告知が遅すぎた?
iOSとmacOSの“PPTP突然打ち切り”に振り回されるAppleユーザーたち
危ないといわれつつも普及していた主要VPNプロトコルのサポートが突然打ち切りに。急きょ“代役”を探せと言われてもすぐに見つかるものではない。
「PPTP」(Point-to-Point Tunneling Protocol)は、VPN(仮想プライベートネットワーク)の実装に使われる。TCP接続を使ってトンネルを維持し、GRE(Generic Routing Encapsulation)でカプセル化したPPP(Point-to-Point Protocol)フレームを使ってデータをトンネルに送信する。暗号化機能や認証機能を提供せず、PPPパケットをトンネルに通すことでセキュリティ機能を実装している。
VPN技術では一般的にPPTPがサポートされているが、このプロトコルは安全ではないことが以前から知られている。攻撃によってネットワーク全体でのパスワードスニッフィング、暗号化解除、機密データの読み取りが可能だからだ。そのためか、PPTPはMicrosoftなどが結成したコンソーシアムによって1999年に開発されたが、IETF(Internet Engineering Task Force)がPPTPを標準として提案、承認することはなかった。
それでも、多くの旧式の技術やプロトコルと同様に、PPTPはまだ広く使われている。より安全な代替プロトコルと比べて、セットアップと利用が比較的容易だからだ。
だが、「iOS 10」のプレビュー段階で、AppleがこのモバイルOSと「macOS Sierra」でPPTPのサポートを削除したことが明らかになった。この措置により、多くのAppleユーザーが問題に直面することになった。PPTPを使用するVPNサービスや設定が、新OSを搭載するデバイスから利用できなくなるからだ。Microsoftもユーザーに「iOS 10は、PPTPを使用するIntuneのカスタムVPNプロファイルを削除してしまう」と警告した。
Appleは2016年に、「QuickTime for Windows」ソフトウェアのサポートも突然打ち切った。Appleユーザーからはまたもや「Appleは、PPTPサポートの終了計画をなぜ前もって周知しなかったのか」という不満の声が上がっている。
Appleは2016年7月にサポートポータルに告知を掲載し、iOS 10とmacOS Sierraでは、PPTPサポートが削除されることを管理者に知らせていた。Appleはこの告知で、L2TP/IPsec、IKEv2/IPsec、Cisco IPsecのようなより安全なVPNプロトコルや、App Storeで提供されているSSL VPNクライアントを試すことを勧めた。
だが、多忙なシステム管理者がこの告知を見つけても、ほとんどの企業では、主要なワークフローやプロセスに支障をきたすことなく新しい技術に移行するには、4カ月以上かかる。適当な次善策がなければなおさらだ。IPsecはVPNの実装に理想的だが、セットアップに時間がかかることで有名だ。
Appleが、ユーザーのデータを危険にさらしかねないプロトコルに見切りをつけたのは責められない。企業はPPTPを使い続けるのではなく、より安全な新しい接続方法を導入しておくべきだった。だが、企業やユーザーに接続方法を指示することは、Appleの役割ではない。
企業やユーザーがPPTPトンネルを使おうとする、セキュリティ以外のもっともな理由もある。例えば、特に海外において、地理的区分に基づいてブロックされているWebサイトや、IPアドレスがブロックされているWebサイトなどにアクセスしたいという理由や、特定の国に関する正しい検索結果を得たいという理由がそうだ。こうした場合には、VPNベースのセキュリティは必要ない。PPTPはこうした状況にうってつけであり、動作のオーバーヘッドもほとんどない。これに対し、VPNは、パフォーマンスや帯域幅利用に無駄がある他、無用なセキュリティ強化や環境の複雑化を招く。
限られた予算でVPN技術をアップグレードする必要がある企業は、OpenVPN TechnologiesのオープンソースSSL VPNクライアントソフトウェア「OpenVPN」を検討するとよいだろう。OpenVPNは、AppleのOSを含むさまざまなOSに対応しており、一部のルーターはこのソフトウェアを直接サポートしている。
また、企業でVPNが使われている理由の再検討につながる選択肢もある。デスクトップや社内システムおよびリソースへのリモートアクセスを使用する場合、そのアクセスはHTTPSで保護しなければならない。保護していれば、リモートアクセスで利用されるアプリケーションは、安全なVPNの存在に頼ることなく安全なアクセスを提供することになる。
しかし、PPTPからこうした技術に移行するには時間がかかる。AppleがPPTPサポートの廃止方針をもっと大々的に発表するとともに、企業への注意喚起をもっと積極的に行うべきだったのは確かだ。Windows XPのサポート終了に伴うMicrosoftの経験は、数年間にわたって大掛かりな注意喚起を行っても、多くの企業が準備を怠ることを示している。
また、AppleのPPTPサポート廃止とその余波は、企業が基本ソフトウェアのβ版を徹底的にテストし、変更点が重要業務に悪影響を与えないか調べることの重要性を浮き彫りにしている。ベンダーが企業やユーザーに安全でない技術からの移行を促すためにすべきことは多いが、技術をいきなり禁止すると、セキュリティ上の大きな問題が一時的に発生し基幹業務を混乱させることがある。Appleが突然こうした措置を取ったのは、明らかにされていない理由によるのかもしれないが、いずれにしてもユーザーは対処に苦労しているのは間違いないところだ。
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