品の情報提供は、その適正使用へ誤解や誤認を招く表現および活動を抑止するために、多くの制約が設けられていることが理解できるだろう。
| 製品 | ・医師による処方箋が必要 ・処方箋を基に薬剤師が調剤 |
|---|---|
| 価格 | ・価格は公的に決定 ・2年ごとに薬価見直し・改定 |
| 販売場所 | ・病院や保険薬局に限定 |
| プロモーション | ・業界団体が定めた各種ガイドラインなど自主規制に基づいた製品情報提供 ・MR(医薬情報担当者、注1)への医療機関訪問規制 |
※注1: Medical Representatives。製薬企業の営業部門に所属し、医薬品の適正使用のための情報の提供、収集、伝達を通して、自社医薬品を普及させる活動に従事している職種。
製薬企業の営業・マーケティング活動における課題
医師は、検査、診断、治療、処方、変薬といった一連の意思決定を担っていることから、製薬企業の主要顧客である。従来は、できるだけ多くの医師に高頻度で会い、製品特性の理解度を高めることが採用と処方につながり、業績目標の達成に寄与すると見なされてきた。そのため、MRを大量投入し、活動効率をいかに上げるかという観点での生産性向上に主眼を置いた販売戦略が主流であった。
しかし近年は医療の高度化や複雑化に伴い、多くの勤務医の業務負担や忙しさは増している。また院内セキュリティなどの理由から、ほとんどの医療機関ではMRの訪問規制やアポイント制が強化されるようになった。MRとの1回当たりの面談時間を5分以内とする医師が8割を超えており(注2)、「医師と会えない」状況が年々進行している。この状況を補うように、デジタルチャネルを活用したプロモーションの比率がここ数年3割を超えている状況だ(図1)。
※注2:製薬向け専門誌『ミクス』調べによる(参考:ミクスOnline「ミクスMR調査 医師との平均面談時間5分以内が8割に 進む短時間化」)。
このような状況下では、1回当たりの訪問時における面談内容や、機を捉えたタイミングでの訪問が重要になってくる。臨床現場の医師は、刻々と容体が変化する患者に対し、ベストな治療のための専門的で多岐にわたる情報を必要としている。例えば既存薬の情報だけでなく、続々と発売される新薬の情報や使用方法、検査法、診断法、治療法などだ。MRは面談ごとに、このような状況下にある医師一人一人の情報ニーズを捉え、簡潔かつ的確に回答し、個々の医師の治療満足度を高めていく必要がある。このように価値提供に向けた労働生産性向上へのシフトが求められている。
これらの課題解決に向け、製薬各社の変革は大きく2つの潮流が生じている。1つは、競争優位性の源泉であるMRを中心とした営業部隊の進化。もう1つが、デジタルチャネルを活用したコマーシャルモデルの再構築だ。そのどちらもITが重要な役割を担っている。
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ライフサイエンス企業のCIOが描く成長戦略
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