人工知能と機械学習もGPUで進化する
徹底解説:GPUコンピューティングが急成長する理由と減速する懸念(2/2 ページ)
GPUの波が全てのビジネスに押し寄せる
このようなGPUの演算処理能力を利用して3Dゲームなどのグラフィックス処理だけでないより広い目的に活用しようとするアプローチを「GPGPU」(General-purpose computing on GPU)または「GPUコンピューティング」と呼ぶ。ツイートを投稿した場所や言語を地図上で示すサービスの「MapD」などもGPUコンピューティングを活用している。その目的は、作業をCPUとGPUの間で分割することにある。アプリケーションのコードの大部分は逐次処理を必要とするものの、そのコードの中で集中的な演算処理能力を必要とする特定のプロセスをGPUに任せることができる場合もある。
組織で収集するデータの量が増える中、そのデータから価値を引き出すビジネスニーズも増大している。GPUコンピューティングを利用するデータベースに対する関心が急浮上し始めた理由はそこにあるとスタンパー氏は指摘し、「この分野は非常に堅調な成長が見られる」と予測した。
例えばNikeはGPU搭載のサーバとMapDのデータベースソフトウェアを使って過去の売り上げデータを分析し、特定地域の需要を予測している。同じくMapDを使っているVerizonは、携帯電話をトラッキングするサーバのログ分析にGPUコンピューティング対応システムを利用している。
GPUコンピューティングの活用に積極的なのはMapDだけでない。BrytlytやSQream TechnologiesはGPUコンピューティングを利用する分析処理に対する競合アプローチを提供している。SQreamのCEOアミ・ギャル氏は「これはデータの利用目的だけに影響する変化の波ではない。新しい需要を伴う全く新しいビジネスが登場しようとする変化を巻き起こす波でもある。Uberはタクシー業界を大きく変えようとしているデータ企業であり、Airbnbは宿泊予約システムと“貸し部屋”システムを大きく変えようとしているデータ企業だ」と主張する。
多くの主要クラウドプロバイダーも、GPUコンピューティングのインスタンス提供に乗り出した。この動きは実験的な分析や可視化プロジェクトを行う企業の参入コストを引き下げる。ただ、スタンパー氏によると、GPUを使った分析演算の需要成長が鈍化する懸念要因も多数あるという。その1つが、企業向けデータベースプラットフォームのように大型で複雑かつ高額なシステムでは、既に導入している機材を破棄してGPUコンピューティング対応システムに入れ替えることに対する抵抗が強いことだ。また、GPUコンピューティング対応データベースシステムを提供するベンダーの大多数は小規模な新興企業で、これまでの大手データベースベンダーのような知名度も営業部隊もなければサポートインフラも整っていない。
「経営層には自分たちが望む速度で経営判断に必要な分析結果が入手できないことへの不満はあるものの、IT部門に対しては、新技術への過度の出費や複雑なシステムの増大を阻止しようとするプレッシャーがある」(スタンパー氏)
それでも大規模なデータセットの分析を急ぎたい企業にとって、明らかな性能の強化は無視できないだろう。ワークロードによっては、サーバクラスタ全体をGPUコンピューティング対応データベースシステムに入れ替えることもできるとスタンパー氏はアドバイスする。
「スマートなアプローチ」とは
1基のハイエンドGPUでCPUベースのサーバクラスタを超える処理速度でスレッドを同時に処理できる性能は、台頭しつつある別の種類のワークロードにも適している。
NVIDIAのキム氏は、「ここ数年で人工知能と機械学習に大きな転換点が到来している。偶然にもそれが理想的な並列ワークロードだった」と語る。
人工知能に対するアプローチは幾つかある。だが汎用演算に対応したGPUコンピューティングの台頭で急成長しているのがディープラーニングだ。
人工知能のディープラーニング分野では、人の脳神経の配列を、コンピュータノードの仮想ニューラルネットワークで再現する。1つのネットワークは複数の層で構成し、それぞれのノードが特定の機能を実行する。人工知能は各ノードから出力するデータを使って人のように「推論」する。この概念は数十年前から存在していたが、ごく最近まで、非常に大型のクラスタやスーパーコンピュータを使わなければ、安定したニューラルネットワークは構築できなかった。
音声認識ソフトウェア「Dragon NaturallySpeaking」を手掛けるNuance Communicationsは、GPUコンピューティングを使ったディープラーニングニューラルネットワークで言語学習モデルを開発している。
Nuanceで研究ディレクターを務めるニルス・レンケ氏は「システムのトレーニングでは、サンプルとして何千回もの発声を示すことによって言語を理解させている。これには大量の演算を伴う。こうしたネットワークでは、ノードが単純な計算を実行する。同じことを同時に実行しなければならないノードが大量にあることから、GPUはこの作業を手助けするのに最適だ」と説明する。
人工知能の筆頭級フレームワーク多数を含め、GPUコンピューティングをサポートするアプリケーションの数は増えている。
GPUの前途は有望だが、それでもCPUを補う技術がGPUだけとは限らない。Intelが167億ドルという多額を投じたのは、GPUではなく、Field Programmable Gate Array(FPGA)だった。GPUと同様、FPGAでは特定の演算をCPUと比べて高速に処理できる。FPGAは汎用プロセッサの役割を果たすのではなく、プログラミングによって、特定の命令をより効率的に実行できる。
GPUを使う代わりに、RyftではFPGAコンピューティング対応データベース分析プラットフォームを提供している。Microsoftも最近になって、Azureベースの人工知能サービスに、Altera FPGAを使っていることを明らかにした。
「GPUであれFPGAであれ、高速化が進むべき道であることははっきりしている」とキム氏は訴えている。
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