アプリケーション開発に変化も
GPUがけん引する“ハード黄金時代”、ディープラーニングやAI処理で需要高まる
GPU技術はかつて主にゲーマーが関心を持つ分野だったが、今では新型GPUがシステムに搭載され、ディープラーニングやAIアプリケーションの実行に使用されるようになっている。
IT業界ではかなり前から、ハードウェアを重視しなくなっている。だが、2017年にはディープラーニングの台頭に伴い、この状況は変わりそうだ。
Forresterのアナリストを務めるマイク・グアルティエリ氏によると、われわれは、主にGPU(Graphics Processing Unit)がけん引するハードウェアの黄金時代に入ろうとしているのかもしれない。
併せて読みたいお薦め記事
人工知能時代の課題
ハードウェアの新潮流
GPUのニーズが増大
従来のCPUに代わって主役となるGPUは、タスクの逐次処理ではなく並列処理に最適化されている。そのためにGPUチップはディープラーニングモデルを訓練するのに適している。この訓練では、モデルが画像認識や、自然言語解析、オンライン買い物客への商品の推奨などを行えるようになるまで、膨大なデータ処理が何度も繰り返し実行されるからだ。
「今日のコンピューティングでは、こうしたモデルを訓練する必要がある。故に、ハードウェアルネサンスが到来するだろう」とグアルティエリ氏は述べる。
GPU技術は数十年前から存在しているが、企業が注目するようになったのはつい最近だ。GPUは従来、名前が示しているように、コンピュータのグラフィックス処理に使用されてきた。だが、ディープラーニングや人工知能(AI)が脚光を浴びるとともに、モデルを訓練するために高速な並列計算の必要性が高まっている。
「数年前には、われわれはこうした特殊なハードウェアには目を向けていなかった。だがディープラーニングでは、多くの並列処理を実行することになる。GPUベースのツールなら、多数のコアが利用できる」。調査会社STORM Insightsの創業者エードリアン・ボールズ氏はそう語る。
ボールズ氏は、2017年にはGPUチップ市場が活況を呈するだろうと見ている。分析用にGPUチップの販売をいち早く開始した企業の1つであるNVIDIAは、2016年にIBM、Microsoftと提携した。コグニティブアプリケーションが実行されるサーバでのNVIDIA GPUの採用を促進する狙いだ。プロセッサ最大手のIntelも、GPU技術への取り組みを深めようとしているようだ。
GPUの普及で開発者に求められる変化
ボールズ氏は、GPUの普及が進めば、場合によっては、開発者は新しい仕事のやり方を学ばなければならないかもしれないと指摘する。GPUのデータ処理方法はCPUとは非常に異なるため、GPUのメリットをフルに活用するには、アプリケーションを従来とは異なる手法で作成しなければならない。このため、開発者が今後、GPUが使用される先進的な分野でもスキルを発揮していくには、トレーニングを積まなければならない。
同様に、多くの企業が、GPU技術を中心に据えたデータアーキテクチャの構築に着手するだろうと、ボストンカレッジのITマネジメント教授トム・ダベンポート氏は予想する。同氏はインターナショナルアナリティクスインスティテュートの共同創設者でもある。
ダベンポート氏はWebキャストで、「多くの企業が、ディープラーニングモデルをベースにした画像認識技術の実装方法を調査している」と話している。Google、Uber、Tesla Motors
といった企業は自動運転車の開発を進めているが、自動運転車の技術もディープラーニングのアルゴリズムに大きく依存している。こうしたタイプのタスクの役割が拡大していることを受け、GPUの需要が増加するだろうと、同氏は考えている。
「GPUに特にフォーカスしたさまざまなコンピューティングアーキテクチャが登場してくるだろう。これは、画像処理やその他のアプリケーションで使われるこうしたディープラーニングモデルの成功の一部と捉えることができる」(ダベンポート氏)
GPU技術は、“市民データサイエンティスト”(※)という新タイプのユーザーの登場や増加という動きに拍車を掛ける可能性もあると、ソフトウェアベンダーのMathWorksで技術マーケティングマネジャーを務めるポール・パイロット氏は語る。
※citizen data scientist。調査会社Gartnerの用語。職業としてデータ分析を専門に行う通常のデータサイエンティストに対し、仕事の一環としてデータ分析を行うビジネス部門などの一部の担当者を指す。
パイロット氏は、Amazon Web Services(AWS)が2016年に、「Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)」サービスでGPUチップを利用できるようにしたことを指摘する。EC2は全てクラウドでホストされているので、ユーザーはハードウェアの専門家である必要はない。このため、EC2へのGPUオプションの追加は、GPUの導入のハードルを下げ、利用の裾野を広げることになる。「ディープラーニングや、行動指針をもたらす処方的分析(Prescriptive Analytics)、ビッグデータのワークフローが利用しやすくなる」(パイロット氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは? -
製品資料
[株式会社みらい翻訳] 音声翻訳活用の課題を解決、“本当に使える”ツールの特徴とは? -
製品レビュー
[Wrike Japan 株式会社] 400店舗を支えるWalmart Canada、散在する情報やアナログな管理をどう変えた? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 年間100件超のDXプロジェクトを統合管理、JERAはどのように実現した? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] グローバルなクリエイティブ業務を合理化、エスティーローダーに学ぶ実践のコツ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
9割が頓挫する「AI内製化」 差がついたのはツールより設計力
-
3
JSONをやめてPythonで送る トークン消費を約7割抑えるAIの設計
-
4
見落としが多発、AI普及&データ急増に伴うネットワーク課題の意外な原因とは?
-
5
技術力だけでは「上に行けない」 シヤチハタCDOが語る、情シスが次の役割をつかむ条件
-
6
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
7
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
8
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
9
OpenAIが叫ぶ法規制の裏で 情シスが今すぐ固めるべきAI防衛策
-
10
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
9
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
10
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー